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馬には適性があるし、適性を覆す能力もある
文/編集部

00年以降、鳴尾記念の出走頭数は毎年13頭以上が集まっていて、かなり盛況な重賞と言える。

00年から05年まではハンデ重賞だったから出走しやすかった、ということでもないようで、別定戦となった昨年も17頭立てとなり、今年も16頭が集結。

しかも、ただ出走頭数が多いだけではなく、00年以降の重賞勝ち馬の出走頭数は、8頭8頭9頭9頭9頭7頭8頭半数以上が重賞ウイナーというケースが多く、今年も9頭の重賞勝ち馬が出走してきた。

芝中距離というカテゴリーで、開催前半で馬場状態も良く、また、OP馬の多い関西圏の重賞であることがその人気の要因なのだろう。

重賞好走馬が多く集まれば、実績重視の人気になることは至極当然。今回は、唯一のG1馬であるドリームジャーニーが1番人気に推され、もう1頭のG1連対馬であるレインダンスが2番人気に支持された。3番人気も、締め切り直前までダービー3着の実績があるアドマイヤオーラとなっていた(最終的にはエイシンデピュティが3番人気)。

しかし、ドリームジャーニーは内を突いたものの伸び悩み、レインダンス熱発エリザベス女王杯を回避した影響もあったのか、14kg減と大幅に体を減らして7着。アドマイヤオーラが3着同着でかろうじて面目を保つ形になった。

出走馬16頭の中でG1での3着以内があったのは、ドリームジャーニーレインダンスアドマイヤオーラ、そしてハイアーゲームの4頭だったが、皮肉にも上位人気に推された3歳馬たちが連に絡めず、8番人気と伏兵の扱いだったハイアーゲームが優勝した。

各馬の勝敗を分けたカギは、状態面などの要因もあるのだろうが、多分に枠順脚質、そしてキャリアが影響したように思う。

最終的にエイシンデピュティが3番人気に上がったのは、内枠(2枠3番)で先行脚質であることが最大の要因だろう。岩田騎手とのコンビで2戦2勝と負け知らずだったこともプラスに働いたのだろうが、結局、予想通りの展開に持ち込んでハナ差の2着に好走した。

1着となったハイアーゲーム左回り巧者のイメージがあったが、「右回りでももう大丈夫」との大久保洋吉調教師のコメント通り、問題なくこなしてみせた。

そして、以前のような中団からの差しではなく、先行させて殊勲の勝ち星を掴ませたのが、テン乗りの藤岡佑騎手だった。

この藤岡佑騎手は、実は、新装後の阪神芝外回りが非常に上手い。

阪神JFでもテン乗りのレーヴダムール2着に追い込んだが、先週までの阪神芝外回りの1600~1800mでの成績が[8.3.2.20]

勝利数(8勝)は、武豊騎手(11勝)と岩田騎手(9勝)に敵わないが、勝率24.2%は10回以上騎乗回数がある騎手の中でトップ。武豊騎手(22.0%)や岩田騎手(18.8%)、安藤勝騎手(17.9%)を凌ぐほどである。

阪神芝外回りの勝ち方をよく知っている藤岡佑騎手だったからこそ今回の勝利はあったと言えるし、また、その騎乗に応えられるだけの力と経験をハイアーゲームが積んでいたからこそ勝てたとも言えるだろう。

単に枠順が内だったからといって勝てるほど、重賞は甘くない。大久保洋吉調教師「右回りでももう大丈夫」とコメントした背景には、右回りで9戦を戦い、培ってきた経験が馬にあることを掴んでいたのだろう。

競馬を見ていて毎度思うことだが、馬には適性があるし、その適性を覆す能力もある。

それをどこまで見抜けるかが馬券購入者には求められるわけだが、なかなか上手くいかないのが常である。上手くいかないからこそ中毒のようにもなってしまうのだが、馬券を買う我々にも、これまでの自分を覆す能力があることを信じて、これからも頑張りましょう(笑)。

今回の鳴尾記念で上位人気に推されながら敗れた3歳馬たちは、いずれもまだまだキャリアが浅い。これからどのような変化を遂げるのか、それを見届けられるのも競馬ファンの楽しみと思うようにしましょう。

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