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「多くの楽しみが残った」一方で、予想する側にとってはなんとも厄介な世代
文/浅田知広

先週の阪神JFも1番人気・オディールの単勝オッズが3.9倍という混戦模様だったが、それに輪をかけて難解だったのが朝日杯FS。1番人気のスズジュピター4.2倍、すぐに4.3倍アポロドルチェが続くという、混戦続きの2歳G1だ。

なぜこんなことになっているのか。世代レベルの問題という説もあり、馬インフルエンザの影響で有力どころの入厩が遅れたためという説もあり。いずれにしても現時点で確かなのは、牡牝ともども2歳世代は傑出馬不在ということ。

朝日杯FS3勝馬の出走なし阪神JFエフティマイア1頭のみ、という点からも、これははっきりとしている。

ただ逆に考えると、強い勝ち方でG1タイトルを獲得できれば、即その世代の頂点に立てることにもなる。特にこの朝日杯FSは、ラジオNIKKEI杯2歳Sと比較してレベルに疑問符がつけられることも多いが、今年はいきなり勝ち馬が「世代の核」となる可能性もあるのだ。

一方「これ、どうなんだ?」という結果に終わると、混戦模様に拍車をかけることにも繋がってくる。どの馬が勝つのかはもちろん、その勝ちっぷりにも例年以上に注目したい一戦だった。

そんな戦国・2歳世代を象徴するように、タイトルを獲得したのは抽選で出走のチャンスを得たゴスホークケンだった。先週の阪神JFに続き、1勝馬によるG1制覇だ。

各馬の力差が少ないレースでは、ちょっとしたことが勝敗を大きく左右するもの。過去のデータからは、前走好走馬が上位を占めることの多い一戦だが、今年は大混戦。前走4着のこの馬にも、逆転の可能性が十分にあった、ということだろう。

そしてもうひとつ。いや「もうひとつ」ではなく、ゴスホークケンにとって最大の勝因と言えるのが、抜群の好スタートを切れたことだ。2コーナーの近い中山芝1600mでは、先行馬にとって「絶好」とも言える1番枠

これで出遅れでもすれば、「なんのための1番枠だ」という話になるのだが、これをまったくムダにしない素晴らしいスタートからの、鮮やかな逃げ切り勝ちである。

逆に枠順に泣いたのが馬番14番のアポロドルチェや、11番ヤマニンキングリーあたりだろうか。3コーナー過ぎから外を通って前との差を詰めたものの、開幕2週目の絶好馬場に加え、前半800mが46秒3とこのレースにしてはさほど速くはない流れ。

先行有利の展開で、外を回って距離損を喫しては、直線で最後まで脚を伸ばすのはなかなか難しい。また、1番人気のスズジュピターも、馬群で少々詰まるようなところがあり、これでは前との差を詰めるのは難しくなる。

さて、優勝したゴスホークケン。これは果たしてどう評価すべきだろうか。後続に2馬身半差の鮮やかな逃げ切りは、間違いなく「強い勝ち方」

しかし、枠順展開が効いたのも確かであり、そういう意味では「これ、どうなんだ?」。先週のトールポピーも、厳しい展開を乗り切る底力は評価できる一方で、ラスト1ハロン12秒7という展開に恵まれた部分もある。

もちろん、この2頭は2歳王者、そして女王として十分に評価できる走りだったのは忘れてはならない。その上で、まだ未知の強豪が潜んでいるかもしれない、という期待を持てるのが現2歳世代、ということだろうか。

個々の馬として見ると、今後どの馬を楽しみに見れば良いのか悩ましいが、世代全体としては来年へ向けて「多くの楽しみが残った」と言えそうだ。いや、しかし。予想する側にとってはなんとも厄介な世代である。

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