残念ながら、有力馬の未知数な能力を引き出す展開には至らず
文/編集部
京都金杯は00年以降、
芝1600mのハンデ戦として行われるようになったが、1000m通過が59秒以上かかった年は4回。
01年(1着ダイタクリーヴァ)の
59秒0、06年(1着ビッグプラネット)の
59秒1、07年(1着マイネルスケルツィ)の
59秒0、そして、今年(1着エイシンデピュティ)の
59秒0である。
この4年に共通するのは、勝ち馬が4角で3番手以内につけていたこと。要するに、
スローペースの前残りというわけだ。
今年は、骨折休養明けの
オースミダイドウが引っ張る展開となったが、
キンシャサノキセキが昨年と同じように、掛かりながら
オースミダイドウに並んで行ったことを見ても、ペースはかなり遅かった。
そのゆったりとした流れを味方につけたのが、勝った
エイシンデピュティ。
オースミダイドウを見る位置でレースを進め、
キンシャサノキセキが外から来ても自分のリズムを崩すことはなかった。
直線ではその2頭の間を割って突き抜け、
上がり33秒6の脚で追い込んで来た
アドマイヤオーラ(2着)、
カネトシツヨシオー(3着)の追撃を凌いでゴールを駆け抜けた。
エイシンデピュティは
1600m以上で[4.1.1.3]という成績。ここには
京都金杯をはじめ、
昨年のエプソムC勝ちや
鳴尾記念2着、OP特別の
オーストラリアT勝ちなどが含まれるが、連対した5回はすべて、1000m通過が59秒以上かかっていた。
スローペースを前、前につけて粘り込む。これが
エイシンデピュティの好走パターンであり、
京都金杯は偶然か必然か、まさに自分が得意とする展開になった。
レースの感想を言えば、
「マイル重賞くらい、スローペースの上がり勝負は勘弁してほしい」という感じだが、その一方で、自分の形だときっちりと走る
エイシンデピュティには感心する。
昨年の天皇賞・秋では直線で斜行し、
降着処分を下された
エイシンデピュティだが、
「1年の計は金杯にあり」という格言があるように、1年の節目の重賞を制したことで、08年はいい流れが来るかもしれない。
08年はおそらく、
マイル~中距離を中心に使われていくことだろう。ただし、G1、G2戦線で活躍するためには、59秒を切るペースでもへこたれることのない、地力強化が必要になってくるはず。
1分44秒2というレコード決着となった
昨年の毎日王冠において、
エイシンデピュティは1着
チョウサンから
0秒7差の⑧着に終わった。この時の1000m通過は
57秒5だった。
果たして今年は、その
0秒7差をどこまで詰められるのか。
1000m通過のタイムを視点にして、
エイシンデピュティの成長過程に注目していきたい。
一方、1番人気で2着となった
アドマイヤオーラ。
上がり33秒6を使って差し切れなかったが、
エイシンデピュティと同タイムで走ったのだから、
ダービー3着馬の面目は保ったと言える。
ちなみに
アドマイヤオーラは、これまで3着以内となった時は1000m通過が59秒0以上かかっていた。というか、1000m通過が59秒以上のレースしか走ったことがないんですが(笑)。しかも、今回の
京都金杯の
59秒0がもっとも速かったりして。
なので、
アドマイヤオーラも
エイシンデピュティと同様、
1000m通過が59秒を切るペースでパフォーマンスを上げられるのかどうかが、ひとつのポイントと言えそう。
いずれにしても今年の
京都金杯は、有力馬の未知数な能力を引き出す展開には至らず。それはそれで残念なことだが、1年はまだまだ長い。その機会は今後に期待するとしよう。