エアシェイディの勝利は自身のみならず一族の悲願でもあった!?
文/編集部
転厩初戦となる
ドリームパスポートが復活の狼煙を上げられるのか。それが、今年の
AJC杯のテーマのひとつだったが、結果は
単勝2.2倍の1番人気で
5着に終わった。
道中では先行集団を見る位置から進み、直線入口で早々と先頭に立つという本命馬らしい堂々としたレースぶりだったが、後続馬の格好の目標となってしまった。
別定戦、過去の実績を考えれば、そこから突き放すくらいの感覚で
松岡騎手も乗っていたのだろう。逆に交わされてしまったということは、まだ復調途上なのかもしれない。
復活といえば、
2着となった
トウショウナイト。昨秋に
京都大賞典で復帰して以降、不本意な競馬が続き、
9番人気と人気を落としていたが、
昨年の日経賞(2着)以来の連対を果たした。
叩かれつつ良化し、馬体が10kg絞れたことも良かったと思うが、
中山芝2500mの
日経賞で
2回2着となっているように、
半端な距離が合うタイプだけに、今回の
中山芝2200mという舞台も向いたのだろう。
そして、今回のもうひとつのテーマ。というか、初めて重賞に挑戦した
セントライト記念(6着)からずっと続いていたテーマは、
エアシェイディが重賞を勝てるのかどうか、だった。
エアシェイディは今回の
AJC杯前では、重賞で
[0.6.2.6]。
OP特別では
[4.1.0.0]と突き抜けられるのに、
重賞になるとなぜか、好走しても好走しても、前を見ればいつも馬がいた。
競馬はオリンピックなどと違い、
2着や
3着になっても表彰台に上がって日の目を浴びることはない。
「1着でなければ、2着もシンガリ負けも同じ」と語るジョッキーもいる。それが競馬なのだ。
言葉は悪いが、このままだと
エアシェイディは
重賞善戦マンで終わってしまうところだった。競馬ファンの記憶には残っても、
重賞タイトル奪取という記録はひとつもないままに。
ところが、
エアシェイディは実に
15回目の挑戦で待望の重賞タイトルを手に入れた。
04年9月のセントライト記念に始まり、実に
3年4ヶ月という長い長い歳月をかけて。
しかも、今回の勝利は
エアシェイディだけでなく、祖母
アイドリームドアドリームから拡がる一族の悲願でもあった。
AJC杯以前のこの一族の重賞成績を見ると、
2~3歳まで[5.5.5.6]、
4歳以降[0.11.2.12]。
おじの
エアシャカールは
皐月賞、
菊花賞を制し、
ダービーで
2着。全妹の
エアメサイアは
秋華賞を制し、
オークスで
2着。母
エアデジャヴーは3歳時に
クイーンCを勝ち、
オークス2着、
桜花賞と
秋華賞で
3着と好走していた。
3歳までの重賞成績は飛び抜けて素晴らしい反面、これだけの面々をもってしても、一族から
古馬になってから重賞を勝った馬は1頭も出ていなかったのだ。
「古馬になると重賞を勝てない」ありがたくない一族の歴史を塗り替えたのが今回の
エアシェイディだった。
4歳以降の重賞成績を
[0.11.2.12]から
[1.11.2.12]に変えた功績は大いに賞賛されるべきだろう。
また、
7歳以上で重賞初制覇を飾ったサンデー産駒は
テイエムサンデー(03年シルクロードS)、
ユキノサンロイヤル(05年日経賞)、
リミットレスビッド(06年ガーネットS)、
クワイエットデイ(07年マーチS)。
エアシェイディは5頭目となるが、重賞で
304勝している
サンデー産駒の中でも、極めて稀なケースと言える。
というわけで、自分自身だけでなく、一族が越えられなかった壁を見事に乗り越えた
エアシェイディ。今後は
「一族初の古馬G1制覇」という目標に向かって、邁進してほしい。
最後に、
エアシェイディにひと言だけ言わせてもらうと、
3連単の2、3着付けで買ってしまってスミマセンでした(笑)。