10歳馬が重賞制覇! 高齢馬による恒例の好例
文/編集部
トップハンデの10歳馬が、
逃げの名手である
中舘騎手を背に
最後方でポツン。この光景を見てレース途中に馬券を投げ捨ててしまったファンはどこかにいなかったのだろうか?
いても驚かないが、その分も驚くべきはやはり
10歳馬アサカディフィートが樹立した
とてつもない記録とそのレースぶりだろう。
このレースで記録されたJRAにおける10歳馬の勝利は、
平地重賞だけに限らず平地競走全体としての史上最高齢記録。
それまでの最高だった
9歳馬による平地の重賞勝ちには
02年のシルクロードSで
ゲイリーフラッシュ、そして
昨年のこのレースで
アサカディフィートが記録した2例があり、とどのつまり
9歳以上で重賞を複数回勝った例も史上初めてというわけだ。
なお、
小倉大賞典の
2連覇は
87、88年に
トウショウレオが記録して以来2回目だったが、年齢は現行表記でいうところの
5歳、6歳と、いわば
フツーだった。
高齢馬による連覇といえば、
障害を含むJRAの最高齢勝利記録(12歳)を持つ
オーストラリアの
カラジの名が思い出される。同馬は
05、06、07年と現在まで
中山GJを
3連覇中。
他では
00年の交流G3・スプリントCと
01年ホッカイドウ競馬のエトワール賞において、
地方を含む最高齢グレードレース勝ち(12歳)と
国内重賞勝ち(13歳)を刻んだ北の雄
オースミダイナーが、
98年から
00年にかけてホッカイドウの
瑞穂賞を
4連覇したという記録がある。
中央でかつて
ミスタートウジンが92年から00年にかけて8度
銀嶺Sに出走し、話題となったように、キャリアが多くなれば以前に出走経験のあるレースに複数回出走する機会が増えるのは当然のこと。
しかし、それらを勝つとなるとまた話は別なわけで、今回
アサカディフィートが示した
「高齢馬は恒例のレースを連勝しやすい」という
コウレイの連鎖は、今後ベテランの馬を重賞の馬柱に見つけた際には一考すべきだろう。
さて、
10歳馬が勝ったという結果だけでも衝撃的だったが、内容もまた衝撃的だった。冒頭で述べたように
アサカディフィートは道中で
最後方付近に位置取り、マクリに動き始めた3コーナー過ぎまでは
単独で最後方を追走していた。
圧巻だったのはそこからで、昨年同様、外を回って直線に向くと、昨年とほぼ変わらぬ脚色で馬群をひと飲み。まさか
10歳馬に
ディープインパクトを彷彿とさせる強襲劇を見せられるとは誰も思っていなかったはずだ。
レース前、管理されている
鶴留調教師は、高齢馬に対して定番の
「年齢的に上積みはないが状態に変わりない」といった主旨のコメントを出されていたが、ご本人もおそらくこれほど昨年と
「変わりない」走りをしてくれるとは思っていなかったに違いない。
思い起こせば昨年のこの時期にも、にわかに
高齢馬の重賞勝ちが話題となった。
2月25日には
中山記念を
ローエングリン、
阪急杯を
プリサイスマシーンが勝ち、東西のメインを共に
8歳馬が制圧。
その後
3月には
中山牝馬Sの
マイネサマンサ、
阪神大賞典の
アイポッパー、
マーチSの
クワイエットデイと、3週連続で
7歳馬が勝った。その口火を切ったのはほかでもない、
2月3日に
小倉大賞典を制した
当時9歳の
アサカディフィートだったが、ここまで昨年と同じレース内容・強さ・重賞勝ちを見せつけられると、
今年も再び高齢馬の重賞勝ちが続くのではないかという予感さえ覚えてしまう。
JRA発表によれば
カラジは
13歳となった今年も
中山GJへの予備登録を行なったとのことだが、
アサカディフィートも彼に負けないよう、来年もこのレースで走れるよう奮闘を続けてほしいものだ。