ファイングレインには、そろそろ不振のジンクスを打ち破ってもらいたい
文/編集部

前日、開催を中止に追い込むまで降っていた雪の影響により、
稍重でレースが行われた。
レースはゲートをポンと飛び出した
アストンマーチャンが引っ張る展開で、
アイルラヴァゲイン、
ペールギュントなどの人気どころは軒並み前から。そのまま直線に入り、
「ペースもそれほど速くないようだし、ここまま逃げ切りか……」と思いかけた残り200mで先行勢が大失速。
そこで一気に差してきたのが、3番人気
ファイングレインだった。スタートで1馬身ほど出遅れた
ファイングレインは、一時は離れた最後方。
1200mということを考えれば、その時点ですでに圏外となっておかしくない競馬だったが、鮮やかな大外一気の差し切りを決めた。
2着
コパノフウジン、3着
ステキシンスケクンなど、上位はすべて後方待機組。よく
「前と後ろがそっくり入れ替わる」といわれるが、これはまさにそんなレースだった。
なぜ
アストンマーチャンは負けたのか? 前半3ハロンは
33秒7。これは馬場を考えれば速いペースではあるが、
スプリンターズSでは
不良馬場で
前半33秒1で逃げ切ったこの馬にとって、さほどキツいペースではなかった。
となると
スプリンターズSとの相違点は何だろうか。
休み明けの状態か、
実質トップハンデの56キロを背負った斤量差? それもあるかもしれないが、ここでは
「1番人気」と
「武豊騎手」に注目してみた。
その観点で考えてみたところで、先月出た
『週刊プレイボーイ』の記事で
岩田騎手が言っていた
「ユタカさんがいるとペースが落ち着く。競馬がユタカさんを中心に動くから。ユタカさんがいるといないではそれくらい違う」という言葉を思い出した。他の騎手にとって、
「武豊」という存在はそれほどのものなのだ。
だとすると、
武豊騎手が先頭を走っていたら? 他の騎手にも
「気分良く行かせたら逃げ切られてしまう」、
「ユタカさんのペースがベスト。自分も前に行かなければ」という意識が働きはしないだろうか?
まして
アストンマーチャンは
G1馬。しかも逃げ切って勝った馬なのである。そういう要因が重なってレースが前がかりとなり、この先行勢総崩れのペースが生まれたのではないだろうか。
ところで、このレースは96年に重賞に昇格して以降、
高松宮記念(高松宮杯含む)の前哨戦として行われてきた。
別定戦で行われていた96~01年までは
フラワーパーク、
トロットスター、
エイシンバーリンなど、ここを勝った馬が本番でも勝ったり連対したり……というパターンも多かった。
しかし、02年に
ハンデ戦となって以降、この傾向が一変してしまった。07年までのべ12頭いる連対馬は、いずれも本番での1着どころか連対もゼロ。唯一05年の勝ち馬
プレシャスカフェが本番で
3着に入ったのみだ。(03年、04年ともにこのレース3着の
サニングデールが本番では03年2着、04年1着に入っているが、どちらも
阪急杯を挟んでいる)
これはマズイ。もし本番で勝負になる馬が除外になってしまう、ということが起こったとしたら?
「阪急杯とオーシャンSがあるんだから、トライアルの役割はそっちに任せればいいじゃないか」という意見も分かるのだが、だったらこの時期にやらなくてもいいのではないだろうか(笑)。
まあ、
ハンデ戦になってまだ7回目。結論を出すのはまだ早い。これで
1200mは3戦3勝となった
ファイングレインには、そろそろ不振のジンクスを打ち破ってもらいたいものだ。