カンパニーの力を存分に引き出した、横山典騎手のファインプレーが光る
文/編集部
前日行われた
アーリントンCにおいて
藤田騎手を背に逃げ切った
ダンツキッスイほどではないが、同じ
藤田騎手騎乗で好スタートを切った3番人気
コンゴウリキシオーが、後続を3馬身ほど離して逃げる。
初騎乗となる
横山典騎手を鞍上に迎えた2番人気の
カンパニーは、スタート直後から押して
プリサイスマシーンと競り合いながら2、3番手。1番人気
エアシェイディは中団やや後方の内目を追走する。
レースはそのままの隊列で進み、4コーナーを回ったところで
コンゴウリキシオーが早くも失速。代わって早めに先頭に立った
カンパニーが、最後まで力強い脚を見せて押し切った。
2着は4コーナーでマクリ気味に外から差を詰めた
エイシンドーバー。1番人気
エアシェイディは直線で外に出すことができず、馬群を捌くのに手間取って3着止まり。惜しくも重賞連勝はならなかった。
それにしても
カンパニーには驚かされた。
05年の同レースで
2着、
06年は
4着していて、このコースでも実績があった馬なのは確かだ。しかし過去の戦績を見直してみると、ほとんどのレースにおいて、4コーナーの位置取りは
10番手より後ろ。
追い込み馬のイメージが強く、
4コーナーで3番手以内を走ったのは
新馬戦以来ただの一度もないこの馬を、追っつけながら2、3番手を走らせ、そのまま押し切ってしまったのだから。
横山典騎手は、前に行くというのは最初から決めていたという。レースリプレイをもう一度ご覧いただければよく分かると思うが、スタート直後の
横山典騎手はさほどスタートが良くなかったにもかかわらず、
「え、逃げるの?」という勢いで追っつけている。
後方から行けばほぼ確実に
33秒台の脚を使う
カンパニー。しかし、それではこれまでと同じ
「追い込んで届かず」となってしまいかねない。それならば、前に行ってそれに匹敵する脚を使えるとしたらどうなるか?
言うのは簡単だが、それを実行できたのは
テン乗りであり、しかもそれが
“どんな強敵がいようと、必ず何かやってくれる”横山典騎手だったからではないだろうか。
これまで
昨年の天皇賞・秋(3着)のように、
「力はあるが追い込んで届かず」というレースが多かったカンパニーの力を存分に引き出した、
横山典騎手のファインプレーであった。
余談だが、このレースで
関西馬が優勝するのは
9年ぶりで、過去20年でわずか
4頭目。しかし、その数少ない中に
サイレンススズカ、
キングヘイロー、
ムービースターなど、
その後にG1を勝つ、もしくは連対した馬の名前が並んでいる。
これまでG1では苦戦していたカンパニーが、先行馬として生まれ変わり7歳にしてG1初勝利、というシナリオも、今の
短~中距離戦線の混戦ぶりならば十分にアリだ。
なお、このレースで
「新人騎手がデビュー週にいきなり重賞挑戦」という快挙を成し遂げるはずだった
三浦皇成騎手は、8レースで
落馬負傷したため無念の乗り替わりとなった。
しかし、これから重賞挑戦の機会など数え切れないほど訪れるはず。まずはケガを治して、この無念を晴らしてほしいものだ。