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ようやくクラシックの「核」となる存在が誕生したが……
文/浅田知広

例年なら共同通信杯西きさらぎ賞が終われば、ある程度の大枠くらいは見えてくる感のある牡馬クラシック戦線。しかし今年はまだまだ混戦模様で、大きく勢力図が書き換えられる可能性も含みつつの弥生賞となった。

もっとも、弥生賞大波乱まではないという傾向の一戦。過去10年の勝ち馬10頭中9頭が1、2番人気馬で、残る1頭も02年・4番人気バランスオブゲームである。

ただ「なんでもあり」的な今年、この傾向が通用するかどうか悩みどころ。そもそもフタを開けてみるまでは、どの馬が上位人気になるかすら掴みづらく、こういった傾向を予想に活かすのも難しい感があった。

さて、「フタを開けて」みればブラックシェル1番人気。馬の見た目からして「強そう」な印象があるのは確かだ。ただ、クラシック路線、特に混戦模様の年は1回の敗戦であっさり見捨てられる(人気的な意味合いで)ことも多いだけに、当方としては少々予想外の1番人気。

一方、2番人気マイネルチャールズ中山2000m連勝中で、しかも実績上位の3勝馬。こちらは妥当な人気だろう。

そんな「妥当」を受けて、というわけでもないのだろうが、結果はマイネルチャールズが2番手追走から直線入り口で先頭に立つ横綱相撲。

「なんでもあり」のメンバーなら展開ひとつでなんとでも、という発想から当方が中心視したホッカイカンティを血も涙もなくあっさり交わし去り、後続の追撃もしっかりと抑え込んでの快勝だ。

これでマイネルチャールズは、前走・京成杯に続いて重賞連覇。皐月賞と同コース・同距離での連勝だけに、本番へ向けて大きく視界が開けた一戦になったと言えそうだ。

「サンデー後」2年目の今年、リーディングサイアーランキングの2月末時点ではアグネスタキオンがトップに立つ活躍を見せているが、大一番での底力、という視点ではやはりこの馬の父・ブライアンズタイムもまだまだ魅力的な存在である。

昨年を思い返せば「サンデー後」最初の皐月賞馬ヴィクトリーもこの馬の産駒。今年でもう23歳だが、アロースタッドのサイトを見ると「Book Full」、お元気そうでなによりだ。

一方、やや予想外の1番人気となったブラックシェルはゴール前で外から追い込み、その人気にまずまず応える4分の3馬身差の2着。巨漢馬で「小回り」中山は向かなそうにも見えるが、折り合い面を考えればコーナー4つの競馬は悪くない。

また、パワーを活かせる「急坂」中山は向きそうという、予想がやっかいなタイプである。乗り方もやはり「やっかい」な部分がありそうで、鞍上も我々も、今後また頭を悩ますことになりそうだ。

予想外といえばもうひとつ、先行策から3着に食い込んだタケミカヅチだ。新馬戦が直線で豪快な差し切り、新潟2歳Sは先行して失速の競馬から、末脚勝負のタイプと見ていた人も多いはず。

それがこの競馬で3着である。新潟2歳Sで1番人気を裏切って以来、実績ほど人気にならない競馬が続いているが、「変わってきた」と見れば、穴党なら要注意の存在になる。

その他、4着以下も挙げゆけば注目点はキリがない。ただ、いずれにしてもこのレースは、ようやくマイネルチャールズという「核」となる存在が誕生した、ということが一番に挙げられる一戦だったのは間違いないだろう。

と、書いてみたものの。「いやいや、堅い傾向の弥生賞だし」という発想もなきにしもあらず。昨年のヴィクトリー(7番人気)、サンツェッペリン(15番人気)のような思わぬ波乱もあるのが皐月賞

今年の流れからして、このレース内容は評価しつつも、あくまで「予想をする上でまず取捨を検討すべき馬」が誕生した、というくらいに思っておいたほうが良い、のかもしれない。

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