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主催者はファンの声にもっと耳を傾けるべきだ
文/編集部

近年、これほど後味の悪いレースはなかっただろう。

単勝1.7倍の断然人気に推されたサンアディユが大きく出遅れ、他にもスタートで後手を踏んだ馬が何頭も見られた。

出遅れ自体は珍しくないことだが、今回は事情が違う。

スタート前にサンアディユが頭を下げてゲートを潜りそうになり、それに気づいた係員が集まって確認をした。サンアディユは潜りそうになった位置より少し頭を上げたようだが、正常な位置ではなく、それなのにゲートが開いて、飛び上がるように出てしまい、大きく遅れた。

しかも、ひどいことに、この時、係員が発した「開けるぞ」との声を、「後ろ扉を開けてゲート入りをやり直す」という意味に捉えた騎手がいて、他にも出負けする馬が出た。結局、レースはスローペースになり、前残りの決着に…。

係員とジョッキーの間に発生した勘違いについては、使う言葉を改めるべきだろう。

例えば、パイロットと管制官との間では、「離陸」の指示は「Take off」ではなく「Departure」を使うことになっているという。紛らわしい言葉を使わないのはどこの業界でも行っていることで、「出ろ」とか「開ける」とかを使い分けずに叫んでいるのは、時代遅れと言わざるを得ない。

馬によってはゲート内できちんと駐立しているにも関わらず出遅れるタイプもいて、それについては不可抗力とも言えるが、今回のサンアディユは何人もの係員が異変に気づいており、それを確認した上でゲートを開けたのだから言い訳はできないだろう。

これまでにも、ゲートの問題は何度も叫ばれてきたことだ。ラガーレグルスがゲートから出ずに競走中止となった00年皐月賞や、1番人気に推されたヒシアマゾンがゲート内で脚を引っかけた影響で出遅れて5着に敗れた95年有馬記念など、莫大な売り上げを集めているレースでさえ、ゲート不良は起こっている。

今回のように馬が硬直したら、ジョッキーひとりの力ではどうにもならない。他にも騎手だけでは防ぎ切れない事象もあるから、アメリカなどではゲートボーイが一緒にゲートに入り、スタートを手伝うのだろう。なぜ日本はゲートボーイを導入しないのか。

長らくこの問題を放置している姿勢からは、ムチやロープで馬を追い立ててゲートの中に入れさえすれば、それで任務完了と思ってるのではないかとすら見える。そんなに時間通りにレースを行うことが重要なのか。

近年、売り上げが下がり続けているJRAでは、出馬選定の方法を改めてフルゲートのレースを増やすことに注力してきた。多頭数にならないと馬券の売り上げが上がらないからで、それによって上級条件のレースが足らなくなって馬が溢れかえり、果ては除外の権利取りのために投票をしたら入っちゃって、芝馬がダート戦に出たり、その逆が起こったりと混乱している。

そんな状況下で売り上げはどうかと言うと、例えば先週(3月1&2日)の中山&阪神では、前年比でこのような結果になっている。

中山1日目:前年比84.9%
中山2日目:前年比90.5%
阪神1日目:前年比84.1%
阪神2日目:前年比80.2%

血統調教技術も進歩して競走馬のレベルも上がり、ジョッキーだって地方の名手が入ってきてハイレベルになっているはずなのに、売り上げは下がり続けている。今の競馬が、大事なお金を賭けるに値しないと思われているからじゃないか。

オーシャンSが行われた中山競馬場では「金返せ!」との怒号が飛んでいたそうだ。まあ、中山競馬場でのレース後に怒号が飛ぶのはいつものことではあるし、その言葉を厩舎関係者ジョッキーに向けるのは明らかに間違っている。

けれど、主催者は、馬券を買っているファンの声にもっと耳を傾けるべきで、それは間違いないはずだ。出走馬の頭数を集めることよりも、もっと大事なことが絶対にある。

西塚助手風に言えば、「またしても長くなってしまい、すみません」という感じなので、今回はここまでにしておくが、今後、ゲート問題についてはJRAに取材をしたいと思う。読者の方も、何か意見があればどうぞ。サラブレ本誌かモバイル上で展開をしたいと思います。

さて、レース結果については、前残りだったこともあり、上位4着までを4コーナーで5番手以内にいた馬たちが占めた。

エムオーウイナーナカヤマパラダイスアイルラヴァゲインという重賞連対実績馬たちを破って、上がり馬のプレミアムボックスが制する形になったが、第一感は“さすが昇級のアドマイヤベガ”だった。

アドマイヤベガ産駒昇級での重賞挑戦で、を乗り越えていきなり好走することが多く、またもそれが実証されたわけだ。

ただ、プレミアムボックスはこれまで5勝を挙げているものの、連勝経験は一度もなく、キャリア13戦で2着も一度もない。ということはつまり3着だろうと睨んだら(過去に3着は4度あり)、裏をかかれました(苦笑)。

しかし、今回のレースぶりを見ても分かるように、競り合うとかなり強い面を持っているようだ。これで通算6勝(2着ゼロ)となったが、その6勝のうち4勝が0秒2差以内上位4頭が0秒2差以内に入った接戦を制したケース3度もある。高松宮記念も、馬体を併せての叩き合いに持ち込めるかが焦点になるのではないか。

2着以下に敗れた馬たち、特に中団から後方に位置して差し届かなかった馬たちの多くは、次走以降に巻き返しがあって当然だろう。

その意味では、内枠決着になった阪急杯で、外を回らされて伸びを欠いた馬たちと同じ境遇と言えるのかもしれない。

前哨戦の2レースの結果に偏りが生じた高松宮記念は、今年も波乱になるのかも…。

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