ダノンゴーゴーは伝説の名剣にどこまで近づけるのか!?
文/編集部

ジャンケンでグーを出せばチョキに勝てる。これは誰もが認知している世の常識。ところが、
ファルコンSのレースが終わった直後は、
チョキに対してグーを出しながら負けたという感覚がこみ上げてきた。
過去8年を振り返ると、
1番人気[0.0.4.4]、
父ミスプロ系[0.0.1.23]、
4角13番手以下[0.1.1.32]。過去9年で見ても、
1番人気[0.0.4.5]、
父ミスプロ系[0.1.1.29]、
4角13番手以下[0.1.1.38]と勝ったことがない。
ダノンゴーゴーは上記のデータすべてに該当していて、
「これだけグーの要素が揃っていれば、チョキに負けないはず」という思いがあった。ただそれは、
ダノンゴーゴーという実力馬に対する畏怖の念を打ち消そうとする、心理の表れだったのかもしれない。
ダノンゴーゴーはそれらマイナス材料を一刀両断。どんなにグーの要素で武装しても、まったく歯が立たなかった。言うまでもなく馬券は完敗だったが、その勝ちっぷりには悔しいというよりも感服という感じ。
スタートはいつものごとく良くなかったが、激化する先行争いをよそに、
後方から4番手でじっくりとレースを進める
ダノンゴーゴー。この時点では、
昨年のダノンムローの二の舞もあるんじゃないかと思っていた。
ダノンムローは昨年の
ファルコンSで
4着だった馬。
オーナー、
鞍上も
ダノンゴーゴーと同じであり、
1番人気、
父ミスプロ系、
4角13番手以下というマイナス要素に該当していた点でも酷似していた。
そのレースぶりがオーバーラップしたが、それは
4コーナーまでの話。
ダノンゴーゴーは直線で大外に持ち出すと、内の各馬を並ぶ間もなく交わし去り、一気に突き抜けてしまった。
グーをも切り裂く極上の斬れ味。
グーの音も出ないというのはまさにこのことだろう(笑)。
2着となった
マルブツイースターは先行争いをやり過ごし、
中団から差すというソツのない競馬。他馬より重い
57kgを背負ってこれだけ走れるのは立派だが、今回に限っては
相手が悪かったとしか言いようがない。
ここでひとつの思考が脳裏をよぎる。
「はて、芝1200重賞で、こんな後ろから差し切ったことがある馬なんていたっけ?」と。そこで、
芝1200重賞で4角14番手以下から勝利した馬を探してみたところ、86年以降で
2頭が見つかった。
1頭は昨年の
フェアリーSを
4角15番手から差し切った
ルルパンブルー。
メチャクチャ身近にいたという(笑)。今回の
ファルコンSでは
ブリンカー効果も手伝ってか、
3番手から粘って
3着に好走していたけど。
もう1頭は、
03年の
スプリンターズSで
4角14番手から直線一気を決めた
デュランダル。ラチ沿いで押し切りを図っていた
ビリーヴを、大外からわずかハナ差だけ交わし去った。あの豪脚もたまげたものです。
さらに驚くことに、
デュランダルは
04年と
05年の
スプリンターズSでも
4角14番手から
2着となっていて、
04年の
高松宮記念ではなんと、
4角17番手から
1着サニングデールとクビ差の2着まで持ち込んでいた。
しかも
デュランダルのすごいところは、
マイルCSも
4角13番手以下からの競馬で2連覇していること。
芝1200重賞で4角14番手以下から4連対し、マイルG1でも同じ競馬で勝利できる馬なんて、この先出現するのだろうか。
ダノンゴーゴーは
芝1200mで
3戦3勝となり、この距離での決め手は世代屈指であることを実証してみせた。この後は
NHKマイルCを目指すことになるだろうが、
芝1600mでは
3着2回となっていて、まだ勝ったことはない。
3歳春の時点で、
デュランダルと比較するのはあまりにも酷なこと。でもその一方で、3歳春の時点で、
デュランダルの比較対象になれるというのは、ごく限られた馬にしか許されないのだから、名誉なことでもあるだろう。
ダノンゴーゴーはNHKマイルC制覇に向けて、
伝説の名剣にどこまで近づくことができるのかを求められることになりそう。グーに勝ったチョキなら、ひょっとするとひょっとして!?