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勝っても負けても夢が広がる、それがフラワーC
文/編集部

フラワーC重賞へ昇格されたのは87年。過去20年を振り返ると、フラワーCを制し、その後、G1ウイナーとなったのは6頭いる。

ホクトベガ(93年エリザベス女王杯)、シーキングザパール(97年NHKマイルC)、スマイルトゥモロー(02年オークス)、ダンスインザムード(04年桜花賞、06年ヴィクトリアマイル)、シーザリオ(05年オークス)、キストゥヘヴン(06年桜花賞)。

また、フラワーCで負けた馬からも、タレンティドガール(87年エリザベス女王杯)、チョウカイキャロル(94年オークス)、ビリーヴ(02年スプリンターズS、03年高松宮記念)、フサイチパンドラ(06年エリザベス女王杯)と4頭のG1馬が誕生している。

事実上、桜花賞への最終切符を賭けた一戦と言えるフラワーCだが、のちにオークス馬が3頭も出ており、近年では特に、春の牝馬クラシックの有力馬を見出す一戦、という色合いが増している。

今年は、前走のきんせんか賞で圧勝していたブラックエンブレム1番人気。過去10年で見ると、前走1着馬は9連勝中1番人気は[5.2.2.1]と信頼性が高かったが、今年もその傾向通り、ブラックエンブレムが勝利を収める結果となった。

シンボリクリスエス産駒シングライクバード2番人気で続いたが、父サンデー系が出走馬の半数を占めた。様相としては、唯一の父ミスプロ系ブラックエンブレムVSフラワーC4連勝中の父サンデー系8頭。この包囲網をブラックエンブレムがどう切り抜けるか、注目した。

レースでは、ブラックエンブレムが好スタートを切り、押し出されるようにして先頭に立つ。ただ、レース後に松岡騎手「予定外だった」と語ったように、思わぬ“好スタート”“ハナ”が、控えるというレースプランを白紙にさせた。

過去10年、4角先頭だった馬は[4.3.1.2]なのだから、フラワーCで勝ち負けするなら、ポジション取りは最善とも思える。だが、松岡騎手のコメントには、明らかにその先を見据えた、勝ち方にもこだわるというニュアンスが感じ取れた。

向正面では、8枠の父サンデー系2頭スペルバインドスペシャルディナーに外から競られ、直線ではマンハッタンカフェ産駒(父サンデー系)のレッドアゲートが強襲してくる。「向正面でハミが抜けなくて苦労しました。最後はヒヤヒヤしました」松岡騎手

直線ではリードを保ってスパートしながら、ゴール前で脚色が鈍り、レッドアゲートにアタマ差まで詰め寄られたのは、向正面で父サンデー系2頭の襲来を受けたことがすべてではないだろうが、道中でリラックスして走れなかったぶんの影響が大きいはず。

レース後、松岡騎手「うまく乗れなくて……反省してます」と語っていた。勝って桜花賞の出走権利を獲得した喜びより、自分の騎乗に対する反省を言葉にしていたが、それは何より、ブラックエンブレムへの期待の高さの表れに他ならない。

いずれにしても、ブラックエンブレムが父サンデー系包囲網を破り、父ミスプロ系としては97年のシーキングザパール以来、2頭目となるフラワーC制覇を果たしたのは事実。その未知なる能力が開花するのは桜花賞か、オークスか、それとも……。

また、今回敗れたレッドアゲートシングライクバードは桜花賞出走は賞金的に厳しい状況となったが、オークスへの夢まで絶たれたわけではない。特に、シングライクバード差し届かず3着ロベルト系という点で、94年オークス馬のチョウカイキャロルとまったく同じ。かなり不気味だ。

関東圏で桜花賞の優先出走権が与えられるのは、アネモネSの1、2着馬だけ。これほど興味がつまったフラワーCを、桜花賞前の一重賞という位置付けにしておくのはつくづくもったいない気がするが、今年の出走馬がどんな未来を描くのか楽しみ。フラワーCは勝っても負けても夢が広がる。

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