場所や距離、性別などが違っても、「血の不思議」は起こるものだ
文/関口隆哉

サラブレッドが持つ
「血の不思議」のひとつと言えるかもしれないが、
場所、
距離、
性別などが違っていても、
同じ種牡馬の産駒が同時期に施行されるレースで激走するケースは、わりとよく見受けられる。
たとえば、今年の2月23日、東の
クイーンC(東京芝1600m)で3歳牝馬
リトルアマポーラ、西の
京都記念(京都芝2200m)で4歳牡馬
アドマイヤオーラと、いずれも
アグネスタキオン産駒である2頭が、呼応しているかのように重賞競走を快勝してみせた。
日本時間30日未明、
ドバイで行なわれた芝2400mのG1
ドバイシーマクラシックを南アフリカの4歳牝馬
サンクラシークが勝利した瞬間、
日本で施行されるスプリントG1高松宮記念でも、サンクラシークと同じフジキセキ産駒は要注目だと強く感じた。
このレースに参戦していた
フジキセキ産駒は、
ファイングレイン、
キンシャサノキセキという人気サイドでもある2頭の5歳牡馬と、人気薄の7歳牡馬
タマモホットプレイという計3頭。で、筆者が馬券の中心に推したのは、
サンクラシークと同じ
豪州産のフジキセキ産駒でもある
キンシャサノキセキだった。
まあ、
キンシャサノキセキは、元来が大贔屓にしている馬でもあり、この
「父フジキセキがもたらす血の不思議」説には、多少後付け的な気持ちが含まれていたのも事実なのだが…。
レースは、
外枠となった2番人気の
ローレルゲレイロが好スタートを切り、後続を引っ張っていった。4番人気
ファイングレイン、3番人気
スーパーホーネットといった末脚自慢の上位人気馬たちは中団から、最内枠からのスタートとなった1番人気
スズカフェニックスは、ゲートが開いた直後に躓いたこともあり、後方から競馬を進めることになった。
5番人気
キンシャサノキセキは、好位追走。スプリント戦特有のハイペースでレースが推移しているためか、懸念された引っ掛かり癖は見せていないようだ。
直線、4コーナー手前から積極的に仕掛けていった人気薄
フサイチリシャールが、まず抜け出してくる。残り100mを切り、鞍上の
岩田騎手が追い出しを我慢していた
キンシャサノキセキが末脚を伸ばしてくる。
よし勝った! そう思った瞬間、外から
キンシャサノキセキを急追してくる馬がいる。
幸騎手が手綱をとる
ファイングレインだ。
なんとか粘ってくれと願ったが、余力を多く蓄えていたのは、
ファイングレインの方だった。クビ差の逆転劇で、初G1制覇となるゴールを駆け抜けた。
苦しい位置取りから、
スズカフェニックスもよく追い上げたが、上位2頭とは差がある3着までだった。
勝ち時計
1分7秒1は、
高松宮記念のレースレコード。上がり3Fも
33秒7で、この速い時計が、
徹底追い込み型である
スズカフェニックスの連覇を阻む一因となった。
それにしても、勝った
ファイングレイン、2着に惜敗した
キンシャサノキセキともに、素晴らしい競馬をした。正直、レース前は自分でも半信半疑であった
「血の不思議」説だが、やはりこういうことはあるのだ。
ドバイでの
サンクラシークの激走に、心から感謝なのである。