素人の下手なシミュレーション(と馬券)を吹っ飛ばす強さ
文/編集部
昨年アッと言わせた
有馬記念と同じコースに帰ってきた、
「中山の鬼」マツリダゴッホ。しかし
1番人気に推されることが確実な馬の馬券を買っても仕方ない。いかに
「中山の鬼」であっても、
死角はどこかにあるはず。
ということで
「マツリダを切る要素」を探すために、
中山の重賞で唯一負けた昨年の
日経賞と、勝った3つのレースでは何が違ったのかを、レース映像を見直しながら検証してみた。まずは勝ったレースで
マツリダゴッホがどんなレースをしていたか、簡単にまとめてみよう。
AJCC…
10頭立て5番枠。道中は馬群が一列になったため、最内の4番手。4コーナーで逃げるインティライミのすぐ外からマクる。直線入り口手前で早め先頭に立ち、そのまま押し切り。オールカマー…
16頭立て6番枠。道中は内目の6番手。4コーナーで先頭のシルクネクサスとシャドウゲイトの間を割る。直線入り口手前で早め先頭に立ち、そのまま押し切り。有馬記念…
16頭立て3番枠。道中は最内の3番手。3~4コーナーで先行するチョウサンとダイワスカーレットの間を割る。直線入り口手前で早め先頭に立ち、そのまま押し切り。そして、負けた
日経賞。1レースだけでは不安なので、
中山の条件戦で唯一負けた06年の
冬至Sも検証してみた。
日経賞(3着)…
14頭立て5番枠。最内より2頭分ほど外を進む。4コーナーは内から4、5頭目、先行集団の一番外を回す。残り300mで一旦先頭に立つが、最後にネヴァブションとトウショウナイトに交わされ3着。冬至S(2着)…
12頭立て9番枠。道中は最内を進むが、4コーナーは内から4頭目、先行集団の一番外を回すが、直線に入ってもまだ6番手。先に抜け出したフェイトトリックスを最後まで交わすことができず、ハナ差の2着。いやはや、実に分かりやすい。勝った時は最後の一文がすべて同じだ。やはりこの馬は
コーナーワークを利してマクり、直線に入った時にはある程度セーフティーリードを保って先頭に立っていないとダメな馬だということが分かる。
そこで今年はどうか。昨年の
有馬記念でも騎乗し、この馬を知り尽くしている
蛯名騎手が手綱を取るのは好材料。しかし、前に行くと予想される馬に
ヨイチサウス、
シルクフェイマス、
コスモバルクの3頭がいて、しかもこれまでと違い
有馬記念を勝ったということで、他馬のマークを一身に受けるのは確実。
そうするとコーナーで内が開く可能性は低いのではないか。そうすると直線入り口で先頭に立てないかもしれない。しかも
13頭立て9番枠と、枠が外目なのも気になるぞ……?
ということで、
マツリダを2、3着付けした馬券を買いこんでレースを待ったのだが、結果はご存知のとおり。
マツリダゴッホは逃げた上記の3頭を4コーナーで豪快に外から交わし、直線入り口手前で早め先頭に立ち、そのまま押し切り。
2着は先団から抜け出した
トウショウナイト、3着は後方から詰めた
アドマイヤモナークが入った。
素人の下手なシミュレーション(と馬券)を吹っ飛ばす強さだった。
今回も上がり
34秒6だったように、
マツリダゴッホは34秒台前半となるほどの斬れる脚まではない。
早め先頭が勝ちパターンだからということもあるだろうが、だからこそ
良績が直線の短い中山に集中しているとも言えるだろう。
数年前に
阪神が改装されたように、直線を長くするのが現在の風潮。直線が長ければ純粋な力勝負を楽しめる。それは分かっているのだが、このような馬が活躍できる場もあっていいと思う。