いっそのこと2着以下は見なかったことにする!?
文/編集部

出走馬15頭の前走の位置取りを見た時点で、もう死語ですが、こうなることも
想定の範囲内だったと言える。
前走を
4コーナー3番手以内で走っていたのは、
中京芝1200mの1000万特別(
鈴鹿特別)を勝った
キッスアンドライドだけで、
5番手だったのが
タニノハイクレアと
ローブデコルテの2頭。残りの12頭は
7番手以下という
中団差しで、今回は差し馬ばかりのメンバー構成だった。
こうなると、たとえ
芝1400m戦であろうとペースは緩みやすくなる。ましてやこのレースは、
ヴィクトリアマイルへのステップレースだ。
芝1400mでガンガン行くことが、距離が延びて直線距離も長くなる本番(
東京芝1600m)へ向けて、好材料になるとは考えづらい。
付け加えるなら、
関西圏のトライアルレースはよりペースが緩みやすい、ような気がしてならない。
競馬場のコース形態がそうさせるのか、
関西馬は折り合いが付く馬が多いからなのか、
関西のジョッキーが多いとそうなりやすいのか、理由は定かではないが、近年の関西のトライアルレースは
スローが多い。
今回の
阪神牝馬Sも、15頭が揃って飛び出すきれいなスタートだったものの、誰も逃げようとはせず、文字通り押し出されるように
エイジアンウインズがハナに立った。
テンの3Fは
35秒4。
10頭立てだった昨年が
34秒1、
12頭立てだった一昨年が
33秒8なのだから、かなり遅い。
同日同コースの3歳未勝利戦(
阪神5R)が
35秒0だったことを考えても(しかもペースを作った
シルポートがそのまま逃げ切り勝ち)、
緩いどころか緩~いペースだった。
ファンからしてみれば、迫力には欠ける競馬だったろう。でもやはり、これは
トライアルなのだ。しかも、本番(
ヴィクトリアマイル)より距離の短いトライアルで、次を考えれば脚を温存、もしくは試したくなるのだろう。近年は、
『トライアルだからスローになるかも』ということを想定の範囲内に入れておかないと、ガッカリ度が増すので注意した方がいいです。
ペースが緩かったこともあり、今年の勝ちタイム(
1分21秒4)は、昨年(
1分20秒7)や一昨年(
1分21秒2)には及ばず。同日同コースの阪神5R(1分22秒3)よりは速かったが、そんなことはなんの慰めにもなりませんね。
緩いペースで差し届かなかった
ブルーメンブラット以下の差し馬は、着順だけで評価を下してはいけないだろう。当然、
距離が延びてより真価を発揮するタイプも多く見受けられるし。
ただ逆に、先行しながら伸びを欠いた馬も、一概に評価を落とすわけにはいかない気がする。というのも、
これだけペースが緩むと道中で折り合いを欠いていた可能性があるからだ。エンジンを空ぶかしのような状態で前半を進んでいれば、勝負所で嫌気を差すことも想像に難くない。
では今回のレースを、次走以降の馬券検討に活かすには、どう活用すればいいのか。答えは
「ノーカウント」。
見なかったことにするのがいちばん手っ取り早いと思うのですが、それじゃダメですか?(笑) 勝ち馬を除いては、あまり子細に分析しても意味がないと思うのだが。
なぜ勝ち馬だけは別かと言えば、競馬において
『勝ち馬は必然』だから。どんな穴馬だとしても、勝つには理由があるもので、それすらもノーカウントにしてしまうのはまずい。
エイジアンウインズは、今回は
逃げ戦法を選択したが、単なる逃げ馬ではない。
芝での逃げ切り勝ちは今回が初めてで、馬の後ろで周回しても折り合えるし、速い上がりも使える。
久しぶりにハナを奪ってもペースを乱さなかったことを、むしろ評価すべきだろう。
血統的にも
フジキセキ牝馬とだけ認識していると誤りそうだ。母系は
デインヒル×フォーティナイナー×ニジンスキーという配合で、その
ニジンスキーを配合された牝馬がご存じ
スペシャル。
スペシャルと言っても
スペシャルウィークを略して言っているわけではなく(笑)、
ヌレイエフの母にして、
ジェイドロバリーやサドラーズウェルズ、フェアリーキングなどの祖母にあたる馬だ。
エルコンドルパサーは
スペシャルの4×4を持ち、
スペシャルの
母ソングが母系。
エイジアンウインズは、
末恐ろしいボトムラインを持っているのである。
ヴィクトリアマイルで激突するであろう
ダイワスカーレットは母系が
スカーレットインク系で、
ウオッカは
シラオキ系。
母系に関しては、その2系統に対しても負けていないどころか、世界的に見れば上位とも言える。パドックで
「ごきげんよう」と言われても、焦らずに対応できるんじゃないでしょうか(笑)。
今回のレースレベルは不明だが、
エイジアンウインズが今後の牝馬G1戦線で上位争いをしても不思議ではないことは、想定の範囲内に入れておいた方がいいのではないだろうか。