自分をあざ笑うかのような、“マンハッタンカフェ産駒の裏切り”だった
文/編集部
シンガリの
18番人気だった
ポコアポコフォルテでも単勝オッズは
77.8倍。白毛の
ユキチャンが出走したことで、例年以上に注目を集めた
フローラSだったが、
“多くの馬にチャンスあり”という様相を呈し、今年の3歳クラシック戦線を象徴するかのような混戦ぶりだった。
そんな状況の中、1、2番人気に推されたのは
フラワーC2、3着だった
レッドアゲートと
シングライクバード。前日発売の段階では
ユキチャンが
1番人気に推されていたが、同馬は最終的には
4番人気に落ち着き、当日になって入れ替わった格好。実績を考えれば妥当の着地だろう。
ただ、
レッドアゲートと
シングライクバードの単勝オッズは
4.2倍と
4.5倍。もちろん、混戦模様という状況で他馬の単勝が売れたことも、オッズが思ったほど伸びなかった一因だろうが、2頭の
“追い込み”という脚質が、
開幕週の馬場では不安に感じられたことも無関係ではなかったはず。
「本当に追い込みが届くのか」、
「末脚不発に終わるんじゃないか」、
「スローペースが見え見えなら、2頭揃って追い込むことは考えづらい」といった推測が、馬券を買う時に脳裏に過ぎったのは私だけではないだろう。
だが、そんなことは実際にレースをやってみなければわからないことで、考えても答えが出るわけではない。刻一刻と迫る締め切り時間。そういう切羽詰った状況下に置かれると、人間というのは不思議なもので、理詰めで考えてきたものを置き去りにし、
オカルト的な理屈にすがってしまいがち。
ふと思いついたのが、
「そういえば、今週はやたらとマンハッタンカフェ産駒が馬券に絡んでなかったか!?」だった。調べてみると……。
26日(土)東京11RメトロポリタンSヒカリシャトル②着京都9RムーニーバレーRC賞メイショウクオリア①着京都10RメルボルンTマンハッタンスカイ①着27日(日)京都9R糺の森特別セラフィックロンプ①着「芝の中・長距離の特別戦で来まくりじゃないか! じゃあ、レッドアゲートで決まり」と短絡的な結論に至ったわけだが、これがあながち間違ってなかった。その理由はわからないけど、同一種牡馬が同時期に爆発するのはなんらかの要因があるわけで、それに乗っかってみた。
その結論と馬券的中が直結しないあたりは、自分の馬券センスのなさを痛感する次第ですが(笑)、
レッドアゲートは違った。それまでの追い込み脚質から一転し、
中団より前の位置からきっちりと差し切り、勝利したのだから。
内田博幸騎手はレース後の勝利ジョッキーインタビューで、前が止まりにくい開幕週の馬場を意識し、
「後方からではなく、中団よりやや前に付けたいと思っていました」と語っていたが、鞍上の希望通りにレースを進め、結果も出した
レッドアゲートのレースセンスには脱帽である。
メイショウクオリアは芝3戦で34秒5という斬れ味を見せて差し切り、
セラフィックロンプも自己最速となる34秒1の上がりで好位から抜け出した。そして、
レッドアゲートはいままでにない位置取りからの差し切り。3頭とも、
3連単の2、3着付けにして買っていた私をあざ笑うかのような、
“マンハッタンカフェ産駒の裏切り”だった。
一方、
オークスの優先出走権を逃した
シングライクバード。
社台レースホース所有馬は
高松宮記念の
ファイングレインに始まり、
サイレントプライド(
ダービー卿CT)、
レジネッタ(
桜花賞)、
キャプテントゥーレ(
皐月賞)と4週連続で重賞勝ちを果たしていたが、5週連続とはならなかった。
テレビ番組などでもそのことが話題に上がっていたように、こういう記録は気づいた時に途切れがちだと改めて思った。いずれにしても、
シングライクバードはいままでと変わりないレースぶりだった。スローペースの中、
4角12番手という位置取りから、大外を回したのでは届かないのも無理はない。
皐月賞で積極的な競馬を試みた
川田騎手をもってしても、あの位置取りということはおそらく、馬の器用さが足りなかったのだろう。自分の競馬に徹したとも考えられるが、
川田騎手も
内田博幸騎手と同じことを考えていたはずで、それが実践できなかったのはきっと、そういうことだろう。
人気馬の明暗を分けた要因は
馬の自在性。すなわちそれは、
馬の実力とも置き換えられる。
シングライクバードの
オークスでの走りを見てみたかったが、その思いを
レッドアゲートに託したい。そして、その期待に応えられる存在だとも思う。
オークスでは一転、裏切られないと信じて待つのみ。