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僅差の勝敗を分けたのは、父の血の勢いだったか
文/編集部

レースが行われた福島競馬場の一般スタンドで観戦したが、レース直後、「柴山、早く動きすぎだよ」という声が聞かれた。

2番人気のヤマニンメルベイユに騎乗した柴山騎手は、2番手追走から早めに先頭に立って押し切ろうとしたものの、ザレママイネカンナハロースピードに交わされて僅差の4着に敗れ、そのレースぶりに対して愚痴ったのだろう。

それを聞いて、騎手はつくづく大変な稼業だなあと思った。先に動いて差されれば「早く動きすぎ」と言われ、前残りを許せば「なぜ動かないんだ」と言われ。

馬券を買っていれば、レース直後に興奮して不満が口をついて出やすい。それは致し方ないことで、だから、冒頭の発言も別に問題視するようなものではないけれど、その一方で、最近はちょっと言い過ぎじゃないかと感じさせられる言動も少なくない。騎乗についてばかりでなく、レース後のコメントに反省がない、とまで言う人がいるし。

関係者は表立って言いづらい面があるからあえて代弁するけれど、みなさん勝つためにレースをしてますよ。そのレースで結果が出なくても、先を見越して乗っていたり、いろいろ工夫もしているし。

また、レース中の騎手心理については、M・キネーン騎手に取材をお願いして話してもらっているように「動けないことがある」のも事実で、特に馬にもレースにも乗ったことがない我々は、そのことを常に頭の中に入れておくべきでしょう。

「騎乗については何を言われても仕方ない」と公言するジョッキーも少なくないけれど、それはファンの気持ちを尊重しているからに他ならない。馬券を買う側の人間も、「馬券を買ってるんだから何を言ってもいい」という考えは改めて、関係者の気持ちも慮る時にきていると思う。

予想も馬券購入も、すべて自己責任。その上での言動を心がけたいものだ。

さて、肝心のレースだが、ザレマ&ヤマニンメルベイユという1~2番人気の先行馬が先に動き、後方差し脚質で3~4番人気だったマイネカンナ&ハロースピードが直線で襲いかかるという、ゴール前は非常に見応えのある形になった。

ショウナンタレントがいいペースで引っ張ったこともあるんだろうが、6日間開催だったことも奏功したのではないか。これが8日間開催の最終週だったら、明らかに外差しになっていて、予想の醍醐味も、ゴール前の大接戦も半減していたのではないかと思う。

ゴール直後の検量室前では、関係者の誰もがどっちが勝ったのか分かっていなかった。1~2着も微妙な写真判定だったが、3~4着のそれも非常に僅差で、「負けたんじゃないか」と口にしている関係者が多かった。

レース後のインタビューでは、マイネカンナで優勝した吉田隼人騎手「負けたと思った」と話していた。確かにゴール前での勢いはハロースピードの方が勝っている感じで、馬上でもそれを察知していたのだろう。

しかし、これが初の種牡馬リーディングを奪取しようかという血の勢いなのだろう、写真判定の結果は、アグネスタキオン産駒マイネカンナにあがった。

これでアグネスタキオン産駒の重賞勝ちは、前週の皐月賞(キャプテントゥーレ)に続いて今年7つ目4勝サンデーサイレンスフレンチデピュティに水を開けてトップを快走している。

アグネスタキオン産駒で今年の重賞を勝った7頭は、全馬が前走で2~4着に走っていて、その前走も前々走も掲示板内(5着以内)に入っている。好調期が続きやすく、また、勢いに乗っている時はとにかく恐い血であることを証明する勝利だったと言える。

マヤノトップガン産駒は中央重賞を12勝しているものの、牝馬に限ると[0.2.2.17](前週まで)で、ハロースピード「相手が悪かった」というより「相手の父親が悪かった」という感じかもしれない。

4年前に新設された福島牝馬Sは、7番人気以下の馬が毎年連対していて、3連単馬券が発売されるようになった近3年はすべて10万円オーバーの配当が出ていたが、今年は3・4・1番人気での決着で、3連単は3万円弱

しかしこれも、馬場を考えて6日間開催にすることで、有力馬が実力を発揮しやすくなった結果なのかも。それならそれで賞賛すべきことだろう。

表彰式が終わった後のウイナーズサークルでは、吉田隼人騎手が差し出される色紙に丁寧にサインをしていた。他の関係者がほとんどいなくなった後でも、ひとりで残って10枚近くにサインをしていた。てっきり福島牝馬S最終騎乗なのかと思ったら、最終レースにも騎乗していた。偉いなあと思わずにはいられなかった。

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