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まさに「プロフェッショナルたちの戦い」と呼ぶべきレース
文/安福良直

今回の春の天皇賞は、タイムこそここ2年を下回ったものの、スタートから最後の直線の叩き合いまで、内容はすごく濃かったと思う。

まさに「プロフェッショナルたちの戦い」と呼ぶべきレースで、こういうレースが続いてくれれば、「長距離レースなんてつまらない」なんて誰も言わなくなるんじゃないか、と思ったほどだ。特に、どの馬も折り合いを欠くという場面がほとんどなかった、というのが素晴らしい。

長距離戦といえば、誰かが引っ掛かってピューッと行ってしまうか、そうならないようにムリヤリ手綱を引っ張るシーンが目につくものだが、今回はみんな折り合いがついていて、他馬に迷惑をかけることもなく整然とレースを進めていた。

今回出走した14頭はどれも長距離戦の経験が豊富で、そういう馬が集まれば締まったレースになる、ということだね。だからどの馬も、自分の思うような競馬ができたのではないだろうか。

ホクトスルタンはいいペースで逃げていたし、アサクサキングス1番人気の重圧に負けることなくホクトを地力で捕まえに行った。メイショウサムソンは、ディフェンディングチャンピオンとしてアサクサを負かしに行く競馬ができた。

一方、ドリームパスポートポップロックアイポッパーは見せ場を作ることができなかったが、今日出せる力が足りなかったとあきらめるしかないだろう。

ということで、まさに「大方の予想通り」というレースになったが、1頭だけ、予定が狂った馬がいた。それが他ならぬ、勝ったアドマイヤジュピタだ。

何しろスタートで完全に後手を踏み、2馬身の出遅れ。おそらくアサクサの直後、サムソンの前でレースを進めるはずだったのが、この出遅れでサムソンの後ろからレースをするハメになってしまった。

しかし、結果的にはこれが幸い。アサクササムソンが早めに動いて叩き合ってくれたおかげで、外から強襲することができた。同じ春天では、11年前にマーベラスサンデーサクラローレルが叩き合っているところを、大外からマヤノトップガンが見事に差し切ったことがあるが、これと同じような展開になった。

でも、これは展開に恵まれたから勝てた、という勝利ではない。今日は、力がある馬でないと勝負に参加できない、という流れ。昨夏から勝利を積み重ねることで、本当の力がついていたのは間違いない。次は宝塚記念ということになるだろうが、ここも勝てば文句なしに「古馬最強」と言っていいはずだ。

一方、敗れたとはいえ、メイショウサムソンの最後の食い下がりは見事だった。いったんはアドマイヤジュピタに2馬身くらいの差をつけられ、「ああ、今回もダメなのか…」と思うシーンもあったが、そこから猛烈な差し返しを見せ、最後はアタマ差の勝負にまで持ち込んだ。

王者の意地だけで追い詰めた、という感じだが、この意地が名勝負を築き上げたと言っていいと思う。

アサクサキングスは、重賞で1番人気を背負うことが初めてだったことを考えればよく走っているし、ホクトスルタンも重賞実績が乏しい中でよく粘った。ホクトの場合は「親子四代天皇賞制覇」という大きな夢があるが、来年こそは楽しみになった、と言っていいんじゃないかな。

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