非凡な能力に器用さも披露したアドマイヤコマンドが完勝
文/編集部
ダービー馬
ジャングルポケットの産駒
ファビラスボーイに、同じくダービー馬
アドマイヤベガの産駒である
クリスタルウイング。そして、青葉賞勝ち馬でダービー2着の
シンボリクリスエスの産駒が4頭(
トレノクリスエス、
オリエンタルヨーク、
モンテクリスエス、
ニシノエモーション)出走してきた。
他にも、ダービー馬を輩出している
ブライアンズタイムの産駒が2頭(
ゴールデンハッチ、
ドットコム)、同じくダービー馬の父である
キングマンボの産駒が1頭(
ゴールデンルーヴェ)いて、ダービー2着の
ダンスインザダークの産駒(
アルカザン)や、ダービー3着の
メジロブライトの産駒(
ドリームキューブ)もいた。
今年の
青葉賞の出走馬16頭は、その父を見ると、いかにも
“ダービートライアル”らしい構成となっていた。
そんな中、1番人気に推されたのは
クロフネ産駒の
マゼランだった。
クロフネと言えば、
ダービーが
外国産馬に開放された元年に登場した、まさに
“黒船”として記憶している人も多いと思うが、その
ダービー(5着)が、彼の10戦のキャリアの中で、唯一の馬券圏外だった。
2100mの
JCダートを圧勝しているものの、
2200mを超える距離を走ったのは
ダービーだけで、その血の影響か、
クロフネ産駒は2200m以上の距離で[1.0.1.27]という記録が残されていた(4月末時点)。
それでも
マゼランが1番人気に推されたのは、
クロフネ産駒で唯一の2200m以上の勝利が、他ならない
マゼランが記録していたからだろう。
マゼランが勝利したのは
2月2日の東京芝2400m(500万)で、その走破時計は
2分25秒7だった。
単純に比較しても仕方ないことだが、今年の
青葉賞の勝ち時計は
2分26秒9。
稍重と
良の違いはあるだろうが、
12着(2分28秒4)に敗れた
マゼランは、やはり力を出し切れなかったと言える。
マゼランは
520kg以上ある大型馬で、
デビュー戦も
5着に敗れ、その後に連勝した。
今回は3ヶ月ぶりの休み明けが影響したと見るべきだろう。
マゼランが伸び切れない中、上位馬は、前記した
ダービーに実績のある父を持つ馬たちが大多数を占めた。
2着
クリスタルウイングが
アドマイヤベガ産駒で、3着
モンテクリスエスが
シンボリクリスエス産駒。以下、4~9着も前記した馬たちが入線した。
しかし、それらの馬たちを後目に抜け出して完勝したのは、
アグネスタキオン産駒の
アドマイヤコマンドだった。
ご存じのように、
アグネスタキオン自身は、
4連勝で
皐月賞を制した後、戦線離脱して
ダービーは走れず。その産駒は、これまで
500万クラス以上の東京芝2400mは未勝利で、
重賞では
アドマイヤオーラの
ダービー3着が最高成績だった。
それでも、今回のメンバーで
重賞連対実績があったのは
アドマイヤコマンドだけで、
父の血統成績よりも、地力の差で1着をもぎ取ったと言えるのかもしれない。
春の東京開催の前半に組まれている
青葉賞は、今回のような
「内をスルスル」というケースがよく見られる。3年前に
ダンツキッチョウが制した時がそうで、02年に
シンボリクリスエスが優勝した時も最内を抜けてきた。
距離経験の少ない馬が多く集まる3歳戦で
スローになりやすく、まだ芝生の状態が良好なために、そのようなケースが頻発するのだろう。
そういう意味では、
東京芝2400mを乗り切るスタミナにプラスして
器用さも求められるのが
青葉賞なのだろう。重賞になってからのこのレースの勝ち馬(15頭)は、その大半(14頭)が500kg以下の馬となっているが、それも器用さと無関係ではない気がするが、どうでしょう?
およそ1ヶ月後に行われる
ダービーは、
青葉賞における
スタミナと
器用さの比重が、少なくとも逆転はするはず。
86年以降、ダービーでの青葉賞組が[0.6.3.64]と勝てていない(
勝ち馬に限っても[0.5.2.14])のも、そのような比重の差に要因があるのではないか。
外からぶっちぎったデビュー戦に、直線でスムーズさを欠きながら2着を確保した
毎日杯、そして今回のレースと、
アドマイヤコマンドには
非凡な才能と、
走るたびに進化する奥の深さを感じさせられるが、果たして、
青葉賞組のダービー未勝利のジンクスを覆すことができるだろうか。抜けた存在が見あたらない今年なら、その可能性も低くなさそうだが。
キャプテントゥーレが戦線離脱したため、今年は
皐月賞馬のいないダービーとなる。そのようなケースは01年以来で、奇しくも
アグネスタキオンが戦線離脱した年以来だ。
同じ父を持つ皐月賞馬に替わって
アドマイヤコマンドが
ダービーを制すれば、02年(
皐月賞・
ノーリーズン、
ダービー・
タニノギムレット)以来の、
同じ父を持つ2頭による皐月賞&ダービー制覇となる。
川田騎手が
アドマイヤコマンドで
ダービーも制すれば、
異なる馬での同一年皐月賞&ダービー制覇で、
史上初の快挙になる。