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今年の京都新聞杯こそが、レースの位置付けとしての真の姿ではないだろうか
文/編集部

北京五輪へ向けて、柔道の100キロ超級の代表争いは熾烈を極めていた。最終選考会を兼ねた全日本選手権には井上康生棟田康幸石井慧鈴木桂治が優勝候補として名を連ねたが、鈴木桂治は100キロ級で五輪代表に選ばれており、残る3人がたった1枚の切符を賭けて凌ぎを削ることに。

結果は、21歳の石井慧が準決勝で代表有力候補だった棟田康幸を破り、決勝では鈴木桂治を下して優勝。これを受けて、晴れて石井慧が北京五輪の100キロ超級の代表に選出されたわけだが、改めて、実力者が揃う日本の柔道界で代表に選ばれることの難しさを認識した。

京都新聞杯もまたしかり。出走馬16頭に重賞連対馬はおらず、京都新聞杯にはダービーへの優先出走権がない。そこへきて、現3歳世代は重賞勝ち馬が分散し、多数の馬がダービー出走をクリアできる賞金を有する状況。ダービー出走を確定させるには勝利が求められていた。

ただ、裏を返せば、どの馬にもダービー出走のチャンスがあるということ。京都新聞杯は例年、すでに重賞に出走したことのある馬が強さを見せていたが、今年は重賞に出走経験があった馬はわずか4頭。メイショウクオリアリッカロイヤル以外の14頭は今年に初勝利を挙げていたのだから、かなり特殊な状況だったことがわかる。

それでも、これこそが京都新聞杯の真の姿ではないだろうか。重賞出走組の敗者復活戦としてではなく、デビューや軌道に乗るタイミングが少し遅れて皐月賞には間に合わなかったけど、ダービーにはなんとしても出たい馬の最終決戦という姿が。

京都新聞杯が10月から5月に変更されたのは00年から。その移行元年の京都新聞杯を制したアグネスフライト3歳2月新馬戦を勝ち、皐月賞と同週の若草Sで勝利しての臨戦だった。アグネスフライトダービーで皐月賞馬エアシャカールをハナ差で退け、河内元騎手(現調教師)に初のダービータイトルをプレゼントしたのだった。

京都新聞杯をステップにダービーを制したのはいまのところアグネスフライトだけ。いま思えば、アグネスフライト京都新聞杯の位置付けを明確にしていてくれたような気もする。

そのアグネスフライトに続くチャンスを獲得したのがメイショウクオリアだった。人気は前走で500万を制していたブラストダッシュメイショウクオリアヒルノラディアンが単勝オッズで10倍を切り、三つ巴の様相。その鞍上は武豊騎手岩田康誠騎手四位洋文騎手で、奇しくも、先週の天皇賞(春)で人気馬3頭に騎乗し、3着以内に入っていた騎手だった。

結果は明暗が分かれた。メイショウクオリアが快勝し、ブラストダッシュ直線で伸び切れず5着ヒルノラディアン後方ままで15着に敗退。稍重の馬場状態が影響した面も多分にありそうだが、それも含めて競馬ということ。いつだって一発勝負なのだから。

メイショウクオリアは2歳暮れのラジオNIKKEI杯2歳S3着に好走していたが、その後は敗戦が続き、皐月賞出走は叶わなかった。それでも、前走のムーニーバレーRC賞でいままでにない斬れを見せて2勝目を挙げ、上昇ムードにあった。レースぶりにも表れていたが、おそらく、体調面で良化していたのだろう。

道中では先行集団を見る位置につけ、3~4コーナーで外の馬が始動しても馬込みの中で慌てず騒がず。直線では馬群を捌いて外目に持ち出し、ロードアリエスマイネルローゼンをきっちり競り落とした。馬の上昇度騎手の手綱捌き馬場状態……いろいろなファクターがうまくかみ合ってこそ、手中にしたダービーへの切符であることは間違いない。

メイショウクオリアの父マンハッタンカフェは、牡馬三冠の最終戦・菊花賞を制したが、3歳春当時はまだ体質が弱く、ダービーの舞台に立つことは叶わなかった。初年度産駒のメイショウレガーロ青葉賞4着となって優先出走権を逃し、ココナッツパンチダービーに登録したものの除外。同日の目黒記念2着となり、悔しい快走を見せた。

メイショウクオリアダービーの舞台に立てば、マンハッタンカフェ産駒としてはダービー初参戦。父も成し遂げられなかった夢がひとつ叶うことになる。また、メイショウクオリアを管理する西橋豊治調教師も、初めてダービーに愛馬を送り出すことになる。ちなみに、柔道の石井慧北京五輪オリンピック初出場となる。

ただもちろん、西橋豊治調教師石井慧も、参加するだけで終わらせる気は毛頭ないだろう。その舞台へ向かうまでの道のりは未踏であるかもしれないけど、難関を突破した勢いというのは時に、堰を切った水のような、強烈な力を生むことがある。

メイショウクオリア、そして石井慧が大舞台でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。外野は固唾を呑んで、事の成り行きを見守ることにする。

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