4歳世代の牝馬が、改めて層の厚さを証明した
文/浅田知広

勝ち時計
1分33秒7、上がり600m
33秒7。暗算能力が弱い筆者にとって、これほど有り難い走破時計と上がりタイムはない。もちろん、
1000mの通過は60秒ぴったりである。
そんな「算数が苦手だ」という話はさておくとして。古馬G1としては
「超スロー」と言えるペースで進んだのが今年の
ヴィクトリアマイル。もっとも、確固たる逃げ馬不在というメンバー構成もあって、事前にある程度は予想されたことではあった。
となれば、狙いは
前に行く馬か、それとも爆発力に
優れた馬か。前に行きそうな馬から選ぶなら、
阪神牝馬Sで鮮やかな逃げ切りを決めた
エイジアンウインズ、という予想を立てた人もいることだろう。
ところが。その
エイジアンウインズは先手を取らず、ハナを切ったのは
昨年のNHKマイルCで見事な差し切り勝ちを決めた
ピンクカメオ。結果として
エイジアンウインズ優勝で馬券を獲った人でも、この展開を予想できた人は少なかったのではなかろうか。
常々、展開予想は馬券を当てるより難しい、とは思っているが、ともかく、勝ったのは
「好位に控えた」エイジアンウインズだった。
もっともこの馬、ハナを切ったのは近走では前走だけで、こういった競馬でも力を出せるタイプなのは間違いない。ただ、
力を出せるタイプであることと、
G1の大一番、しかも初距離で実際にその力を出せるかどうか、というのはまた別の話。
これで昨秋の復帰2戦目から
6戦4勝、2着2回。
ダイワスカーレットだ
ウオッカだと、
クラシックでの実績馬につい目がいってしまう4歳世代の牝馬だが、この一戦で改めて層の厚さを証明した。
そして
「改めて」といえば、
エイジアンウインズの父
フジキセキ。一時は
「G1ではちょっと…」という面もあった種牡馬だが、
ダートの
カネヒキリは別にするとしても、昨年のこのレース・
コイウタにはじまり、先日の
高松宮記念・
ファイングレイン、そしてこの
エイジアンウインズ。おまけに
ドバイシーマクラシックを制した
サンクラシークまで輩出した。
歳を重ねると傾向が変わっていく種牡馬も多い、そして
サンデーサイレンスの産駒が少なくなっている、という現状があるとはいえ、それでもこれは少々驚き。
完全にイメージを一新したといっていいだろう。
エイジアンウインズの脚質、そしてここにきての急上昇も併せ、
「アタマの切り替え」が重要だった一戦だった。
もっとも前述の通り、昨年の優勝馬はその
フジキセキ産駒の
コイウタだった、という視点なら
エイジアンウインズは要注意。さらに、今年2着の
ウオッカは皆さんご存じの通り
東京コースではダービー圧勝、そして
1600mは[4.1.0.0]。こう見ると、
データ通りといえばデータ通りの結果である。
なにしろ難解なレースが続くこの春のG1戦線。いったいどんなデータが信用できて、どこで
「アタマの切り替え」が必要なのか、このレースでますます混乱してきた筆者である。
なんにせよ、これで
エイジアンウインズが
「強い4歳牝馬」に仲間入りを果たしたのは間違いない。次の目標は
安田記念、ということになるのだろうか。
スーパーホーネットや
カンパニー、出走してくるであろう
香港馬などとの比較、そして
ウオッカも出走すれば
「今度は」という戦い。ここでもう一度アタマの切り替えが必要なのかどうなのか、またまたややこしい一戦になりそうだ。