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デカイ牡馬に囲まれ、砂を浴びせられても怯まぬ女に拍手
文/編集部

00年に飛び級でOP→G2と昇格になった東海Sは、それ以後、昨年まで7年連続で馬番6番以内の内枠馬が連対していた。

勝ち馬7頭はすべて1~5枠の馬でもあったし、内枠有利は火を見るより明らか。

そして今年もそのデータ通りに内枠の馬が勝ったのだが、勝ち馬は馬番6番以内の6頭の中でもっとも人気がない馬だったのだから、競馬は本当に難しいもんだ。

このような結末を生んだ最大の要因は、やはりスローペースだろう。

アルドラゴンがハナを奪って1周目のスタンド前を通過する光景は、場内の人もテレビで見ていた人も、誰もがスローだと分かるほどに遅かった。

前半の700mから1300mまでは、13秒0-13秒2-13秒0-13秒3と13秒台のラップが4回刻まれ、こんなことは重賞になってからでは初。スピードの出やすい重馬場でこのようなペースになれば、外枠で前に壁を作れなかったサヨウナラなどのように、道中で引っかかってしまう馬が出るのも無理はない。

優勝したヤマトマリオンは好スタートから内ラチ沿いをピッタリ回り、スローペースの中でもきっちり折り合っていた。そして、そのまま内でジッと溜めた後、直線に向いて切れる脚を使った。まるで開幕週の芝のレースで見られるような勝ち方だった。

ヤマトマリオンにとっては、枠も展開も上手くマッチしたと言えるだろうが、こんなソツのない競馬を牝馬がしたことに大きな価値はあると思う。

たとえ開幕週の芝であっても、牝馬の中には馬群に包まれると嫌気を差すタイプがいる。もちろん牡馬の中にもそんなタイプはいるけれど、割合では牝馬の方が多いだろう。ましてダートで砂を被る状況となれば、それに耐えて直線で伸びるにはそれなりの根性がいる。

自分より体の大きな牡馬に周りを囲まれ、久々のダートで砂を被りながら、それでもヤマトマリオンは直線で伸びてきたのだから大したものだ。そのことは素直に褒め称えるべきだろう。

中央ダート重賞牝馬が優勝したのは、昨年のシリウスS(メイショウバトラー)以来となった。メイショウバトラー06年のプロキオンSも制しているが、それ以前の優勝馬となると、02年エルムSプリエミネンスまで遡る。

さらに、中央ダートのG2ということなら、00年東海Sファストフレンド以来の快挙だ。97年の中央ダートG1の創設以後、G1を制した牝馬はおらず、G2を勝ったのもファストフレンドホクトベガ(96年フェブラリーS)だけ。地方交流G1勝ち馬の2頭に肩を並べたのだから、ヤマトマリオンの未来も俄然明るくなったと言える。

最低人気ながらあと一歩の2着に好走したラッキーブレイクについては、マクり差しが定番のこの馬を2番手に付けさせた赤木騎手の好判断を褒めるべきだろう。

スローペースは、逃げ馬よりも2番手に付けた馬の動きに誘発されやすいが、ラッキーブレイク&赤木騎手はそんな展開に持ち込み、いつもとは違うポジションでも馬も鞍上も動じず、レースを作り上げた。

人気がなかったからできた芸当ではなく、人気がなくても勝ちに行ったからこその好走と言うべきだろう。上位人気馬との差を分けたのは、そんな勝利への姿勢ではなかったか。

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