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ホクトスルタンは着実に階段を上っている
文/編集部

バレーボールハンドボールなど、現在もまだ北京オリンピックへの最終切符を争う戦いが繰り広げられているが、先日、出場権を獲得した女子バレーボールに対しては、さっそく「メダル獲得へ!」と騒ぎ立てられ始めている。

正直、たいへんだなあと思うと同時に、もう日本国民はそれほどオリンピックのメダルに対して、過度の期待をしていないんじゃないかと感じているのだが、どうなんでしょう? 自戒の念も込めて言えば、マスコミが「メダル、メダル」と言わずにいられないから騒ぎ立てている気がしてならないのだが…。

オリンピックでメダルを取るのはそれは大変なことで、だから、取った後に大騒ぎするのはよく分かるが、その競技の世界レベルも知らせずに「メダル、メダル」と騒ぎ立てるのはさすがに違うだろうと。選手に余計なプレッシャーを与えてるに過ぎないのではないかと感じる。

同じようなたいへんさをホクトスルタンに対しても感じていた。メジロアサマメジロティターンメジロマックイーンという父仔3代に渡る天皇賞制覇を成し遂げた父系を持ち、ホクトスルタンに対しては、『4代制覇』への期待が喧伝されてきた。

確かに成し遂げられれば歴史的偉業だし、それは讃えられるべきことだろう。だが、ホクトスルタンにそこまでの期待をしていいものか、疑問も感じていた。

メジロマックイーンは、94年の種牡馬入り後、初年度産駒からエイダイクインという牝馬を送り出し、同馬が98年クイーンCを制して重賞初制覇を遂げた。その後はタイムフェアレディ01年のフラワーCを勝ち、今年の中山牝馬Sヤマニンメルベイユが優勝。牝駒については重賞勝ち馬が3頭出ていた。

だが、牡駒に限れば、01年京成杯マイネルエスケープ2着になったのが重賞での最高成績で、ホクトスルタン自身も、青葉賞12着神戸新聞杯4着菊花賞6着で、馬券圏内に入ることはなく、今年の天皇賞(春)4着だった。

昨夏以降、同馬の手綱を握っている横山典騎手のレース後のコメントを読むと、「よく頑張っている」という言葉が並ぶ。そう、ホクトスルタン自身はよく走っているのだろう。これまでの重賞戦績は、その時の彼の実力を素直に表したものだったに違いない。

ホクトスルタンの戦績を見返すと、面白いことに気づく。2歳11月未勝利戦(東京芝2000m)を勝ち上がると、次走は3歳1月ゆりかもめ賞(500万、東京芝2400m)を走り、8着

3歳4月ひめさゆり賞(500万、福島芝2000m)を逃げ切りで制すると、次走は青葉賞(G2、東京芝2400m)に出走し、12着

3歳8月阿寒湖特別(1000万、札幌芝2600m)で古馬との対戦に初勝利を収めると、次走は神戸新聞杯(G2、阪神芝2400m)に出て、4着

4歳3月サンシャインS(1600万、中山芝2500m)を圧勝すると、次走は天皇賞(春)(G1、京都芝3200m)に挑戦して、4着

昨年、一昨年と目黒記念を連覇したポップロックのように、500万から4連勝で重賞制覇まで成し遂げるタイプがいる一方、ホクトスルタンはひとつずつ階段を上るように戦績を積み上げているのだ。

今回の目黒記念では、ゴール後に鞍上の横山典騎手が大きく拳を握っていた。見事なペースを作り出して勝利を収めたことに対して力が入ったのかもしれないが、やはり、ようやくホクトスルタン自身に初タイトルを贈れたことが嬉しかったのではないだろうか。

今春にサンシャインS(中山芝2500m)を制した時は6馬身差という派手な勝ちっぷりだったが、今回はクビ差。見た目には辛勝の感じも残ったが、走破時計を比べれば、サンシャインS(2分33秒1)よりも1秒2も速い(2分31秒9)。ホクトスルタンは着実に強くなっている。

例えば、日本ダービーの連対馬は、近年はずっと重賞勝ち馬だけで(例外はフサイチコンコルドだけ)、今年も8頭いた重賞勝ち馬のワンツー決着になった。近年の天皇賞(春)重賞ウイナーしか戴冠しておらず、よく考えれば当たり前のような気もするけれど、重賞未勝利馬は2着止まりまでだった。重賞タイトルを獲得することはやはり重要で、ホクトスルタンはこの目黒記念優勝で『4代制覇』への権利を獲得したと言えるのだろう。

レース後、「宝塚記念に出られればいい。来年(天皇賞)も楽しみだね」横山典騎手の話が聞かれた。139回天皇賞(春)までに、ホクトスルタンがどんな成長を見せるか。温かく見守りながら、11ヶ月後を楽しみにしたい。

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