エイシンデピュティの勝利は賞賛されてしかるべきだけど……
文/編集部
少頭数で行われることが多い
金鯱賞には珍しく、フルゲート一歩手前の
17頭が出走。
ゲートインしたのがすべて関西馬という点に西高東低を感じざるを得なかったが、
17頭中14頭が重賞勝ち馬ということで、例年以上に馬券に対するモチベーションは上がった。
近年は少頭数ということもあり、波乱の決着は期待しづらかったが、
多頭数、
道悪も重なった今年は伏兵の台頭もあるんじゃないかと。雨が降ったりやんだりですっきりしない天気だったが、そんな空模様とは裏腹に、心が躍ったファンも多かったことだろう。
実際、レースでは
2番人気の
エイシンデピュティが勝利したものの、
11番人気だった
マンハッタンスカイが
2着に入り、馬単は
1万1030円、3連複は
4万6930円、3連単は
24万3340円と高配当が飛び出すこととなった。
マンハッタンスカイは前走の
新潟大賞典で
2着に好走していたが、それ以上に魅力的な馬が揃っていたせいか、はたまた前走で2着とはいえ
重賞で未勝利だったせいか、予想以上に人気がなかった。
終わってみれば、3頭しかいなかった重賞未勝利馬の1頭が波乱を演出し、同じく重賞未勝利馬の
カネトシツヨシオー(
5着)も掲示板に載った。格下と思われた2頭が存在感を示したのはなんとも皮肉だ。
一方、
昨年の金鯱賞で1~3着だった
ローゼンクロイツ、
スウィフトカレント、
インティライミは
競走中止、
12着、
7着となった。昨年は
パンパンの良馬場でレコード決着だったが、このあたりに
道悪馬場の影響を感じざるを得ない。
また、
1番人気の
アドマイヤオーラ、
3番人気の
サクラメガワンダーは
6着、
4着。2頭とも渋った馬場が影響した部分もありそうだが、
アドマイヤオーラは加えて
ドバイ遠征の目に見えない疲れがあったのかもしれない。
後続の差し馬は不発に終わり、ハナを奪った2番人気の
エイシンデピュティが逃げ切りを決めたわけだが、スローペースで楽をしていたかというそうではなく、
平均ペースで、
マンハッタンスカイにずっとプレッシャーをかけられての逃げ。
4コーナーで外から被された時に交わされるかと思いきや、直線で盛り返し、結局、1馬身半差突き放した。
大阪杯で
ダイワスカーレット、
アサクサキングスというG1馬の間に割って入った実力はもう本物と見ていいだろう。
97年以降、
金鯱賞で逃げ切りを決めたのは
サイレンススズカ(98年)、
タップダンスシチー(03年、05年)、
コンゴウリキシオー(06年)がいるが、
サイレンススズカと
タップダンスシチーはその後
G1を制し、
コンゴウリキシオーは
安田記念で
2着に好走した。
確かに今回は、
道悪で後続の有力馬が苦しんだという状況があるかもしれないが、G1級が揃う
金鯱賞において逃げ切りを決めるというのは、それなりのポテンシャルがないとできない芸当だと思う。
エイシンデピュティの勝利は賞賛されてしかるべき。
逆に残念だったのは、これは外から観ている側の感想に他ならないが、レースが淡々とした流れになり、見せ場らしい見せ場というか、
テンションが上がるような場面が見られなかったことだろうか。
3コーナーあたりで
「誰もエイシンデピュティ、マンハッタンスカイを捕まえに行かないの!?」と思ったところで、
武豊騎手(
マチカネオーラ)が早めにポジションを上げて行った。
アドマイヤオーラ&
安藤勝己騎手も外から動いていた。
マチカネオーラは
10番人気という人気薄だったので、
武豊騎手も冒険ができた部分があるかと思う。また、他の人気馬も
馬場を気にして、馬が思うように進んで行かなかったのかもしれない。
ただ、はっきり言えば、
「もう少し積極的に動く場面があってもいいのでは!?」という思いが過ぎったのも確かだ。せっかく好メンバーが揃ったG2戦。
たとえ馬券は外しても、テンションが上がるレースを観たかった、というのは単なるエゴか。
レース後の心境は空模様のように、何かすっきりしないものがあったが、
カワカミプリンセスが1年近いブランクがありながら
3着に頑張ったことでどこか救われた。
宝塚記念では心が晴れ晴れするような快走を期待したいものだ。