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あの「強いウオッカ」が帰ってきた
文/浅田知広

エイジアンウインズが優勝したヴィクトリアマイルでは、「クラシックでの実績馬につい目がいってしまう4歳世代の牝馬だが、この一戦で改めて層の厚さを証明した」と書いた。

これには言葉通り「やっぱり4歳牝馬強いよなあ」という意味もあり、同時に「ウオッカなにやってんだ」という思いもあった。

当時の2着敗退には、遠征帰りで出走態勢が万全ではなかったという面もあるだろう。ただ、ダービーで牡馬相手にあれほど強い競馬を見せた馬が、「ダイワスカーレット抜き」の牝馬同士で内容的には完敗とも言えるような結果に終わってしまい、かなり寂しい印象を受けたのも事実だ。

そんな煮えきれない走りを受けての安田記念である。帰国2戦目で体調は上向いてくると思われる一方で、今度は外国馬も含めた牡馬相手。

さらに、逃げ馬はコンゴウリキシオー1頭だけというメンバー構成で、ヴィクトリアマイル同様の上がり勝負になってしまっては、この馬の底力が活かせないのではないか、という不安も大きな一戦だった。

ゲートが開くと、その不安が的中してしまったかのような好ダッシュ。いや、先行馬ならダッシュがつくに越したことはないのだが、元々折り合いに難しさのあるこの馬にとっては、果たしてこれが良いのかどうか微妙なところ。

実際、今回も行きたがる仕草を見せており、落ち着くまでにかなり手間取っていた。このままでは直線で末脚不発で着外敗退、そんなシーンを思い浮かべた方も多いことだろう。

ところが、今回のウオッカダービーを思い出させるかのような走りで見事によみがえった。

内を突くか外に出すか、あるいは先頭に立つタイミングなどに違いこそあれ、早めの仕掛けからぐいぐいと脚を伸ばし、後続を大きく突き放していく走りは、まさにあの「強いウオッカ」が帰ってきた、という競馬であろう。

宝塚記念のファン投票は、第2回の中間発表で堂々の第1位。ファンの間からは「あの強いウオッカはもう居ないんだよ」なんて声も聞こえつつあったここ最近の成績だったが、復活のG1制覇でもう一度ファン投票1位にふさわしい馬になったと言えそうだ。当然、最終発表ではさらに大きく票を伸ばしてくるに違いない。

次走はその宝塚記念に出走するのか、それともに向けてひと息入れるのか、あるいは再び海外の大レースへと駒を進めるのか。できることなら、「不振のウオッカ」ではなく「強いウオッカ」の海外遠征を見てみたいものだが、陣営はいったいどんな選択をするのだろうか。

いずれにしても、牝馬によるダービー制覇という歴史に残る名馬が新たな勲章を加え、これでまた先々が楽しみになってきた。

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