キンシャサノキセキがイチロー選手とダブって見えた
文/編集部
イチロー選手が所属する
シアトル・マリナーズは、現地7月5日時点で、
アメリカンリーグ西地区の最下位。その勝率(4割2厘)は、
リーグ14球団の中で最下位と低迷している。
イチロー選手自身は、オールスター戦を前に調子を上げ、打率を
3割に乗せてきたが、低迷するチームの中にあって、またも
「個人成績に徹してる」ような言われ方もされている。
これが優勝争いに加わっているチームならそんな話も出ないのだろう。
恵まれないなあと思う反面、それが
チームスポーツの野球の宿命でもあるのだろう。
今年の
函館スプリントSの
キンシャサノキセキを見ていたら、ふと
イチロー選手の姿がダブって見えた。
前半3Fが32秒8という高速ラップで流れる中、
キンシャサノキセキは持ったままで4番手を追走していた。折り合いは付いていたのだろうが、手綱を引っ張る
岩田騎手の姿を見る限り、このラップでも
キンシャサノキセキにはやや遅めだったようだ。
直線入口では多少強引に割って出て、早めにセーフティリードを取って優勝したが、
キンシャサノキセキにとって、これがベストレースではないだろう。
イチロー選手の現在の打率(3割4厘)のように、一般的に見れば
「いい成績」ではあっても、実力を考えれば
「まだまだこんなもんじゃない」と思わせられた。
数々の記録を打ち立ててきた
イチロー選手に比べて、
キンシャサノキセキはこれが
重賞初タイトルで、
買いかぶり過ぎと思う向きもあるかもしれない。
しかし、
G3より
G2、
G2より
G1でパフォーマンスを上げ、このハイラップを早め先頭から完勝した内容を見れば、やはり
そのポテンシャルはG1級との評価を下したくなる。
90年以降、
芝1200m重賞で、
前半3Fが32秒台となったケースは
27レースある。今回の
函館スプリントSを除く
26レースで、
4角3番手以内から押し切って勝った馬は
13頭いるが、そのうち
8頭は
G1馬となっている。
ハイラップを先行して押し切るのだから、能力が非凡なのは間違いない。
キンシャサノキセキは掛かり気味に先行して押し切ったのだから、
『9頭目』となる可能性も決して低くはないだろう。
低迷するチームの中で、おそらく今年も
オールスターに選ばれるであろう
イチロー選手と、
G3のペースでは遅すぎると言わんばかりだった
キンシャサノキセキ。それぞれの境遇がダブって見えたのだ。
ただ、
野球選手はいくら個人成績が優れても、チームが低迷すればやはり評価は低くなる。逆に、
競走馬は、いくらペースが遅いと言っても、それに合わせて勝ち鞍を重ねていかなければ、G1の頂点には辿り着かない。
キンシャサノキセキはまだクリアすべき課題があるのは間違いないが、それでも
G3でひとつの成果をあげたことは、確実に次のステップに繋がるだろう。
余談になるが、個人的に
イチロー選手のベストパフォーマンスは、
第1回ワールド・ベースボール・クラシックだと思っている。チームとしてギリギリの頂上決戦に挑んだ時の
イチロー選手に、いちばんの凄味を感じた。
キンシャサノキセキも、
世界のスプリント王者と覇を競うような舞台でこそ真価を発揮する。そう思えてならない。