オールドルーキーが輝きを増すのは、まだまだこれから!?
文/編集部

昨年と同じ
単勝1.7倍の1番人気に支持された
ワイルドワンダー。
今年のフェブラリーSで3着に走った実績、
過去8年で1番人気は[6.2.0.0]、
自身はダ1400mで[5.0.1.0]などなど、引き出しを開けても出てくるのは好材料ばかり。死角らしい死角は見当たらなかった。
そんなディフェンディングチャンピオンを負かすなら? 同じような位置取りから、ヨーイドンの競馬をしても敵わないはずだから、自然と
前に行きそうな馬に目が行く。実際、
ワイルドワンダーの連覇を阻んだのは、
3番手で流れに乗っていた
ヴァンクルタテヤマだった。
1~3着となった
ヴァンクルタテヤマ、
ワイルドワンダー、
サンライズバッカスは同じ
6歳馬で、
2002年生まれの同世代になる。
サンライズバッカスは
昨年のフェブラリーSでG1制覇を飾り、
ワイルドワンダーは
重賞3勝をマーク。
出世という点で、
ヴァンクルタテヤマは2頭に遅れを取っていた。
夏の北海道の競馬を念入りに見ているせいか、
ヴァンクルタテヤマのことはよく知っている。
函館&札幌ダ1000mで[4.1.1.0]という北海道巧者で、毎年、夏の北海道にやってきて勝利を挙げていた。
2歳新馬戦(札幌ダ1000m)では出遅れながら、3馬身差をつけて勝利したレースも懐かしい。
ただ、
ヴァンクルタテヤマは
440kgにも満たない小柄な牡馬であり、しかも、
馬体の増減が激しいタイプ(今回も8kg減っていた)。だから、
滞在競馬の
北海道が合っていたのかもしれない。4年近いキャリアの中で、半年以上の休養を3回も挟み、気づけば今年ですでに
6歳を迎えていた。
今回の舞台に至るまでは少し遠回りをすることになったけど、
初挑戦で
重賞タイトルを射止めた。親戚の子に久しぶりに会って、
「あんなに小さかったのに、こんなに立派になって」という、よく聞くフレーズではないが、繊細だったあの
ヴァンクルタテヤマが……。
前走の
欅S(東京ダ1400m、②着)では
フェラーリピサにアタマ差及ばなかったものの、レコードの
1分21秒9で走り、今回は
レコードに0秒1差の
1分22秒0で走破して
ワイルドワンダーを退けた。実績のなかった距離で、2戦続けて高いパフォーマンスを発揮したのだから、本当に立派になったものだ。感慨深い。
一方、
ワイルドワンダーは連覇こそ叶わなかったが、昨年の勝ち時計(
1分22秒7)を0秒5短縮して走ったのだから内容は悪くない。昨年の上がり(36秒3)を1秒5も上回る
34秒8の脚を使いながら届かなかっただけに、
思ったほど流れなかったペースに泣いたと言える。
昨年と今年で前後半3Fの時計を比較すると、昨年は
33.4-37.4、今年は
34.6-35.6。ハイペースで先行馬が止まった昨年とは違い、今年は先頭
バンブーエール、2番手
ラインドライブ、3番手
ヴァンクルタテヤマと隊列が落ち着いてしまい、ペースが上がらなかった。
決着時計は速かったが、先行馬に有利な流れ。実際、
1年2ヵ月の長期休養明けだった
バンブーエールが4着に粘ったことを見てもわかる。その中で、後方から追い込んで来た
ワイルドワンダー、
サンライズバッカス。このあたりは、
G1でも勝ち負けできる地力がモノを言ったということだろう。
シルクビッグタイムは
3番人気で
5着となったが、持ち時計を1秒5も短縮し、
1分22秒5で走ったのだから力は出し切ったはず。
53kgの軽量ながら、
3歳夏の時点で古馬相手にこれだけやれれば、その未来は明るいだろう。
2番人気に推された
ゼンノパルテノンはスタートで後手を踏み、後方からの競馬となったが、直線で伸び切れず
9着。差し馬に不向きな流れだったとはいえ、自身より後ろにいた
ワイルドワンダー、
サンライズバッカスが馬券に絡んでいるのだから、少し物足りない結果か。
ちなみに、これまでの
プロキオンSの勝ち馬はその後、97年
バトルライン(重賞2勝)、00年
ゴールドティアラ(重賞1勝)、01年
ブロードアピール(重賞2勝)、02年
スターリングローズ(翌年のプロキオンSを含め重賞5勝)、04年
ニホンピロサート(重賞3勝)、05年
ブルーコンコルド(重賞8勝)、06年
メイショウバトラー(重賞7勝)、07年
ワイルドワンダー(重賞1勝)。
近年では、
地方交流重賞の常連となっている
ブルーコンコルドや
メイショウバトラーがその最たるものだが、
プロキオンSの勝利を皮切りに、
ダートの重賞戦線で活躍する馬が続出している。
ヴァンクルタテヤマにとって、これほど縁起の良い重賞は他にないでしょう。
しかも、
ヴァンクルタテヤマは近親に
ギャロップダイナ(5歳秋に天皇賞・秋を制し、6歳時に安田記念1着、暮れの有馬記念で2着)がいるように、血統は
遅咲きという印象。
ダート短距離界のオールドルーキーが輝きを増すのは、まだまだこれからかもしれない。