直線1000mは一見、単純なようでかなり奥が深い
文/編集部
今日、最終日を迎えるゴルフの全英オープンは、
タイガー・ウッズが不在で
混戦と言われている。
台風並みの強風が吹いているせいで、各プレイヤーがスコアメイクに苦しむ中、3日目を終えた時点で首位に立っているのは、53歳の大ベテラン・
グレッグ・ノーマン。勝てば、
全英オープン史上で最年長優勝となるとか。
各国の名だたるプロゴルファーが集いながら、首位が
2オーバーというのだから、
「どれだけ難しいコースで、どれだけ悪条件なんだよ」と、競馬の予想をしながら深夜中継に見入っていた。
今年の
アイビスサマーダッシュも、戦前から
混戦、
混戦と叫ばれていた。出走馬18頭中10頭が
重賞ウイナー、9頭は
芝の1200m以下の重賞で連対実績のある馬が顔を揃えているのに。メンバーの質自体は例年とそれほど変わらなかったようにも思う。
ただやはり、
出走馬18頭の芝G1成績を総合すると
[0.0.2.29]。昨年のスプリンターズS1、2着
アストンマーチャン、
サンアディユ、今年の高松宮記念1、2着
ファイングレイン、
キンシャサノキセキといった面々が不在ということになれば、確かに中心馬を見出しづらい組み合わせではあった。
単勝オッズも
10番人気の
シンボリグランまでが
20倍を切り、3連単の1番人気もカノヤザクラ→エイムアットビップ→クーヴェルチュールで141.9倍もついていた。予想の決め手が見出しづらく、様々な予想ファクターが散在する状況。それこそ、
迷いという名の強風が吹き荒れていた。
おそらく、馬券を買っていた人の多くも、予想メイクに難儀したことだろう。その結果が、
アイビスサマーダッシュで抜群の強さを見せる
「牝馬」に行き着き、
エイムアットビップ、
カノヤザクラ、
クーヴェルチュールが単勝で1~3番人気になった背景なのかもしれない。
その中で勝利を収めたのが、今年に入って
10、7、13着と掲示板外に終わっていた
エイムアットビップではなく、
9ヵ月という長期休養明けの
クーヴェルチュールでもなく、
前走のCBC賞で出遅れながらも5着(勝ち馬から0秒4差)に健闘していた
カノヤザクラだった。
「牝馬は調子」、
「牝馬は順調度」といった視点からいえば、その3頭の中で
カノヤザクラが勝利したのは納得がいく。今日はスタートを五分に出れたことが最大の勝因だろうが、前半は少し追走に苦労しながらも、馬群をうまく捌いて抜け出した。
完勝と言っていい。
なかなか重賞タイトルに手が届かなかった
カノヤザクラだが、
9度目の挑戦で待望の初制覇。第1回の
アイビスサマーダッシュを制した
メジロダーリング以外の牝馬はみな、ここで
重賞初制覇を飾っていたことを考えても、そういう巡り合わせだったのかもしれない。
ちなみに、
サクラバクシンオー産駒が
アイビスサマーダッシュを制したのは
カノヤザクラが初めて。
大外枠に入った馬が勝ったのも
カノヤザクラが初めて。重賞初制覇の裏には、そういった他の
“初めて”も存在している。
また、
「重賞のツボ」や
「メインレースの考え方」でも触れたように、
同年のそれ以前に芝で連対実績がなかった馬は[1.0.0.45]で、勝ち馬は07年の
サンアディユだけだったが、ワンツーしたのは今年が初めて。
1枠1番の馬は過去7年で
[0.0.0.7]、
アイビスサマーダッシュで2勝した
カルストンライトオですら、05年に
1番人気で
4着に負けていたのに、今年は
アポロドルチェが
3着に飛び込むという。何かとデータが覆されました(笑)。
レースが決着するのに1分もかからない稀有な重賞、
アイビスサマーダッシュ。
「牝馬(特に51kgの軽量の3歳牝馬)が強い」、
「外枠が有利」といった一応のセオリーは浮上しながらも、なかなかその全貌を露にしない。
直線1000mは一見、単純なようでかなり奥が深いということか。
今年の反省を来年にどう活かすかだが、結局は
「牝馬」や
「外枠の馬」を中心に買っていそうで怖い。
橋口厩舎は今年、
ダノンゴーゴーが
ファルコンSを勝ち、
CBC賞で
スリープレスナイトが勝利し、
カノヤザクラが
アイビスサマーダッシュを制した。
他にも
ペールギュント、
オディールといった
芝の短距離重賞の活躍馬がいる。来年の
アイビスサマーダッシュに5頭が揃って出てくることはちょっと考えづらいけど、仮にその5頭が
新潟芝直線1000mで走っても、馬券を当てられるかどうか自信がない(笑)。
全英オープンを見ていた感想ではないが、今年の
アイビスサマーダッシュも
「どれだけ予想メイクが難しいコースなんだよ」としみじみ思った。