20年ぶりの記録の裏には、母の“洋芝適性”があったか
文/編集部

97年から01年にかけては5年連続で馬連が万馬券になり、
荒れ放題という印象があった
函館記念だが、ここ最近はずいぶんおとなしくなっている。昨年こそ、6年ぶりに馬連万馬券決着となったが、一昨年と4年前には
馬連950円という低配当を記録。今年も馬連は
1830円だった。
今年のハンデは、上が
57.5kg、下が
54kgという開きだったが、その着順分布は次のようになった。
56~57.5kg:
①~⑤、⑦着54~55kg :
⑥、⑧~⑭着ついでに単勝人気での着順分布も記すと、次のようになっている。
1~6番人気 :
①~⑥着7~14番人気:
⑦~⑭着つまり、
実力を見込まれてある程度のハンデを課せられた馬が、それでも上位人気に推されて、しっかり好走した、というわけ。
重ハンデでも実力上位の力を見抜けた人が多くいたことは素晴らしいですね。反面、穴党の人たちからは
「ハンデキャッパーよ、もっとハンデ差を付けんかい」との恨み節が聞こえてきそうだ。
函館記念が比較的平穏な決着に収まるようになった背景には、
その適性がバレた面が大きいように思う。
函館&札幌の洋芝には
独特の適性が求められることは、現在はすでに知れ渡っているが、かつてはそうでもなかった。
例えば99年の
函館記念では、
函館&札幌芝が初の
タイキブライドルが1番人気に推されている(15着)。翌00年の1番人気は、前走で初めて
函館芝を走り、そこで4着に敗れた
アドマイヤコジーンだった(6着)。02年の1番人気も、前年の
札幌日経OPで1番人気で6着に敗れた
メイショウラムセスが推されている(6着)。
このような
洋芝適性に確約が付いていないタイプは、近年は疑いの目を向けられやすくなっている。
また、前哨戦である
巴賞との相関関係もバレているようだ。
かつては
巴賞で好走した馬が本番で上位人気に推されて下位に敗れ、
巴賞で敗れた馬たちが逆転する現象が起こっていたが、今年は単勝人気を見ても、その相関関係がバレていることが明白だった。
巴賞を勝った
フィールドベアーは
1番人気に推されたが、同着で1着だった
マヤノライジンは
5番人気となり、逆に、
巴賞で6着だった
マンハッタンスカイが
2番人気、同3着の
ピサノパテックが
3番人気、同4着の
トーセンキャプテンが
4番人気。
マヤノライジンは
2000mより1800mの方が成績が良い面も考慮されたのだろうが、明らかに
巴賞は
「単なる前哨戦」と認識されていることが伝わってくるオッズだった。
レース前から
函館記念の正体がバレていることを実感し、
世知辛いなあとの思いも感じていたが、そんな中、唯一と言ってもいい違和感を感じていたのが
トーセンキャプテンに対してだった。
トーセンキャプテンは前走の
巴賞が
初の北海道の洋芝で、出遅れが響いとはいえ
4着に敗れている。デビューから3連勝した馬で、それらがいずれも
冬の洋芝混じりの馬場だったとはいえ、
“本場の洋芝”ではまだ適性を示していない。
それでも、前走の単勝オッズが
5.5倍で、今回が
6.9倍と、あまり人気を落とさずにいた。
サッカーボーイが
芝2000mで
1分57秒8というタイムを叩き出した88年以降、
函館記念は、
函館か札幌の洋芝で連対歴のある馬がずっと優勝してきていた。
20年に渡って続いてきたものを、
トーセンキャプテンは覆せるのだろうか。そう考えた時、この単勝オッズは買われすぎと思ったのだ。
ところがどうだ。結果は
ハナ差とはいえ、
函館芝での勝ち鞍がある馬たちを2~5着に抑えて優勝した。
函館記念の正体がバレていたこと以上に、
トーセンキャプテンの真の実力を見抜いていた人が多かったことに、もっと驚かされた。
トーセンキャプテンは、
父ジャングルポケット、
母サンデーピクニックという血統で、母は
サンデー産駒の帰国子女だ。
サンデーピクニックは98年に
フランスでデビューし、
クレオパトル賞という現地のG3を制覇。その次走では、重馬場の
英オークスで
4着にも入っている。
トーセンキャプテンに
“本場の洋芝”での実績がないと前記したが、母の
サンデーピクニックには、
北海道の洋芝どころではない、欧州の
“本当の本場の洋芝”での実績があった。今回の人気はそこまで考慮されたものだったのか? だとしたら……本当に
世知辛い世の中って感じがしますなあ(笑)。