3コーナーを過ぎてから、衝撃は二度やってきた
文/編集部

なんでもそうですが、
2段構えになっていると衝撃度というのは増すものだ。
例えば
体操の床。対角線に向かって走り、飛んでクルクル回って着地したかと思ったら、近年はそこから休む間もなくもう1回飛んで回ったりする。
オリンピックがある4年に一度ぐらいしか体操を見ないから、技術の進歩についていけてないのだろうが、最初に見た時には驚いた。体操選手はいったいどんなバネをしているんだと思ったものだ。
先日、深夜の新宿を歩いていたら、
どう見ても50代くらいの男性がタクシーから降りてきて、よく見たら
セーラー服だったということもあった(
ミニスカートも着用)。しかも、その方は歩道に降り立つと、
スキップをして雑踏に消えていった。なんでも
2段構えというのは衝撃度が強い。
前置きが長くなりましたが(笑)、今年の
小倉記念も、ある意味で
2段構えの衝撃が用意されていて、度肝を抜かれた。
ミヤビランベリが作り出したペースは
1000m通過59秒3で、比較的平均的な流れだったろう。
ダイシングロウはそれを3コーナーから外を回ってスーッと馬なりで並び掛けていった。それを見た時は、
「凄いな、ダイシングロウ。軽く飛んでるじゃん」と思ったものだ。
ところがこれは前段階に過ぎなかった。その後ろに、まさに虎視眈々といった感じで
ドリームジャーニーがこれまた馬なりで忍び寄っていた。
そのまま直線に入ると、
「本当に“軽く飛ぶ”とはこういうことだ」と言わんばかりに
ドリームジャーニーがエンジン全開となり、
ダイシングロウを千切り捨てた。
ドリームジャーニーと
ダイシングロウの差は
3馬身で、そこから3着馬は
1馬身差、4着馬はさらに
2馬身差。勝ち時計の
1分57秒9は、
スウィフトカレントのレコードに0秒1差と迫るもので、抑えていなければ更新していたかもと思わせるものだった。まさにG1馬の実力を見せつけたと言える。
ドリームジャーニーが記録した上がり3Fは
34秒4で、これはもちろん
メンバー1位。2位の
ケンブリッジレーザが
34秒7で、残りの13頭は35秒以上だった。
ドリームジャーニーは、
菊花賞以降は成績不振に陥っていたが、
鳴尾記念は上がり3Fが
33秒8で、
マイラーズCが
34秒3、
安田記念も
34秒3。長距離を除けば、今回とほとんど変わらないタイムを計時している。彼にとってはこれくらいの上がりタイムは出して当然と言えるレベルなのだろう。
ただ、近走は、速い上がりを使いながらもそれ以上に切れるタイプがいて、上がりがメンバー3位以内になることがなかった。逆に言えば、今回は、
この上がりタイムでメンバー1位になるメンバーと展開だったわけで、
ここでは実力が抜けていたということなのだろう。
G1馬でG2勝ちもある
ドリームジャーニーは、もちろんG1獲りが最大の目標であるはずだ。今回の勝利をきっかけにして、メンバーが強くなっていく今後に、さらにどれだけ切れる脚を見せられるかが焦点となってくるのだろう。
今回の衝撃はあくまで
前段階に過ぎず、それこそ、
2段構え、
3段構えで、驚きの走りを続けて見せてほしいものである。
2着に敗れた
ダイシングロウは、さぞかしビックリしたことだろう。すっかり引き立て役となってしまったが、今回の敗北で評価を下げる人はいないはずだ。むしろ
重賞勝ち実績馬よりも重いハンデを背負いながら、勝ちに行く競馬で連対を確保したことで、地力を再認識した人も多いことだろう。
95年以降の古馬混合の芝2000m重賞で、
昇級馬が連対したケースは
70頭を数えるが、
斤量56kg以上だったのは
11頭。そのうち8頭がその後に
重賞ウイナーとなり、3頭がG1で連対を果たしている(
アグネスアーク、
ナリタセンチュリー、
サンデーブランチ)。
ダイシングロウと話ができるものなら、そのデータを語りかけて、肩を叩いてあげたいものだ。