ヤマニンメルベイユの走りは文句なしで金メダル
文/編集部
クイーンSの同日、
北京五輪では
女子マラソンが行われ、ルーマニアの
コンスタンチナ・トメスク選手が
2時間26分44秒というタイムで優勝した。前半はかなりのスローペースだったが、
トメスク選手は後半にスパートして2番手以下とのリードを大きく拡げ、そのまま押し切った。
トメスク選手の自己ベストは
2時間21分30秒。優勝候補と目されていた
キャサリン・ヌデレバ選手、
ポーラ・ラドクリフ選手と比べれば、それほど強調できるタイムではない。確かにスローペースで時計勝負にならなかったことが勝因という見方もできるが、最大の勝因は
自分の走りに徹したことだろう。
というのも、
トメスク選手はこれまで、レース終盤にペースダウンしたことが何度かあった。それでも今回も勝負に出た。ダイナミックなフォームでガンガンと突き進んで独走する。そこに、
メダルを取るんだという強い信念が感じられた。
42.195kmを走るマラソンとは別物だが、
クイーンSも
牝馬が競うレースという点では共通する。今年の勝者は
ヤマニンメルベイユ。
トメスク選手は前回の
アテネ五輪で
20位だったが、
ヤマニンメルベイユも
昨年8着から見事にリベンジを成し遂げた。
中山牝馬Sに続いて
重賞2勝目となったわけだが、
走破時計、
レースの1000m通過、
自身の上がりを比較すると、
中山牝馬Sは
1分48秒4、
60秒8、
35秒7、
クイーンSは
1分48秒1、
60秒9、
35秒5。2番手、先頭と位置取りは異なるが、タイムはそっくり。
開幕週の馬場を味方につけ、
自分の競馬に徹し、混戦の2着争いを尻目に2馬身差の快勝。手綱を取った
柴山騎手のペース配分もお見事だが、
これぞキャリア豊富なベテランの業というレースぶりだった。クラシック実績馬の
レジネッタ(
1番人気)と
エフティマイア(
3番人気)の間に、
2番人気で割って入っただけのことはある。
また、ベテランというのは語弊があるかもしれませんが(笑)、
12番人気で
3着となり、波乱を演出した
フミノサチヒメも5歳馬だ。
札幌芝では[3.1.3.1]となり、
洋芝巧者ぶりをいかんなく見せつけた。
出走馬13頭の中で、
5歳以上の馬は
ヤマニンメルベイユと
フミノサチヒメだけ。
3歳馬は00年以降で最多となる
8頭が出走し(00年
1頭、01年
4頭、02年
2頭、03年
2頭、04年
2頭、05年
3頭、06年
3頭、07年
1頭)、
クラシック勝ち馬(
レジネッタ)の参戦は初めてだった。
そういった状況下で、2頭しかいなかった
5、6歳馬が揃って馬券圏内。
「競馬とは得てしてそういうもの」と言ってしまえばそれまでだが、
準OPの身で格上挑戦だった
フミノサチヒメが、桜花賞馬
レジネッタと
クビ差の接戦を演じ、
桜花賞&オークス2着の
エフティマイアに先着を果たすのだから、競馬は分からない(笑)。
レジネッタは
2着を確保してクラシックウイナーとしての面目を保ったと言えるが、
エフティマイアは
好位のラチ沿いという絶好のポジションでレースを進めながら、直線で伸び切れず
5着。
24kg増の影響を多分に感じる結果だっただけに、秋に向けての展望が曇ったということはなさそう。
ユキチャンも
出走取消明けで8kg増の影響があったかもしれないが、中団追走も伸び切れず
9着、道中の反応もひと息だった。
関東オークスの圧勝を見てもそうだが、
重賞クラスが相手となると、芝よりダートがベターということか。今後の巻き返しに期待しましょう。
クラシック連対馬の
レジネッタ、
エフティマイアが揃って出走し、
白毛馬の
ユキチャンも参戦して、例年以上に注目を集めた
クイーンS。
コンスタンチナ・トメスク選手の
2時間26分44秒というタイムと同じく、近3年の
1分46秒7という時計と比較すれば、
ヤマニンメルベイユの勝ち時計
1分48秒1は平凡だった。
サラブレッドは速く走ることを宿命づけられた存在と言えるが、マラソンも競馬も
タイムを競うのが主目的ではない。タイムはあくまで二次的要素であり、
いかに先頭でゴールを駆け抜けるかを競うもの。
ヤマニンメルベイユの走りは、G1馬を破って
金星をあげたと同時に、文句なしで
金メダル。