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「ハレの日」の札幌競馬場で、レース後はどよめきが起こった
文/村本浩平

札幌記念は北海道の競馬ファンにとって「ハレの日」である。

1976年に、皐月賞馬トウショウボーイダービー馬クライムカイザーが出走した際の入場人員6万549人は、いまだ破られぬ札幌競馬場の入場人員レコードでもある。

1997年にG3からG2へと昇格すると、秋G1シリーズへの前哨戦としてエアグルーヴファインモーションアドマイヤムーンといった有力馬たちが次々と参戦。普段は滅多に目にすることができないスターホースを一目見るために、札幌競馬場には多くのファンが足を運んだ。

しかし、先週のクイーンS白毛で注目されるユキチャンが姿を見せ、しかも桜花賞の1着馬レジネッタと、2着馬のエフティマイアが揃って出走したこともあって、札幌競馬場には2万5000人を超えるファンが来場。それに比べて今年の札幌記念は、G1馬マツリダゴッホ一頭だけと、レース前の話題性ではクイーンSよりいささか寂しい印象もあった。

そう思いながら足を運んだこの日の札幌競馬場ではあったが、その思いは第1レースからできていたパドックの人垣に、いい意味で裏切られることとなった。やっぱり札幌記念「ハレの日」なのだろう。

1番人気の支持を集めたのは、やはり唯一のG1馬であるマツリダゴッホ重賞で2勝を挙げた3歳馬のマイネルチャールズがそれに続く。マツリダゴッホの生産者である岡田スタッドの岡田牧雄代表と、マイネルチャールズが所属するラフィアンターフマンクラブの前代表である岡田繁幸氏は兄弟であり、言わばこの札幌記念「競馬場での兄弟喧嘩」と呼ぶべきレースとなるのではと思っていた(そうはいっても、ふたりとも普段から仲がいいが)。

そのふたりの関係に割って入るかのように、スタートから猛ダッシュを見せたのがコンゴウリキシオーだった。1000m通過58秒4というハイペースで逃げるコンゴウリキシオーを見るように、マツリダゴッホマイネルチャールズは中団から並んで追走。4コーナー手前でマツリダゴッホが得意のまくりをかけて先頭に立ち、そこからマイネルチャールズが並びかけるのでは、と思ったが、松岡騎手のゴーサインに対してこれまでのレースで見せてきた弾けるような反応はなかった。

その時、後ろから鋭く追い込んできたのがタスカータソルテである。休養後に一叩きされた前走の函館記念の後は社台ファームで調整され、状態こそ上がっていたのは間違いないが、G1馬を差し切る豪脚で記録した時計は、なんと1分58秒6のレコード。ゴールの瞬間の札幌には歓声ではなくどよめきすら起こっていた。

レース後、観客の声援に答えるようにガッツポーズを取っていたの横山典弘騎手は、記者に囲まれた時でも「一叩きしたことで馬も良くなっていたし、イメージ通りに弾けることができた」と笑顔を見せていた。

一方、マツリダゴッホに乗っていた蛯名騎手はどこか納得したような表情を浮かべながら、「馬体が減っていては勝てない馬。今日も手応えの割りに最後はスタミナ切れしてしまったような印象がある」と話していた。

しきりに首をかしげていたのがマイネルチャールズに騎乗していた松岡騎手で、「馬は良くなっていたけど、4コーナーで行く気がなくなっていた。走れると思っていたのですが…」と自分でも答えを見つけかねているようにしながら、記者の質問に答えていた。

札幌記念がG2に昇格してからの優勝馬を見ると、すでにG1を勝っている馬、もしくは後のG1馬が並んでいることに気づく。

つまり札幌記念「G1級の馬が勝つレース」ということでもあるのだが、だからこそ、出走馬の中で秋のG1戦線を最も面白くしてくれると思っていたマイネルチャールズの惨敗は残念でならない。また、3歳馬のレベルという面においても疑問を投げかける結果となってしまった。

一方、グランプリホースを差し切ったタスカータソルテは、これからの秋のG1戦線において要注目の馬となったと言える。

脚質距離、そして父ジャングルポケットという血統的にも、東京競馬場の芝2000mで行われる天皇賞・秋が条件的に最適ではないだろうか。

マツリダゴッホは馬体さえ戻り、そして中山競馬場なら無敵なだけに、有馬記念でベストなパフォーマンスを見せてくれそうという意味では、今日、記録したレコードタイの時計は上出来だろう。

「ハレの日」が終わったあとの札幌開催は一気にを迎える。しかし、この3頭をはじめとする札幌記念の出走馬たちが、秋のG1シーズンが行われる頃には雪もちらつくようになる北海道の競馬ファンを熱くさせてくれるような活躍を期待したい。

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