ゴール前の接戦は、競馬の神様の思い通りだったか?
文/編集部
新馬・
マリーゴールド賞と連勝していた
ツルマルジャパンに対して、
新馬・
フェニックス賞と勝っていたのが
デグラーティア。今年の
小倉2歳Sは、
土付かずでOP特別を勝っている馬が2頭出走していた。
九州産馬限定の
ひまわり賞を除くと、
前走でOP特別を勝っていた馬が2頭も出走するのは、86年以降のこのレースで初めて。当然、この2頭が人気を二分するものと思われた。
ところが、ふたを開けてみたら、
ツルマルジャパンが
単勝オッズ1.6倍で圧倒的1番人気となり、
デグラーティアは
メイクデュースとともに
2~3番人気を行ったり来たりしていた(最終的には
単勝7.5倍の3番人気)。
この背景には、同じ連勝でも、
ツルマルジャパンが前走の
マリーゴールド賞を
レコードで制していたことが影響したのだろう。
デグラーティアは
フェニックス賞できっちり勝つ競馬を見せていたとはいえ、勝ちタイムの
1分9秒1は、同レースの04年以降でもっとも遅いもの。そのため、前走で
1分8秒3という好タイムで勝った
メイクデュースと同じようなポジションに置かれたのだろう。
加えて言えば、
鞍上の実績差もあったはずだ。
デグラーティアの
浜中騎手は、
デビュー2年目で伸び盛りの若手とはいえ、
重賞は未勝利。片や
武豊騎手は
JRA重賞253勝である。
浜中騎手が生まれた時(
88年12月25日)には、すでに
スーパークリークで
菊花賞を勝っていて、
重賞9勝をマークしている。そりゃあ、
年季が違うと思われても仕方ない。
しかし、競馬の神様も味な采配をしたものである。
重賞253勝のジョッキーが乗る馬を
最内枠に配置し、
重賞未勝利の若手の馬は近2走と同じ
大外枠となった。
スピード豊かな
ツルマルジャパンにとって、
最内枠は逃げを打つのに最適な枠順と思う向きもあったようだが、
連続して8週も競馬が行われた小倉の芝で、
内側の馬場がベストとは言えないはず。
00年以降の
小倉2歳Sで、
1~4枠が[2.1.2.47]なのに対して、
5~8枠が[6.7.7.46]となっていることを見ても、
内枠に厳しいことは明らかだった。
デグラーティアは
新馬戦が
10頭立ての10番枠で、
フェニックス賞が
9頭立ての9番枠。そして今回も
大外枠となった。キャリアの浅い2歳牝馬にとって、これは戦いやすかったことだろう。
この枠順の差が、結果に微妙な影響を及ぼした。最後の直線を見ていた時、ふとそんなことが頭に浮かんだ。
ツルマルジャパンは、
新馬戦でのテンの3Fが
35秒4で、
マリーゴールド賞が
34秒3。今回は
1200m戦に替わり、頭数も増えて絡まれる形になり、テンの3Fは
33秒2だった。
前半のペースが1秒以上も速くなっていて、さらに今回は、前記したように、
最内枠で馬場の悪い部分を走らせられた面もあるわけで、それで最後まで粘ったのだからやはり力がある。この一戦で評価を落とす必要はないだろう。
デグラーティアは、これで
3戦連続大外枠で3連勝を飾ったわけで、次戦以降は
枠順のことが話題にあがりそうだ。
しかし、レースを録画している人は、今回のレースぶりをもう一度見てほしい。
デグラーティアは終始外を回っているわけではなく、4コーナーでは馬群の中央に入り、直線では
メイクデュースが脱落する隙を突いて外に持ち出されて伸びている。
今後、スタート直後から揉まれた時はどうか分からないが、少なくとも馬群を気にするわけではないだろう。
そもそも
フジキセキ産駒である。
内枠での重賞好走も多い産駒なのだから、キャリアを積めば枠順なんぞ関係なくなるか。冷静な騎乗ぶりが光った
浜中騎手ともども、今後の伸びしろはかなりありそうだ。
冒頭で記した通り、
単勝1~3番人気は、
ツルマルジャパン、
メイクデュース、
デグラーティアで、その次に続いたのが
ワンカラットと
シルクナデシコだった。
単勝オッズが
30倍を切っていたのはこの5頭だけで、この5頭のうち、
5~8枠に配置されたのは優勝した
デグラーティアだけだった。
真ん中から外枠の馬から入るのが定石のこのレースで、馬券の中心に据えるべきだったのは、
5~8枠で唯一人気を背負っていた
デグラーティアだったのだろう。
言ってみれば、
「こちら側のどこからでも切れます」と書いてあるのと同じくらい盤石だったのに、どうして違うところから袋を開けようとしてしまったのでしょう……。無理矢理開けようとして引きちぎったので、今日も
袋が破裂です(笑)。
ちなみに、
デグラーティアとは、ラテン語で
「神の恩寵によって」という意味とのこと。しかし、
神の恩寵は、
受け取る資格のある者だけが受けられるそうである。人馬ともに、その名に相応しかった。