男は黙って、マツリダゴッホの単!
文/編集部
馬券的には、ここは明らかに
『チャンス問題』だったのだろう。
中山芝で
[6.1.1.1]の成績を誇るG1馬
マツリダゴッホが登場し、この地で芝重賞を勝ったことがある
シャドウゲイトと
エアシェイディは
休み明け。
キングストレイルも
1000mの距離延長で、2000m以上の距離は2年8ヶ月ぶりというのだから、
マツリダゴッホ以外に何が勝つというのだ、と思った人も少なくなかったはずだ。
そして、唯一の懸念材料と思われた
マツリダゴッホの
馬体重も、
前走比12kg増の490kg。これは
昨年の有馬記念時(498kg)や
今年の日経賞時(496kg)に比べれば少ないものの、前走の
札幌記念の時に比べれば明らかに良化を示しており、
香港遠征でしぼんだ体が元に戻りつつあることを表していた。
この馬体重の発表を受け、パドックで堂々と歩く姿を見た時には、
『チャンス問題』であることへの確信はさらに深まった。
と、ところがである。
キングストレイルは
2着で買ってないんですよねえ(笑)。
前走から1000mも距離を延長された馬が、重賞で連対なんかするか?と思ってしまい…。
クールポコ風に言えば、
「マツリダゴッホを頭にした3連単を買ってたのに、キングストレイルを3着付けにした男がいたんですよぉ~」「なぁーにぃ!? やっちまったなぁ!!」「男は黙って…」「マツリダゴッホの単!」といったところでしょうか(笑)。今回に限っては、
単勝140円がまぶしく見えます。
しかし、
単勝140円をゲットした人も、
3連単1万3780円を掴んだ人も、レース中はけっこう肝を冷やしたのではないだろうか。
キングストレイルがハナを奪って
先頭に立ち、
マツリダゴッホが
2番手に付ける形まではそれほど驚かなかっただろうが、向こう正面で入れ替わり立ち替わり先頭に躍り出ようとする馬が現れた時は、どうなることかと思われた。
レース後のインタビューで
蛯名騎手は
「(マツリダゴッホが)少し行きたがっていたので、あれで楽になった」と話していたが、見ている側は気持ちの悪い展開だった。ああいった乱ペースになった時、リズムを崩す馬を何度も見てきたからだ。
ゴーウィズウィンド、
ミストラルクルーズ、
エアシェイディの3頭が先頭に並び掛けたのが
第一波で、その後に、
キングストレイルを交わして
シャドウゲイトが一度は先頭に立ったのが
第二波。その間、
マツリダゴッホは
嵐が過ぎ去るのを待つかのように、内ラチ沿いをジッと進んでいた。
マツリダゴッホは今回で
キャリア20戦目。それこそ
香港遠征なども含み、何度も修羅場を重ねてきた経験があり、
何度も先頭が入れ替わる展開も、ペースが上がることでプラスに転化することができたのだろう。
第一波、第二波を作った馬たちは、結果的に
馬券圏外へ沈んだわけだから、むしろ
我慢ができなかった馬が自ら乱ペースを作ってしまったとも言えるのかもしれない。
乱ペースが過ぎ去り、4コーナー手前に差し掛かった時には、いつも通りの
マツリダゴッホの姿が見られた。そして、後はまさに独壇場。これまで何度も見せてきたように、先を行く馬を磨り潰して先頭でゴールした。結局、2着の
キングストレイルとは
2馬身の差が付いていた。
昨年のオールカマーは
バトルブレーヴが逃げ、それを
シルクネクサスと
マツリダゴッホが一緒に3~4コーナーで競り掛けて行き、一騎打ちを
マツリダゴッホが制したものだった。
今年に比べれば、前半の1000m通過(
61秒0)は0秒8速いものの、走破時計(
2分12秒5)は0秒5遅い。
シルクネクサスとの接戦になったこともあるが、
マツリダゴッホは坂下から仕掛けられていて、最後までビッシリ追われている。持ったままで
キングストレイルに並び掛け、最後は余力を持って突き放した今年は、明らかにレースぶりが違っていた。
「ひと皮も、ふた皮も剥けた」と
蛯名騎手が表現したのは、こういうことなのだろう。昨年に比べて、単なる完勝ではなく、凄味を感じさせる圧勝だった。
今後は
有馬記念連覇が最大目標となってくるのだろうが、レース後の
国枝調教師によれば、どうやらその前に
ジャパンCに出走するプランも浮上してきそうだ。果たして、庭である
中山競馬場を離れ、
3戦未勝利の
左回りのコースでどんなパフォーマンスを見せるだろうか。
ジャパンC出走が実現すれば、それは我々にとっては明らかに
『チャンス問題』ではないだろうが、
マツリダゴッホの真の成長を目の当たりにできるチャンスではあるだろう。
願わくば、
ジャパンCで2度目のG1制覇を果たし、
有馬記念で再び
『チャンス問題』を作っていただきたいものだ。その時は迷わず、
『単』でいきたいと思います(笑)。
押忍! ありやしたっ!