コース実績馬が人気を背負って勝てるほど、阪神ダート中距離戦は甘くない!?
文/編集部
京都にはダート中距離重賞が
平安Sと
アンタレスSと2レースあるが、
阪神にはこれまでなかった。
それが、06年の阪神競馬場の改修とともに、
2000mコースで
シリウスSが行われるようになり、今年からは
ジャパンCダートも開催されることになった。
ジャパンCダートは
1800mコースだが、いずれにしても、
阪神ダートでの中距離重賞はほとんど開催されていないため、取っ掛かりを見つけづらい。これは多くの競馬ファン、競馬記者の共通の認識だろう。
今年の
シリウスSは、
昨年の1~3着馬が揃って出走し、そのうち
3着だった
ワンダースピードが
1番人気、
1着だった
ドラゴンファイヤーが
2番人気だった(
2着だった
ラッキーブレイクはなぜか
12番人気)。
実は、今回の出走16頭の中で、
阪神ダートで
2勝以上を挙げているのは、この3頭だけだった(3頭とも2勝)。
ダノンビクトリー、
マイネルテセウス、
イイデケンシン、
ナリタブラック、
ゲイルバニヤンの5頭も
阪神ダートで勝ち鞍があったが、それぞれ
1勝ずつ。他の8頭は
阪神ダートでは
未勝利だった。
ワンダースピードは
今年のアンタレスS勝ち馬で、
ドラゴンファイヤーは
昨年のシリウスS覇者。出走16頭の中で、
中央ダート重賞勝ちがあるのはこの2頭だけだったのだから、そりゃあ
1&2番人気にも推されますわな。
至極真っ当な人気と言えた。
ところが、結果はご存じの通り、
ワンダースピードが
2着、
ドラゴンファイヤーが
5着。
ラッキーブレイクは低評価ながら見せ場を作って
4着に入り、阪神ダートで2勝を挙げている3頭はいずれも掲示板に載る安定感を見せたものの、3勝目を挙げるまでには至らなかった。
ここが
阪神ダートの難しいところである。
直線で抜け出した
ワンダースピードは、これで勝負あったと思わせるほどのリードを一度は開いた。しかし、ゴール直前で
マイネルアワグラスの強襲に遭い、僅差の2着。ハンデ差もあったし、抜け出した事で馬が遊んでしまった面もあったようだが、それにしても
阪神ダートの難しさを見せられた思いがした。
昨年のシリウスSには、
阪神ダートで2勝以上を挙げている馬が4頭出走していた。
中央ダート重賞の勝ち馬は
タガノゲルニカと
アロンダイトの2頭が出走していて、他に
地方交流重賞勝ちがあった
マイネルボウノットも出ていた。しかし、勝利を手にしたのは、
阪神ダート1勝で重賞未勝利の
ドラゴンファイヤーだった(
1番人気だったけど)。
阪神ダート2000mでのOP特別は過去に3レース行われいるが、調べてみると、勝っているのはすべて
阪神ダートで1勝以下の馬だった。2勝以上を挙げている馬が何頭も出走していたのに、である。
阪神ダート1800mでのOP特別では、さすがにそれほどのことはなかったが、
00年以降の18レースのうち、2勝以上を挙げていて1番人気で勝ったのはわずか2頭だった。
阪神ダート中距離のOPクラスでは、取っ掛かりが見つけづらいから、
阪神ダートで好成績を挙げている馬を中心視したくなる。それは大きな間違いではないのだろうが、なぜか惜敗してしまうことが多い。
これは、阪神ダートで好走歴の少ない馬が狙い目ということではなく、
実績があっても上位人気に推されて正攻法で押し切れるほど甘いコースではない、ということだろう。今後、このことは認識しておいた方が良さそうだ。
2ヶ月後には、
1800mコースで
ジャパンCダートが施行される。
阪神ダート1800mで
重賞が開催されるのは、
96年アンタレスS(勝ち馬
テセウスフリーゼ)以来。90年以降で施行されたのは、他に
94年平安S(勝ち馬
トーヨーリファール)があるだけだ。
この2レースを制したのは、いずれも
阪神ダートが初めての馬だった。
阪神ダート中距離のOPクラスでは、コース実績のある上位人気馬を信用しても信頼しすぎるな。2ヶ月後の
ジャパンCダートまで、このことは肝に銘じておきましょう。
さて、今回優勝した
マイネルアワグラスについてだが、ご存じのように、同馬は
マイネルチャールズの全兄。全姉には
フラワーCを制した
マイネヌーヴェルがいて、この3姉弟で中央重賞を4勝していることになる。
マイネルアワグラスと
マイネヌーヴェルの間には
ステイゴールド産駒の
マイネルネオスがいて、同馬は
重賞未勝利ながら芝で4勝を挙げている。
ヌーヴェル3勝、
ネオス4勝、
アワグラス4勝、
チャールズ4勝。これだけ勝利を重ねる馬を何頭も輩出しているのだから、母の
マイネプリテンダーは偉大である。
アワグラスと
チャールズは、今秋、
G1に挑戦することになるのだろう。
姉の
ヌーヴェルは
桜花賞10着、
オークス11着、
エリザベス女王杯13着となっていて、
アワグラスも3歳時に挑戦した
ジャパンダートダービーは
フリオーソの4着だった。
チャールズも今春の
皐月賞と
ダービーは
3着&4着に惜敗していて、今秋のこの兄弟の目標は、
「マイネプリテンダーを『G1馬の母』に」といったところだろうか。
マイネルアワグラスが
ジャパンCダートに出走すれば、
数少ない阪神ダート重賞ウイナーとなるだろう。果たして、その実績が通用する材料となるか。
阪神ダートでの勝利は今回が初めてだったので、前記のジンクスに従えば
「1勝ならチャンスあり」と言えそうだが…。