時の流れが恨めしくもあり、感慨深くもあり、そして、うれしくもあり
文/編集部
『ダビスタDS』の種牡馬欄に
トニービンの名前はない。
トニービンを愛する男として、これほど残念なことはなかった。ただ、中央の現役産駒も8歳馬の
ジュラナスリングと
ウォーライクトニーの2頭だけ。時の流れが恨めしくもあり、やむを得ないかと思う部分もあり。
そんなトニービン好きの頼みの綱が
ジャングルポケットだ。
『ダビスタDS』でも頻繁に種付けをしていて、現実世界でも、
サンデーサイレンス系の産駒が隆盛を極める中、
トニービンの後継種牡馬として孤軍奮闘し、その地位を完全に確立している。
重賞勝ち馬(重賞勝利数)は初年度産駒の
フサイチホウオー(3勝)、
タスカータソルテ(3勝)、
トーセンキャプテン(2勝)、2年目の産駒の
トールポピー(2勝)、
ルルパンブルー(1勝)、そして3年目の産駒から、
デイリー杯2歳Sを制した
シェーンヴァルト(1勝)が出た。
まず、
3世代連続で
重賞勝ち馬を輩出していることは立派だろう。しかも、特筆すべきは
3年連続で
2歳重賞を制していること。
トニービンの産駒はどちらかというと、仕上がりはそれほど早いほうではなかっただけに、そこは
ジャングルポケットの長所と言えるかもしれない。
もちろん、今年4歳となった
タスカータソルテが
札幌記念を制し、
トーセンキャプテンが
函館記念を勝っているので、単純に仕上がり早ということではなさそう。
成長力、奥の深さも秘めていると見ていいだろう。
シェーンヴァルトは
親子二代制覇を目指していた
札幌2歳Sを
除外され、
デイリー杯2歳Sに回ってきていた。開催時期は異なるものの、
初勝利(札幌芝1800m)の勝ち時計1分49秒3は、レコード決着だった札幌2歳Sのそれとわずか0秒2差なのだから、出走していれば好勝負ができたと思う。
今回に関しては、
時計のかかる北海道の洋芝から、
高速決着が目立つ京都芝に替わり、果たして時計勝負に対応できるのか。レース前はそんな不安が頭を過ぎったが、そんな心配はどこ吹く風。
1分33秒3のレコードで颯爽と駆け抜けてしまったのだから驚きだ。
ただ、
1分33秒3という走破時計はもちろん、2歳戦としては破格であるが、同日の
2歳未勝利戦(内回り芝1600m)が
1分34秒1で決着していただけに、
速い時計が出やすい馬場だったのは確か。そのことは認識しておかなければいけないだろう。
シェーンヴァルトを高く評価すべき点は、レコードで走ったこと以上に、
そのレースセンスの良さかもしれない。デビューから
函館芝1800m、
札幌芝1800m、
京都芝外1600mで走り、1000m通過は順に
64秒4(スローペース)、
59秒6(平均ペース)、
57秒9(ハイペース)だった。
異なるコース、流れで走って2、1、1着と連対を外していない。しかも上がりは、初戦と2戦目が
メンバー中最速、
デイリー杯2歳Sは
メンバー中3位をマークしていた。
キャリアの浅い2歳馬にとって、この柔軟性と対応力は脱帽モノである。
また、その能力をしっかりと発揮させ、勝利に導いた
北村友一騎手の騎乗も光った。中団で折り合いをつけ、直線では外を回さずにラチ沿いに進路を取ったこと。外を回った
ピースピースや
アラシヲヨブオトコが
4、5着だったことからいえば、外を回っていたら結果は変わっていただろう。
だからこそ、
クビ差の2着となった
ホッコータキオンはまったく悲観することはない。1000mを
57秒9というハイペースで飛ばし、終い3Fを
35秒4でまとめている。1番人気で逃げを打ち、目標にされる立場にありながらの結果。今回は勝った馬を誉めるべきで、
負けて強しだった。
昨年の1、2着馬は
キャプテントゥーレ、
タケミカヅチ。2頭はその後、
皐月賞でも
7、6番人気という低評価を覆し、
ワンツーを果たしていた。
06年2着の
ローレルゲレイロは
NHKマイルCで
2着、
05年3着の
スーパーホーネットは
朝日杯FSで
2着。近3年だけ見ても、その後のG1戦線で好走している馬がこれだけいる。
レース前、
今年の出走馬はやや小粒かなという印象を持っていたが、
さすがは出世レース・デイリー杯2歳Sといったところか。
現金なヤツだなと言われるかもしれませんけど(笑)、
シェーンヴァルト、
ホッコータキオンに対する評価を改めないといけないでしょう。
時の流れが恨めしくもあり、感慨深くもあり、そして、うれしくもあり。
トニービンの孫から、
2歳芝1600重賞をレコードで駆ける馬が出るなんて。
シェーンヴァルトには今後も、
サンデーサイレンス系の包囲網を切り裂く快走を見せてほしいものだ。