オウケンブルースリとはその末脚のように、長~い付き合いになりそう
文/編集部

皐月賞馬
キャプテントゥーレ、ダービー馬
ディープスカイが不在、ダービー3着の
ブラックシェルは神戸新聞杯後に屈腱炎を発症して戦線離脱。単勝オッズではシンガリ18番人気の
ホワイトピルグリムでも
43.5倍という、
近年では類を見ないほどの混戦模様となった。
結果は、1着
オウケンブルースリ(
1番人気、3.7倍)、2着
フローテーション(
15番人気、37.7倍)、3着
ナムラクレセント(
9番人気、23.4倍)。馬連
1万7820円、馬単
2万6980円、3連複
9万2720円、3連単
52万3990円。普通に考えれば、
十分すぎるほど大波乱と言えるレベルだろう。
ところが、慣れというのは怖いもので、先週の
秋華賞で3連単
1098万馬券が飛び出したせいか、荒れたという実感があまり湧いてこない。また、馬券を外した人間の負け惜しみでもなく、波乱必至という意識が強すぎたせいだろう、今回の結果もなんとなく、
想定の範囲内という気がしてくるから恐ろしい。
普通の
菊花賞なら、
皐月賞11着、
ダービー8着、
神戸新聞杯12着の
フローテーションが突っ込んで来ただけで大騒ぎ。
「スペシャルウィーク×リアルシャダイという血統はやっぱりステイヤーだったんだ」なんて、いかにもレースの後に聞こえてきそうなもの。
それが驚かない。
ナムラクレセントが3着に来ても、
マイネルチャールズが
皐月賞3着、
ダービー4着、
菊花賞5着と着順を落としても、
ベンチャーナインが
6着止まりでも、最低人気の
ホワイトピルグリムが
直線で見せ場を作って7着になっても、
スマイルジャックが
16着に失速しても、やっぱり驚かない。
1番人気なのだから、もっとも多くの人が
「勝つ」と思ったのだろうけど、むしろ、いちばん驚いたのは
オウケンブルースリが勝ったことかもしれない。前日の
『メインレースの考え方』でも触れたとおり、
トニービン系は京都芝G1で[1.4.10.66]、
菊花賞に限れば[0.0.3.14]だった。
ダービー馬の
ウイニングチケットも、
ジャングルポケットも跳ね返された
淀の3000mである。それが、
皐月賞の翌週にデビューした
オウケンブルースリが、
重賞未勝利の
オウケンブルースリが、軽やかに先頭でゴールを駆け抜けてしまったのだから、血統好きとしては困惑しきり。
ちなみに、過去10年で見ても、
マンハッタンカフェ(01年、6番人気)、
ヒシミラクル(02年、10番人気)、
デルタブルース(04年、8番人気)、
ソングオブウインド(06年、8番人気)が
菊花賞で
重賞初制覇を飾っている。驚くならば、
重賞未勝利の身で1番人気に応えて勝ったことか。
いずれにせよ、
トニービン産駒が苦手とすることが多かった
坂の下りで一気にスパートし、ゴールまで脚色が衰えることなく突き抜けた。先行していた
ミッキーチアフル、
スマイルジャック、
アグネススターチ、
ノットアローンが
15着、
16着、
17着、
18着と大きく失速した流れだけに、
後方に控えていたグループに展開が向いたという見方もあるかもしれない。
それでも、前半、中盤、後半の1000mタイムがそれぞれ
58秒8、
66秒7、
60秒2という乱ペースに惑わされることなく、自分から勝ちにいく競馬をして、終いの末脚を爆発させた。
1番人気らしい堂々としたレースぶりだったと思うし、
完勝と言っていいだろう。
本家
ブルース・リーは、ある映画において、
パンチのスピードが速すぎて肉眼でとらえることができず、再生速度をいくらか遅くして映画化された、という小ネタをテレビで観たことがある。
オウケンブルースリの末脚は、肉眼でもはっきりと確認できましたが(笑)、
本家のような一瞬のキレより、トニービンの系統らしく長~くいい脚を使えるのが長所でしょうね。
4月26日のデビューから、
184日目で
G1制覇を成し遂げた
オウケンブルースリ。デビューして日が浅いことを考えると、今後、どのように成長していくのか、楽しみは膨らむばかり。実際、前述した4頭のうち、故障で引退を余儀なくされた
ソングオブウインド以外の3頭は、古馬になって
G1を勝っているわけだし。その末脚のように、今後も馬券を買う上で、長~い付き合いになりそうだ。