マイネルレーニア&佐藤哲三騎手も「ボール3分の1」の出し入れを!?
文/編集部

出走馬17頭中、
芝1400重賞で勝利経験があったのは
マイネルレーニア(06年京王杯2歳S)、
ローレルゲレイロ(08年阪急杯)、
ジョリーダンス(07年阪神牝馬S)、
スズカフェニックス(07年阪神C)、
タマモホットプレイ(04年スワンS)の5頭だった。
結果はご存知のとおり。
タマモホットプレイ(12番人気)は
12着となったが、1着
マイネルレーニア(5番人気)、2着
ローレルゲレイロ(3番人気)、3着
ジョリーダンス(8番人気)、4着
スズカフェニックス(1番人気)で決まった。レース前にそのことに気づき、5頭の3連単ボックスを買っていれば、実に簡単な結果でした(笑)。
ファリダットは母が
芝1200mのG1で2勝を挙げた
ビリーヴ、
芝1400mで2戦2勝だった。
血統、
未知なるスプリント資質を買われてだろう、
2番人気に推されたが、直線で差し届かず
8着。それでも、差しが届きにくい展開の中、勝った
マイネルレーニアから
0秒5差で走っているんだから悲観することはない。まだ3歳馬、これからだろう。
2着
ローレルゲレイロも
7ヵ月の骨折休養明けながら、一旦は先頭に立つシーンも作った。3着
ジョリーダンスも定石ではない先行策で上位2頭に迫った。
スズカフェニックスも
1番人気に応えられなかったとはいえ、
58kgを背負い、出遅れを挽回し、道中でポジションを上げ、外を回る展開で小差の4着なら、よく走ったと思う。
ただ、今回に限っては、まんまと逃げ切りを決めた
マイネルレーニアのペース配分が秀逸すぎた。
ローレルゲレイロが控えたことで、すんなりハナを奪えた展開利があったにせよ、自分が失速しない、かつ、後続に斬れる脚を使わせない、ギリギリのラインで引っ張った。
それを先導したのは言うまでもなく、鞍上の
佐藤哲三騎手だが、同騎手とのコンビではこれで
3戦3勝。
佐藤哲三騎手はレース後のコメントで、
マイネルレーニアの直線での粘り腰に
「感動しました」と話していたが、前半3Fを
34秒3で入り、後半3Fを
34秒5でまとめている。
直線が
平坦、
急坂の違いはあるだろうが、4走前に4馬身差の圧勝を飾った
ストークS(阪神芝1400m、佐藤哲三騎手騎乗)でも、前半3F
34秒1、後半3F
35秒1だから、その上がりの差が、
“終いの粘り”に感じたのかもしれない。
マイネルレーニアは芝において、前半3Fを
33秒台で入ったことが2回ある。それは、初勝利を挙げた
2歳未勝利戦(新潟芝1400m、①着、33秒7)、2走前の
NSTオープン(新潟芝1400m、⑤着、33秒8)。
未勝利戦は他馬との力差があってだろう、後半3Fが
36秒3でも勝つことができたが、
NSTオープンは
36秒3で後続に差されてしまった。
前半3Fで
34秒を切るか切らないか。位置取りや馬場もまったく無関係ではないだろうが、数字と結果から推察すれば、
マイネルレーニアの明暗を分けるボーダーラインはそこに存在するような気がした。そして、
佐藤哲三騎手はそのコンマ数秒の差を、感覚だけで見切っている可能性もあるから恐ろしい。
巨人VS西武の日本シリーズを観ていて思い出したことがある。
西鉄ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)に所属していた
故・稲尾和久氏は、日本シリーズで4連投で4連勝するなど、
“鉄腕”と謳われた。
「神様、仏様、稲尾様」というフレーズも有名だろう。
その稲尾氏とバッテリーを組んでいた
和田博実氏が、
「稲尾はボール3分の1を自在に出し入れした」と語っていたのを目にしたことがある。ストライクかボールかで、
「ボール1個分の差」という表現は野球中継などでたまに耳にするが、
「3分の1」という表現は聞いたことがない。
今回の
スワンSもそうだったが、
芝1400重賞は
接戦が多いイメージがある(特に
古馬のレース)。餅は餅屋ではないが、そこには
芝1400巧者たちによる、「ボール3分の1」分くらい微妙なやり取りが密接に絡み合っていると考えると、
芝1400重賞ですでに勝利経験があった馬が、上位を占めた結果にも納得できる。
芝1400mで[5.0.2.2]となった
マイネルレーニア。5勝という勝ち星は、現役馬の中では、
芝1400mで[5.2.2.8]の
ロイヤルキャンサーと並んで
1位タイとなった。状態の良さもあるだろうが、
豊富な芝1400mのキャリアに裏付けられた勝利。
職人芸を見た気がした。