ハンデ重賞だけに、明暗を分けた大きな要因はハンデだった
文/編集部
グレード制導入後はこのレースを勝った後にG1を制した馬がおらず、
「G1に結びつかないG2」だったが、昨年の勝ち馬
アドマイヤジュピタはここから飛躍して今年の春に
天皇賞を制覇。今年も
天皇賞を自重した実績馬
アルナスラインが出走してきて、G1の谷間ながら(
オグリキャップや
ジョッキーマスターズの助けも借りつつ……)注目度の高い週末となった。
レースは
セタガヤフラッグと
テイエムプリキュアが3番手以下を離して逃げ、3番人気
スクリーンヒーロー、1番人気
アルナスラインは5、6番手で前を見ながら進む。2番人気
ジャガーメイルはそこからやや離れた9番手から。
2頭の逃げで
12秒台前半のラップが続き、息の入らないペースに。直線の入口でも2頭が6馬身ほど離していたが、まずは
テイエムプリキュアが
セタガヤフラッグを競り潰して粘り込みを図る。
同じような位置にいた
アルナスラインがもたつくのを尻目に
スクリーンヒーローがグイッと伸び、残り100mで
テイエムを交わしてそのままゴール。
2着は外から迫った
ジャガーメイルで、ひと伸びを欠いた
アルナスラインは
3着を確保するのが精一杯だった。
このレースは
ハンデ重賞ということで、やはり予想の重要なファクターになるのは
ハンデ。
アルナスラインはトップハンデの
58キロ、勝った
スクリーンヒーローは
53キロだった(
セントライト記念3着以来骨折で休養、休み明けの支笏湖特別(1000万下)1着、札幌日経オープン2着からここに臨んだ馬としては、このハンデは恵まれた気もするが……これはここでは置いておこう)。
以前ある騎手から
「ハンデが重いとトップスピードが鈍ると思いがちだが、トップスピード自体はさほど変わらない。むしろトップスピードに乗るまでに時間がかかる」という話を聞いたことがある。余談だが本当にそうなのか実際の感覚を掴もうと思い、自分で荷物を背負って走ってみたが、100mで1秒以上遅くなり……
「人間と馬は違う」という結果が出ただけだった(笑)。
それはともかく、勝負所でスッと動いて前を捉えた
スクリーンヒーローと、4コーナーでもたついた
アルナスラインは、まさにこの話を証明しているだろう。
アルナスラインは今年の春に
同じコースと斤量の
目黒記念でも、前を行く
ホクトスルタンを捉え切れず
2着に敗れていた。父
アドマイヤベガと同じように、どちらかというと
一瞬の脚で勝負するタイプの
アルナスラインにとって、
トップスピードに届くまでの時間が長くなるのは致命的だ。
しかも、
アルナスライン鞍上の
内田博幸騎手はテン乗り。
「この馬はこれくらいの脚が使える」と知っているのといないのとでは、前述した
「斤量に対する対応」も違ってくるだろう。斤量が影響する場合とそうでない場合は、馬そのもののタイプの違いとは別に、そんなところでも変わってくるのかもしれない。
勝った
スクリーンヒーローは重賞初勝利。今年引退した
矢野進師から転厩し、開業2年目の
鹿戸雄師にとっても重賞初勝利となり、騎乗した
蛯名騎手は
01年(トウカイオーザ)以来となるこのレース2勝目となった。
父
グラスワンダーは前週の
マイネルレーニアに続いての重賞連勝。祖母は名牝
ダイナアクトレスで、おじに
ステージチャンプ、おばに
プライムステージ、いとこには
マルカラスカルがいて、
プライムステージの仔
アブソリュートもこの秋、活躍が期待される上がり馬だ。いまはプチ・ブレイクだが、今後、この牝系が
スカーレット一族のような大ブレイクを果たす……か?
最後に、かつての2歳女王
テイエムプリキュアの頑張りも誉めてあげたい。そういえば、今年の
日経新春杯で
12番人気3着に粘った時も
4角先頭の競馬だった。それ以来となる
4角先頭の競馬で大健闘の
4着。
鞍上の
石神騎手も、これまで
04年2着(同騎手にとって平地重賞で唯一の連対)、
06年3着と相性の良いレースで、あわやのレースを見せてくれた。個人的な欲を言えば、あと数秒粘ってくれたら最高だったのですが(苦笑)。