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ウエスタンダンサーとあの2頭は、想像以上のスピードでのし上がる様がよく似ている
文/編集部

レース前に歴代優勝馬の顔ぶれを眺めていたら、京阪杯は影が薄くなっていやしないか? との思いを感じずにはいられなかった。

春に2000m以上の距離で行われていた頃は、94年にネーハイシーザーが勝ち、同馬は同年の天皇賞・秋を制覇。翌95年にはダンツシアトル京阪杯宝塚記念を連勝している。その翌年(96年)に優勝したダンスパートナーも、秋にエリザベス女王杯を制したので、この頃は3年連続で優勝馬がその後にG1を制したことになる。

その後、開催時期が秋に移行され、1800m重賞として9回行われたが、その間の優勝馬も、9頭中7頭が次走以降に再び重賞を制している。菊花賞では距離が長くて敗れた3歳馬が、このレースをステップに芝中距離路線を歩むきっかけにもなっていた。

ところが、06年から1200m戦に変わり、いまひとつ重賞としての立ち位置が分からなくなってしまった。

芝1200mのG1は、スプリンターズがすでに10月に終わっており、京阪杯の後、年内は古馬の芝1200m重賞が存在しない(というか2月シルクロードSまでない)。

ハンデ戦というわけでもないので馬券的な妙味もあまり感じられず、幸か不幸か、芝1200mになってからは馬券圏内をすべて1~4番人気が占めている。念のために追記しておくと、国際レースだけど、海外馬の出走はまだ1頭もない。

芝1200m戦になって最初の勝者であるアンバージャックは、4連勝での重賞制覇だった。昨年のサンアディユは、牝馬ながら57kgの斤量を背負っての完勝。どちらもインパクトのある勝利だったのだが、残念なことに両馬はその後に重賞を勝っていない。

いろいろと複合的な要素が組み合わされて、京阪杯は影が薄くなりつつあるのかもしれませんね。

さて、今年優勝したウエスタンダンサーは、今後、京阪杯の地位を上げる活躍を見せるだろうか。

ウエスタンダンサーは、今秋まで芝で連対したことがない馬だった。それが、9月の仲秋特別(1000万、阪神芝1200m)を快勝し、その時は稍重馬場で時計が掛かった(1分10秒5)から好走できたのだろうと思っていたら、次走の桂川S(1600万、京都芝1200m)で持ち時計を1秒も更新して1分8秒5で完勝。

次走の京洛S(OP特別、京都芝1200m)ではスプリングソングを捕まえ切れなかったが、今回、同馬とは斤量差が1kgに縮まりながら、先に抜け出して雪辱を果たした。近2走では馬体重も500kgを超え、まさに充実一途である。

この勢いの良さは、一昨年に優勝したアンバージャックと似ていると感じる人も多いと思うが、血統構成を見ると、むしろ昨年優勝のサンアディユに近い。

サンアディユフレンチデピュティ×カーリアンという配合で、ウエスタンダンサーデヒア×オペラハウス。父は同じデピュティミニスター系で、母父も欧州系スタミナ型ノーザンダンサーという面では同じと言える。似た配合ではスリープレスナイト(父クロフネ・デピュティミニスター系×母父ヌレイエフ)もいる。

スリープレスナイトが台頭してきた当初は、血統構成がサンアディユに似ていると言われていたが、今度はさらにその2頭に似た配合馬が頭角を現してきたというわけだ。

この3頭は、こちらの想像以上のスピードで次々と課題を克服し、のし上がっていく様がよく似ている。上級のノーザンダンサー・クロス馬によく見られる“得体の知れない奥深さ”を持っていると言えそうだ。

別の見方をすれば、またも4歳牝馬世代から重賞ウイナーが現れたとも言えるだろう。

ウオッカ&ダイワスカーレットの2頭を筆頭に、スリープレスナイトエイジアンウインズアストンマーチャンらがこの世代の牝馬で、特に短距離路線での強さが際立っている。

血統構成、そして世代の強さを加味すれば、ウエスタンダンサーへの今後の期待値は高くなっていって当然なのかもしれない。

ただ、もちろん未来がすべて明るいわけでもないだろう。今回のレース前までは、勢いの面ではビービーガルダンの方が上位と思われていた。

ビービーガルダンは今年3月から連続好走を繰り返し、2走前には重賞で初連対、前走ではG1で3着に好走するまでになった。しかし、今回は直線での反応が悪く6着に敗れた。

スプリント路線は世代交代が早く、勢いのある馬が次々に現れる。一度勢いを失うと、巻き返すのが容易ではない路線とも言えるだろう。

おそらく今回の勝利で一息入れられるであろうウエスタンダンサーが、次走で復帰してきた時にどんなレースを見せるか。その時がまさに試金石と言える気がするが、どうだろうか。

一方、馬券を購入する側は、来年以降の京阪杯とは、どのように付き合っていけばいいのだろうか。勢いを過信せず、かといって勢いを侮らず。スプリントG1が終わった後なので、各馬の勢いがどれほど残っているのか、そのさじ加減を見分けることが重要になってきそうだ。

その上で、無理な穴狙いを避けるようにすれば、的中に一歩近づけるかもしれませんね。

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