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“祖母の雪辱”は日本馬のレベル向上を示す格好のエピソード
文/後藤正俊(ターフライター)

ジャパンCはもっとも好きなレースだった。世界からまだ見たことがない名馬が来日して、日本代表馬と対戦する。レースデータはJRAから発表されていても、競馬場によって時計はまちまちだし、どんなレベルの競馬なのかもよく分からない。

力の落ちる馬同士のよく分からないレースは見る気も馬券を買う気もしないが、強い馬のよく分からないレースは馬券も観戦もおもしろい。まったく勝負にならなかった馬でも、第1回の“インドのシンザン”オウンオピニオンはニックネームと正反対の小さな馬体で驚いたし、第2回は米国競馬史上有数の名馬ジョンヘンリーの、日本では見たことがない筋肉隆々な馬体を見ただけでもワクワクとしたものだ。

ところが、最近のジャパンCにはそのワクワク感がない。海外の競馬情報が詳細に伝えられて“よく分からない馬”ではなくなっていることもあるだろうが、海外の王者が来日しなくなったからだ。

今年のジャパンCの外国馬はマーシュサイドが取り消したためわずか3頭だけ。ペイパルブルキングジョージⅥ&クイーンエリザベスS2着の成績があり、レイティングでは高い数値を持っているものの、昨年は7着に敗れていて未知の魅力はないし、前走の凱旋門賞ではメイショウサムソンにも先着を許している。

他の2頭はG2~G3レベル。「生で観たい!」という馬ではまるでない。案の定、結果もパープルムーン9着シックスティーズアイコン13着ペイパルブル14着と沸かせるシーンすら作れなかった。

これまでのジャパンCでもっとも衝撃だったのは第1回(81年)メアジードーツという大した成績がない米国の5歳牝馬が、モンテプリンスホウヨウボーイら最強布陣を敷いた日本勢を子供扱いしてしまった。日本と世界とではこれほど大きな差があったのか、とがく然としたものだ。

その後にカツラギエースシンボリルドルフらが雪辱して、日本馬でもチャンスがあることは示されたが、続く衝撃が第7回(87年)1~9着のうち8頭までを外国馬が占めてしまったのだ。

確かに日本の布陣はサニースワローレジェンドテイオーなどややひ弱だったが、それでもホームでのレースでこれだけ外国馬に席捲されるのは屈辱。その中で唯一気を吐いたのが、3着に食い込んだ4歳牝馬ダイナアクトレスだった。

それから21年が経過した今年のジャパンCを制したのは、そのダイナアクトレスの孫スクリーンヒーローだった。“祖母の雪辱”はこの20年間で日本馬のレベルが急激に高まっていることを示す格好のエピソードになるだろう。

自分では“ケントク買い”はしたことがないが、先日、長門裕之・南田洋子さんご夫婦の闘病ドキュメント番組を観て感動し、ダイナアクトレスは南田洋子さんが1口を所有していたことで“アクトレス”と命名されたことを思い出していた。

引き揚げてきたデムーロ騎手を満面の笑顔で出迎えたのはオーナーブリーダーの社台ファーム・吉田照哉氏。3週間前の天皇賞・秋でも同様にダイワスカーレット安藤勝己騎手を出迎えながら、写真判定で屈していただけに、なおさらの喜びだっただろう。このシーンもドラマチックだった。

もちろん前走のアルゼンチン共和国杯での初重賞制覇に続いてのジャパンC優勝は、ニューヒーローの誕生として実に華々しい舞台だった。

だがやはり、この外国馬のメンバーだったからこそ、レースそのものに物足りなさが感じられてしまった。超一流外国馬がいなければ、ジャパンC単なる秋のG1のひとつに過ぎず、天皇賞・秋で激走したウオッカディープスカイにはその疲れが残っていたと見られかねない。

コースこそ違うが同じような距離で1か月後には有馬記念も行われる。ジャパンCの存在価値が見えなくなってきているから、素直にスクリーンヒーローの快挙や、ウオッカディープスカイの健闘を称える気持ちになれないのかもしれない。

この程度の外国馬しか出走してこないジャパンC、これから先も必要ですか?

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