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長くて偽ゴールが何度もやってくる。人生はステイヤーズS
文/編集部

先日、酒席で知人が唸っていた。「年収(推定)が20億円以上あっても脚が上がっちゃうんだから、いったい人間はいくらあれば逃げ切れるんだろうねえ」

世界のTKに関して話していたんですが、まあ、確かにその通り。何事も道中でのペースが大事ということだろう。

中央での平地最長距離レースであるステイヤーズS。その3分40秒あまりのレースを見ていて、「人生はステイヤーズS」なる言葉が思い浮かんだ。どちらも非常に長丁場の闘いだ。

芝3600mステイヤーズSは、芝1800mコースを2周するような形態で行われ、ゴール板前を、都合、3回通過する。

さすがに、スタート直後に通過する時に、いきなりゴールだと思う馬はいないのだろうが、1周走ってきた後は、3~4コーナーも回ってきてゴールだと勘違いする馬がいるんじゃないかと思った。

序盤は4番手に控えていたフローテーションが、最初の3コーナーの手前で先頭に躍り出た時は、スプリングS(中山芝1800m)で2着に負けたことを覚えていて、馬が自分から勝ちに行く気になったんじゃないかと思ったほど。まあ、そんなことはなかったようで、その後も淡々と走っていましたが(当たり前か)。

それでも、その間も内ラチ沿いで懸命に折り合いを付けていたのが、優勝したエアジパングだった。結果的には、道中でのこの位置取りの差が、追う者追われる者の立場となり、最後のクビ差につながったように見えた。

エアジパングの鞍上の横山典騎手は、レース後のインタビューで「馬も人も道中で我慢した分、最後に弾けた」と話していた。いくつもの苦難を堪え忍び、乗り越えたからこそ花開いた。エアジパングの競走人生自体も、まさにそんな感じだ。

エアジパングは今回がキャリア16戦目だが、前走との間隔が2ヶ月以内だったケースは7回しかない。つまり、キャリアの半分以上が休み明けというわけ。

デビュー戦を走った後、3歳春にセン馬となり、その後の着数だけを見れば堅実に勝ち星を重ねてきたように見えるが、休み休み使われている戦績が順調とは言い切れなかったことを物語っている。

去勢され、年齢とともに落ち着きが出て、いろいろなことに我慢が利くようになった。それが今回の初重賞制覇に結びついたに違いない。

一方、2着に敗れたフローテーションは、前走の菊花賞こそ展開に恵まれて追い込んだように見えたが、今回は自らペースを作り出して、勝ちに等しい内容だった。1番人気に推され、追われる立場であったことを加味しても、芝の長距離重賞では地力上位なのは間違いないだろう。

それにしても、現3歳世代の牡馬は、またしても古馬混合の芝重賞で勝てなかった。今回のレースを終えて、その成績は[0.4.4.36]となっている。

12月に入っても、3歳世代の牡馬が古馬混合の芝重賞で勝ち鞍を挙げられていないのは、05年以来となる。

05年の3歳世代の牡馬は、年末まで走って古馬混合の芝重賞での成績が[1.4.2.29]だった。唯一の勝利がCBC賞(シンボリグラン)で、有馬記念では1番人気2着に負けているのだが、この世代の代表馬って何だか、分かりますか?

そう、ディープインパクトです。図らずも、同じ『ディープ世代』が、古馬混合の芝重賞で苦戦を強いられているというわけだ。

02年生まれの元祖ディープ世代は、ディープインパクト4歳時芝G1を勝ちまくったため、他に4歳芝G1を勝った牡馬は出なかった。

しかし、昨年の高松宮記念スズカフェニックス5歳で勝つと、今年の宝塚記念では、エイシンデピュティ6歳で優勝した。ベテランの域に入ってからG1タイトルを手にした馬が現れているのである。

現3歳二代目ディープ世代は、このままだと「現3歳の牡馬は芝路線では強くない」と言われかねないが、もしかしたら、元祖ディープ世代のように、4歳時にG1を勝ちまくる馬が現れ、5~6歳になっても他世代を蹴散らす馬が出てくるかもしれない。それこそ、彼らが現在歩んでいるポジションは、ステイヤーズSでの1周目のゴール前くらいなのかもしれない。

寺山修司はかつて、「競馬で勝ってますか?」と聞かれた時、こう聞き返したという。「あなたは、人生、勝っていますか?」と。

ステイヤーズS人生も長い。今は勝っていても、それは1周目なのかもしれないし、先頭でゴールしたと思っても、それは2周目の始まりに過ぎないのかもしれない。エアジパングのように堪え忍ぶことを重ねていれば、いつか花開く時がやってくるかもしれない。

現在、あなたは何番手で周回中ですか?

私は、競馬人生も、2周目の向こう正面後方3番手を追走しているところですが、スタミナの続く限り、周回し続けてやろうと思ってます(笑)。

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