“電撃の6ハロン”で結実したのは磨き続けてきた男の武器
文/編集部
今年から新設されたダート重賞・
カペラS。実際のところは、
年始に行われていたガーネットSが名前を変えて12月に移動した感じだが、
ダート短距離の重賞戦線において、比較的フレッシュな顔ぶれが揃ったという印象を受けた。
1番人気はダート重賞初挑戦の4歳馬
ダイワエンパイア、2番人気は前走の武蔵野S(4着)が重賞初挑戦だった
カルナバリート、3番人気は3歳馬
ナンヨーヒルトップで、同馬も重賞挑戦はユニコーンS(7着)に続いて2回目だった。
OPクラスのダートは特に、上位勢力が停滞しがち。交流重賞などを見ていても、毎年、同じ馬が同じレースに出走し、好走するケースも珍しくない。それは前身の
ガーネットSもそうだった。
ビーマイナカヤマが
2勝2着1回だったり、
ニホンピロサートが
1勝2着1回だったり。
カペラSにも出走していた
リミットレスビッドも
ガーネットSで
1勝2着1回、
スリーアベニューも
1勝2着1回。とりわけリピーターの多い重賞だった(
中央のダ1200重賞は
ガーネットSしかなかったのだから、仕方がない面もあるけど)。
それが
カペラSになって変わったかといえば、
NOだった。
スリーアベニューが
2着に追い込み、もうすぐ10歳となる
リミットレスビッドも
小差の4着だった。リピートぶりに変化はなさそうだが、勝ったのはこれが重賞初制覇だった
ビクトリーテツニー。フレッシュな重賞に相応しい勝ち馬だと思った。
しかも
ビクトリーテツニーは、98年に
スーパーナカヤマが記録した
1分9秒1というレコードを0秒4更新し、
1分8秒7という芝並みの時計で駆け抜けた。新設重賞にとっては、非常にセンセーショナルだったのではないだろうか。
レースも見ていて鮮烈だった。
先行グループと
差しグループが直線半ばでガラッと入れ替わる。中山ダ1200mでハイペースになった時に見られる展開だが、
ダイワエンパイア(
12着)、
カルナバリート(
13着)といった人気の先行馬も、その洗礼を浴びる結果となってしまった。
トロピカルライトと
ウエスタンビーナスが雁行した状態で引っ張り、
ダイワエンパイア、
アグネスジェダイ、
コパノフウジンなどがその2頭に続く。レースの前半3Fは
32秒7。今年、
スリープレスナイトが制した
スプリンターズSのそれが
33秒6だったから、いかに猛烈なペースだったかが分かる。
それはまるで、G1当日の競馬場でよく見られる光景、
開門ダッシュのような状況だった(笑)。前でガンガン飛ばした馬たちはもちろん、それを追いかけていった
カルナバリートも直線で脚色が鈍ってしまったのは、前半3Fの数字を見る限りはやむを得ない。
では、
ビクトリーテツニーは展開がハマったのか? そう聞かれれば、確かに否定はできないが、実力が伴っていなければ、豪快に突き抜けることはできないはず。ましてや、
1分8秒7という驚異的なレコードに加え、2着以下に1馬身3/4馬身差をつけて駆け抜けるなんて。
今回が
ダート20戦目だった
ビクトリーテツニー。デビューからいろいろなコースで走っているが、それは
中央に限らない。
地方では
川崎ダ1600m(全日本2歳優駿)、
海外では
ドバイのダ1800m(UAEダービーなど)で走った経験もある。
だが、レースぶりはいつも
終い勝負。コースや展開は関係なし。末脚不発が続いたって、男の武器を磨き続けてきた。今回の勝利はその結実ではないか。
石の上にも三年である(厳密にいえば、
ビクトリーテツニーはデビューしてから
2年半ほどしか経っていないけど)。
スプリンターズSはよく、
“電撃の6ハロン”というキャッチフレーズが用いられる。だが、今年に限れば、
カペラSのほうがよっぽど
“電撃の6ハロン”だった。猛烈な先行争い、強烈な末脚を披露した
ビクトリーテツニー。シビれました。