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今年の愛知杯こそが本来あるべき姿ということか
文/編集部

愛知杯牝馬限定のハンデ重賞となって今年で5年目。6月に行われていた04年05年はいずれも条件馬が勝利し、1~3番人気の馬が馬券圏外05年などはふた桁人気の馬が馬券圏内を独占し、3連単は221万馬券が飛び出す大波乱となっていた。

ところが、暮れの中京に引っ越ししてから、過去2年は前走にエリザベス女王杯で掲示板に載っていたアドマイヤキッス(06年)、ディアデラノビア(07年)が勝利を収め、3連単も06年が3680円、07年が9270円。牝馬限定のハンデ重賞としては、かなり堅い決着だった。

G1で戦ってきた実績馬が、時期的に出走しやすい状況になったことがその要因だろう。今年は1番人気昨年の2着馬であるニシノマナムスメだったが、今年もエリザベス女王杯4、5着だったマイネレーツェルレインダンスが出走して3、2番人気に推されていたのだから、上位人気の様相は過去に2年に似ていた。

ただ、G1で連対実績があるのはテイエムプリキュアレインダンスだけ。2頭はそのG1での連対を境にして、連対から遠ざかっている。ニシノマナムスメも今年の連対はマイラーズC2着だけ。マイネレーツェルG1で馬券に絡んだことがなく、実績面ではG1で3着以内があったアドマイヤキッスディアデラノビアよりは見劣る。

出走馬全体を見渡しても、半数は条件馬、18人中12人はデビューして5年以内のジョッキー。レースの発走が近づくにつれて、「果たして、このレースは平穏に収まるのか!?」と懐疑的な思考が脳内を覆い始めていた。どんな結末になろうとも驚かない心の準備だけはして、レースを観ることに。

結果は、1番人気ニシノマナムスメ、2番人気レインダンスは内から伸び切れず8着7着。勝ったのは16番人気セラフィックロンプ、2着は14番人気チェレブリタ前走の三春駒特別(福島芝1800m、1000万)で3、1着だった2頭のワンツーである。

3着には外から急追してきた3番人気マイネレーツェルが入り、実績馬がなんとか意地を見せたが、波乱決着にわずかに歯止めをかけたに過ぎない。3連単は144万馬券となった。今年行われた牝馬限定のハンデ重賞は、中山牝馬Sが3連単26万円マーメイドSが3連単193万円。どちらもふた桁人気馬が連対し、1、2番人気馬券圏外に敗れていた。

ひと筋縄では行きっこない。過去2年の愛知杯が仮初めの結果とは断言できないし、適切な表現ではないかもしれないが、今年の愛知杯こそが牝馬限定のハンデ重賞の本来あるべき姿ということか。人間も馬も、女性というのはセオリーではなかなか量り切れない部分があるんでしょうね(笑)。

それにしても、勝ったセラフィックロンプといい、クビ差の2着となったチェレブリタといい、レースぶりは実に堂々としたものだった。セラフィックロンプは勝負所で抜群の手応えだったし、前、前の競馬で力強く押し切った。チェレブリタは最後方追走から直線でインを強襲し、セラフィックロンプクビ差まで肉薄した。

2頭の成績を見なければ、とても条件馬が走っているとは思えないだろう。また、セラフィックロンプを勝利に導いた宮崎騎手の落ち着き払ったレースぶりも、これが重賞初挑戦となる2年目の若手騎手とは思えず。勝負所で他の騎手の手が動いてもジッと我慢していた。

チェレブリタに騎乗していた4年目の大野騎手もしかり。前週の中日新聞杯でも9番人気イケトップガン3着に持ってきていたが、人気薄の軽ハンデ馬に乗っているという気楽な立場とはいえ、気持ちが早りそうな勝負所でも追い出しを我慢していた。そして、狙い澄ましていたような大胆なイン突き。

どんな結末になろうとも驚かないように心の準備をしたが、レースが終わった直後はやっぱり驚いてしまった(笑)。セラフィックロンプチェレブリタがワンツーしたこと、そしてそれと同じくらい、その2頭に騎乗していた若手騎手のレースぶりが実に堂々としていたことに。若手騎手が日の目を見る重賞もまた悪くないか。

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