マルカフェニックスにとっては「恵みの雨」だったのだろう
文/編集部
なんだかカペラSと似ているな、というのが、今年の
阪神Cに対する第一感だった。
2歳G1の裏で行われる古馬重賞ということばかりでなく、
重賞勝ち実績のある馬よりも、伸び盛りの若い馬の方が人気を集めている点が似通っていると感じたのだ。
ということで、予想の途中に、
カペラSの結果を思い返してみた。上位人気に推された上がり馬たちは、お互いにハイペースを作り出して直線で潰れ、頑張ったのは
キャリア豊富な馬たちだったっけ。
果たして、
阪神Cでは、
3歳で
重賞未勝利の
ファリダットと
スプリングソングがどんなレースを見せるのか。
カペラSの結果を参考にすれば、
馬券は、重賞でのキャリアが豊富な馬たちから入るべきじゃないか、と考えた。
結果的にその考え自体はそんなにズレていなかったと思うのだが、
サイレントプライドが粘り切れず、
エイシンドーバーが見せ場もなく終わるとは思いもよらなかった。
「甘い物はそんなに好きじゃない」って言うから、
『暴君ハバネロ・悪魔のハロウィン』をあげたら、
「辛い物は苦手」と言われた時ぐらいショックを受けました(笑)。競馬も人生も、
『表の反対は裏』ってほど単純ではない。
ただ、
カペラSも
阪神Cも、優勝したのが
キャリアが多い4歳馬だったことには、何かの因縁を感じた。
カペラSを優勝した
ビクトリーテツニーは、3歳時に
ドバイ遠征を敢行し、中央重賞は初挑戦だったものの、すでにキャリアは
20戦を誇っていた。
一方の
マルカフェニックスも、今回が
キャリア20戦目。4連勝をしてOP入りした後は頭打ちのような成績に陥っていたが、今夏以降は
準OPにも出走できたものの、近走はそちらには見向きもせず、
重賞や
OP特別に挑戦し続けていた。
カペラSは
重馬場で行われ、前述したように
ハイペースとなって底力を問われる流れとなった。一方の
阪神Cも、断続的に
小雨が混じる天候を受け、
微妙に重い馬場となっていた。
どちらも、
決して走りやすいとは言い切れない馬場状態になったからこそ、
豊富なキャリアが最後の力になったのではないだろうか。
阪神芝1400mでの牡牝混合重賞は、00年以降だと
6レース行われている(今回が
7度目)。そのうち、
良馬場での
5レースでは、勝ち時計が
1分20秒5~1分20秒7となっている。これほど一定しているのも珍しいが、今年の決着時計は
1分21秒6だった。
決してペースが遅かったわけではない。逃げた
レッツゴーキリシマは
34秒2-45秒8というペースで前半を入り、これは昨年(
34秒4-46秒0)とほとんど変わらず。しかし、今年は、上がり3Fが
35秒8と掛かっている(昨年は
34秒6)。
今開催の阪神芝はなんだか重い印象があるが、それに小雨も混じったことで、より力を要したのだろう。見ていても、最後は
根性比べのようなレースだった。
そんな馬場で、決して緩くない流れの中、
ファリダットは外を回りながらへこたれずに伸びたのだから、
強いレースを見せたと言える。ただ、今回に限っては、キャリアが
ファリダットの倍もある
マルカフェニックスに競馬の神様が微笑んだ。
マルカフェニックスは、
1200~1400mでのOPクラスへの出走が今回で7度目になる。これまで勝ち鞍はなかったが、過去6戦での上がり3Fは
33秒2~34秒4。それでも差し届かなかった。
ところが今回は、
35秒4の上がりで突き抜けた。この数字を見ても、
マルカフェニックスにとっては
「恵みの雨」だったことが分かるだろう。
ともに重賞ウイナーとなった
ビクトリーテツニーと
マルカフェニックスに対して、今後の取捨はどのように考えればいいのだろう?
「上がりが掛かる流れなら買い」と言うのは簡単だが、
「表の反対が裏」とは限らないのが競馬。進化するのがサラブレッドだから、あまり決めつけるのも良くない気がする。
ひとまず、空を見上げて恨めしい気分になる時は、逆に2頭は、ほくそ笑んでいるかもしれないことは思い出すようにしたいですね。