ミヤビランベリが見せてくれた能力の高さや適性の柔軟性
文/編集部
好天、さらに
「フリーパスの日」で入場無料ということもあってか、G1がない狭間の週のわりに混んでいる印象があった
東京競馬場。
アルゼンチン共和国杯でも大きな声援が飛んでいたが、レースが終わると一転して、溜息交じりの表情を浮かべているような人を多く見かけた。
レース直後の見たままで言えば、11番人気
ミヤビランベリ、4番人気
アーネストリーの行った行ったの決着だ。1番人気の
ジャガーメイルは、後方から差して届かずの5着。
「前残りの波乱決着」と言ってしまえばそれまでで、上位人気の差し馬から買っていた人にとっては、馬券を外したことで浮かない表情をしていた面も当然あるだろう。
しかし、馬券とはまた別に、今回の結果で
「しまった、ミヤビランベリという馬を見誤っていた!」という思いを抱いた人も、案外多かったんじゃないだろうか。実際、
「なんだよ、この馬ってこんなに強かったのかよ」といったような声も、周囲でポツポツと耳にした。
勝ち時計は
2分30秒9で、レースの上がり3Fは
34秒7。
出馬表で
ミヤビランベリの成績を見ると、3走前の
目黒記念における
「不良馬場の東京芝2500mを2分39秒0で1着」という部分が、普通はどうしても今回の取捨に大きく影響してしまう。
今回と同じ条件のG2を勝っているとはいえ、良馬場で勝ち時計や上がりが速くなったら対応できないんじゃなかろうか……と考えた人も多いはずだ。
今回は過去に勝利実績のない休み明けでもあり、
目黒記念の時は
55kgだったハンデが
57.5kgと増えてもいた。
2~3走前に重賞を連勝している馬なのに11番人気と低評価だったのは、そういった様々な不安要素が重なっていた影響でもあるだろう。
そんな不安をよそに、
ミヤビランベリはスイスイと逃げ切ってみせた。
目黒記念の勝ち時計を、実に
8秒1も短縮させての勝利。
2分30秒9は、後にG1を勝つ過去2年の勝ち馬と遜色ないものでもある(07年
アドマイヤジュピタ・2分30秒9、08年
スクリーンヒーロー・2分30秒8)。
そもそも私自身、
「東京芝2500mの重賞を勝った後、芝2000m重賞の七夕賞でも勝っていたことを、もっともっと高く評価しておくべきだったな」という反省も、レース後に強く感じた。
東京芝2500mの重賞と言えば、基本的には
アルゼンチン共和国杯と
目黒記念のふたつ。
90年以降、東京芝2500mの重賞を勝った後に芝2000m以下のレース(重賞に限らず)を勝った馬は、
ミヤビランベリの他に、
マチカネタンホイザと
ゴーイングスズカの2頭しかいない。
スタミナとともに
終いの瞬発力も重要な
東京芝2400mの重賞に比べ、
東京芝2500mの重賞は
スタミナ面を問われる比重が高い面があるため、ステイヤー型の台頭が基本的に多く、
東京芝2500mで勝った後に芝2000m以下でも勝つというのは、よほどの能力の高さや適性の柔軟性がないと、おそらく難しい芸当なのだろう。
そういった仮説から考えていくと、
ミヤビランベリの2走前の
七夕賞における勝利は
「よほどの能力の高さや適性の柔軟性」を感じさせる。今回、レース前に心配された様々な面も克服する可能性を、もっと感じ取るべきだったなと、結果論ながらレース後に反省した。
ミヤビランベリは今後もまたどこかの場面で、
「能力の高さや適性の柔軟性」によって、予想を良い意味で裏切るような走りを見せてくれるのだろうか。先述の通り、過去2年の勝ち馬と遜色ない時計だったことを加味しても、今後が非常に楽しみになってくる。
ちなみに余談として、
東京競馬場では
トウカイテイオーのお披露目が行なわれていて、
トウカイテイオーの
「来場記念ポストカード・プレゼント」などもあった。
ミヤビランベリの父の
オペラハウスと
トウカイテイオーは、同じ
1988年生まれの鹿毛馬。そして、
オペラハウスは5歳時の93年にG1を3連勝して
カルティエ賞の最優秀古馬に選出されていて、
トウカイテイオーは93年の有馬記念で
「奇跡の復活」をして有終の美を飾っている。
なんだか妙なサイン馬券のようだが、そういった意味より、
「トウカイテイオーもそういえば、能力の高さや適性の柔軟性を十分に感じさせてくれた、名馬中の名馬だったな」といったことも、
ミヤビランベリのレースぶりを振り返りながら同時に思い返していた。