17年の時を経て、プレミアムボックスを捕まえました
文/編集部
骨折して半年の休養を余儀なくされ、ぶっつけで出走した天皇賞・秋で、私は
トウカイテイオーから馬券を買っていました。1992年、今から17年前のお話です。
当時の東京競馬場は改修前で、府中の2000mの外枠不利は今以上のものでした。その中で、
トウカイテイオーは
7枠15番。
半年ぶりでの外枠ということも顧みず、ただ強いというだけで
トウカイテイオーから馬券を買っていたあの日。直線のラスト1ハロンで外からごぼう抜きにされ、
トウカイテイオーは
7着に…。私は骨抜きにされ、呆然と電光掲示板を眺めていたことを覚えています。
そんな時、背後で馬券オヤジの
「ノーザンテーストだなあ」という声が聞こえました。
当時はトニービン、ブライアンズタイム、サンデーサイレンスという、90年代半ば以降の種牡馬御三家が活躍する前で、ノーザンテースト全盛(晩年)の時代。しかし、その天皇賞・秋にはノーザンテースト産駒は出走しておらず、
「何を言ってるんだ?」と思ったものです。
ところが、後で見返したら、連対馬の2頭は母父がノーザンテーストだったのです。こんなことまで調べなきゃいけないのか!と、当時は衝撃が走りました。
母の父や枠順なんて検討材料にもせず、ただ盲目的に強いと思われる1番人気から馬券を買っていたあの頃、私は、まったくもって
『はな垂れ小僧』でした。
あれから15年以上が経過し、鼻水はいくぶん治まってきたような気がしているものの、油断をするとタラッと出ているまさに
『はな垂れ小僧』状態の日があり(笑)、それを痛感させられていたのが
プレミアムボックスでした。
プレミアムボックスは昨年3月にオーシャンSを勝ち、その後は今年6月のCBC賞まで3着以内がありませんでした。しかし、私は何度も同馬の馬券を買い、わずかに届かずに悶絶する日々を繰り返していました。
1年以上馬券圏内に入れないレースが続き、買うかどうしようか迷ったのが今年のCBC賞。結果はご存じの通り、
プレミアムボックスが外から差し切り、
12番人気での1着という穴を開けました。
開催最終日だったというのに、私は
外目の枠の差し馬だったプレミアムボックスを買わず、内目の枠の先行馬に手を出すという始末。17年前と何も変わらず、鼻水は垂れ続けていたのです!(笑)
プレミアムボックスはアドマイヤベガ産駒ですが、母の父がターゴワイスで、母の母の父がノーザンテーストです。17年前の天皇賞・秋で大外一気を決めて優勝したのは
レッツゴーターキンで、同馬は父がターゴワイスで、母の父がノーザンテーストでした。
プレミアムボックスの母であるチャッターボックスは、
レッツゴーターキンと同じ年(87年)に同じ社台ファームで生まれた同配合(父ターゴワイス×母父ノーザンテースト)の馬で、そのことをCBC賞のレース前に気づいていたにも関わらず、
プレミアムボックスの馬券を買えなかったのです。
もう
『はな垂れ小僧』はいやだ。そう思い、
今度、プレミアムボックスが激走した時には必ず捕まえるぞ、との思いを強くしました。
そして、迎えた今年の
京阪杯。このレースは06年に芝1200mの重賞となってから、5歳以下の比較的若い馬が台頭していて、勢いのある馬がタイトルを手にするケースが続いていました。
今年で言えば、今秋に重賞初制覇を果たした
アルティマトゥーレ(5歳)や、芝1200mのOPクラスで好走を続けていた
エイシンタイガー(3歳)と
レディルージュ(3歳)がそれに当てはまり、他にも
アーリーロブスト(3歳)や
ラインブラッド(3歳)など、若くて活きの良い馬が数多く出走していました。
果たして、この中で
プレミアムボックスは台頭するチャンスがあるのか?
6歳馬だぞ? 近3走はまた馬券圏外だぞ? マイナスデータが頭をよぎりましたが、17年前の天皇賞・秋と同じ連続開催の最終週で、
プレミアムボックスはまたもふた桁馬番。近走も負けているとはいえ僅差で、33秒台の上がりを使い続けているのだから、
ここで買わずにどこで買う!と勝負に出ることにしました。
結果的に、逃げた
グッドキララに
セブンシークィーンが絡み、さらには
アルティマトゥーレも先行して、前半3Fが33秒1という速い流れになったことも向いたのでしょう。さらには
エイシンタイガーは落鉄もしていたようですが、それでも
プレミアムボックス自身、芝1200mの自己ベストを更新する1分7秒6で走破したのだから立派です。
思えば17年前の天皇賞・秋でも、
レッツゴーターキンは芝2000m戦での自己ベストを1秒8も更新する1分58秒6で走り、G1馬となっていました。
17年の時を経て、ようやく
プレミアムボックスを捕まえました。感無量です。と言いたいところですが、今回、3着の
ヘイローフジは買っておらず、的中した馬券は
「プレミアムボックスの単」のみ。
奇しくもそのオッズは17.3倍で、あの天皇賞・秋から数えて「1年=およそ1倍」の分かと思ったら、鼻水が止まって涙が出ました(笑)。