アクシオンがサンデーサイレンス産駒の十八番パターンを体現した
文/編集部
1番人気
イコピコ、2番人気
ナムラクレセント、3番人気
サンライズマックス。4番人気
スマートギアは定位置とも言える後方で脚を溜めていたが、上位人気3頭はスローペースを見越してか、中団より前の位置でレースを進めていた。
逃げた
レッドスパーダが作り出したペースは、1000m通過61秒2のスローペース。重賞とすれば、超をつけてもいいスローペースと言えるだろう。その結果、レースの上がりは33秒6と速くなり、瞬発力を問われる展開となった。
「そのパターンだったかあ」直線、残り1Fを切ったところから一気に加速して突き抜けた
アクシオンを見て、ハッとさせられた。鳴尾記念の『メインレースの考え方』では、
「過去3年では父か母父がサンデーサイレンスの馬が3連勝中」と記した通り、サンデーサイレンス産駒の
アクシオンは血統的に要注意だった。
そういったレースの血統傾向に加えて、
芝の中距離での瞬発力勝負は、サンデー産駒がもっとも得意にしている条件であり、そこで
アクシオンの才能が開花したことは理解できる(ちなみに、
アクシオンが計時した上がりは33秒1。それまで、自己最速の上がりは前走の八坂Sでマークした34秒2だった)。
また、サンデーサイレンス産駒と言えば、
「昇級での挑戦で重賞をいきなり勝つ」というのが十八番でもある。サンデーサイレンス産駒として、初めて重賞を勝ったプライムステージ(94年に新馬①着→札幌3歳S①着)もそう、
アクシオンの同期マツリダゴッホが初重賞制覇を飾った時(06年クリスマスC①着→07年AJC杯①着)もそうだった。そのパターンは枚挙に暇がない。
「そのパターン“だった”かあ」と、過去形の表現を使っている時点でアウトである。
アクシオンやマツリダゴッホを含めた現6歳は、サンデーサイレンス産駒のラストクロップで、いまや現役で走っている馬もかなり少なくなっている。母父や祖父としては大きな存在感を示しているサンデーサイレンスだが、正直、産駒の現状は大きな存在感とまでは言えない。
ところが、自分の頭の中では“過去のモノ”として脳裏に刻まれつつあったサンデーサイレンス産駒の十八番パターンを、6歳の
アクシオンが体現した。しかも、
サンデーサイレンス産駒らしい、日本競馬を席巻したあの瞬発力を披露して、だ。
レース後のインタビューで、
アクシオンに騎乗した
藤田騎手は、
「正味、ひとハロンくらいしか追ってないんで、本当に馬に勝たせてもらった感じです」と話していたが、他馬の鞍上が馬上で激しく動く中、
藤田騎手は残り1Fまではほとんど掴まっているだけの状態。
外から並びかけてきた
ナムラクレセントを馬なりで置き去りにし、前を行く
イコピコをあっさりと交わした
アクシオン。瞬発力という名刀で他馬を切り伏せる。これまで数え切れないくらいサンデーサイレンス産駒が見せてきたシーンだが、それがまた見られるとは。
アクシオンは3歳時にHTB賞(1000万)①着→菊花賞⑤着だったが、菊花賞ではレコード決着の中、④着メイショウサムソンと0秒1差で走っていた。すでにその時点で素質の片鱗を見せていたが、その後、屈腱炎により長い休養に入った。そして、今年4月の石和特別で約2年3ヶ月ぶりに戦線復帰し、今年7戦目だった鳴尾記念で重賞制覇に至った。
アクシオンが鳴尾記念を勝ったことで、今年のサンデーサイレンス産駒の重賞勝ちは、オールカマーを制したマツリダゴッホに続いて2勝目。そして、産駒のJRAの芝重賞勝ちは299勝となり、大台にリーチをかけることになった。
サンデーサイレンス産駒のことだから、マツリダゴッホが年末の有馬記念でその大台にのせてしまうことも考えられるが、
アクシオンがその役目を果たす可能性も十分にあり得るだろう。
アクシオンはキャリアが16戦と少なく、
藤田騎手の
「これからどんどん強くなってくれそうな可能性を秘めた馬」という言葉も心強い。
09年12月6日現在、中央に登録しているサンデーサイレンス産駒は34頭。ラストクロップが来年は7歳となるだけに、今後はもう、
アクシオンが見せた
「昇級での挑戦で重賞をいきなり勝つ」というパターンはお目にかかれないかもしれない。
サンデーサイレンスの血は日本競馬に深く根付いているが、隆盛を極めたサンデーサイレンス産駒の時代は確実に終幕に近づいている。
アクシオンの勝利が逆にそのことを印象付け、そう思うと寂しさに駆られるが、
アクシオンの可能性がその気持ちに光明を射してくれる。名刀
アクシオンの今後に期待したい。