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今後は「伝説の新馬戦」の価値をさらに高めてくれるのかもしれない
文/編集部

「伝説の新馬戦」と呼ばれるレースが生まれることがある。今年の3歳世代ならもちろん、①着が皐月賞馬アンライバルド、②着がダービー②着のリーチザクラウン、③着が牝馬二冠馬ブエナビスタ、④着が菊花賞馬スリーロールスだった、08年10月26日、京都芝1800mの新馬戦だ。

それ以外にもトウショウボーイとグリーングラス、ワンダーパヒュームとマヤノトップガン、キョウエイマーチとマチカネフクキタル、ジャングルポケットとメジロベイリーなど、のちのG1馬が同じレースでデビューを飾った例がある。

「たまたま」と言ってしまえばそれまでで、実際たまたまなのだろうが、ひとつだけ言えることがある。それは、「そういったレースで勝った、もしくはのちのG1馬に先着した馬は、間違いなく力を持っている」ということだ。

このレースの1番人気アーネストリーもそんな1頭で、07年7月8日の新馬戦(阪神芝1800m)では、のちのオークス馬トールポピーを②着、皐月賞馬キャプテントゥーレを⑧着に下して優勝している。

その後、骨膜炎や捻挫でクラシック戦線に乗ることはできなかったが、復帰後は条件戦を順調に勝ち上がり、今年2月にオープン入り。続く重賞では3連敗したが、4ヶ月ぶりだった2走前の大原Sで、先週、鳴尾記念を勝ったアクシオンを破って初オープン勝ちを飾り、アルゼンチン共和国杯②着を挟んでここに出走してきた。

レースは好スタートを決めたアーネストリーがいつも通りの先行策。1番枠から発走したドリームサンデーが先頭を奪い、マヤノライジンが2番手。アーネストリーは鞍上・佐藤哲三騎手が一旦5番手に下げ、馬群の中に入れる。その他の人気馬では、3番人気ナカヤマフェスタが馬群のちょうど真ん中あたり、2番人気トーセンジョーダンは最後方から前を窺う。

1000m通過は58秒4だが、開幕週の馬場を考えると「超」がつくほどのハイペースとは言えない。その証拠に、前を行くドリームサンデーの楽な手応えを見て、残り800mで早くも後ろの馬が仕掛け始め、ムチが入った馬もいたが、前との差がほとんど縮まらない。

そんな中、アーネストリーだけは仕掛けることなく3番手まで押し上げて直線に向く。この時点でドリームサンデーは後続に3馬身差をつけており、セーフティーリードかと思われた。

しかし、そこからアーネストリーが猛追を開始。残り200mでもなお、逃げ込みを図るドリームサンデーと3馬身差があったが、そこから手前を替えて一気に加速、残り50mで逆転し、よく粘ったドリームサンデーに半馬身差をつけて初重賞制覇となるゴールに飛び込んだ。3馬身離れた③着にチョウカイファイト、④着には後方から馬群を捌いてよく差を詰めたが、展開が向かなかったトーセンジョーダンが入った。

後半1000mは59秒0。結果的に前半の速い前がかりのレースではあったが、勝ち時計1分57秒4、完全なドリームサンデーの勝ちパターンを差し切るのは尋常ではない。デビュー戦でのちのG1馬に勝つ馬はこれまでにもいたが、そこで終わってしまった馬も数多い。

しかし、アーネストリーは違ったようだ。レース後「さらに上を狙える」と、佐藤哲三騎手が語ったように、今後は「伝説の新馬戦」の価値をさらに高めてくれるのかもしれない。

ところで、このレースのパトロールビデオを見て、改めて思ったことがある。決勝線手前でチョウカイファイトが斜行してタスカータソルテの進路に影響を与え、審議になった件だ。まず確認しておきたいのは、決勝線手前に起こったことで、脚色にも差があったので、降着云々の話になるほどのものではない。

問題は、公開されているパトロールビデオでは被害馬だけが○印で示され、加害馬がどの馬なのか明示されないことだ。今回はタスカータソルテチョウカイファイトの間に数頭の馬がいて、最初に見た時はチョウカイファイトに外から押されただけのトーセンジョーダンが加害馬に見えてしまった。

さまざまな角度から撮影されたビデオを放映するなど、いろいろとわかりやすくする努力が重ねられているのだから、こういったところで不満が出るのは惜しい。ぜひ改善をお願いしたい。