4、5、8歳世代によるダート三国志に注目せよ!
文/編集部
JRAの古馬ダート重賞、特にG3では、条件戦を破竹の勢いで駆け上がってきた新鋭が、そのクラスの門番のような常連に跳ね返されるというパターンがよくありがち。競馬で
「あるある」ネタを作るなら、組み込むべきネタのひとつだろう。あ、本誌の
「ますざぶ」で募集してみようかなこれ。
「競馬あるある」と
「競馬ないない」の両面で。
今年の平安Sで1番人気に推されたのは、準OPを勝ち上がってきたばかりの
ダイシンオレンジ。新鋭ではあるが、それでも出走12頭中、重賞勝ち馬が
ウォータクティクスしかいないという状況だっただけに、あるいは、という思いもあったが、やはりというべきか、前走の東京大賞典③着など、交流重賞③着以内を3回経験していた常連
ロールオブザダイスに勝ちをさらわれた。
なお、唯一の重賞馬で、前年4月に同コースのアンタレスSでレコード勝ちを記録した
ウォータクティクスは、
トシナギサ、
アドバンスウェイに行かれ、またもハナに立たないまま⑧着。行きたい馬が揃ったメンバー構成ではあったが、やはりこの馬は揉まれず自分のペースで逃げてこそか。スタートダッシュで分が悪そうな中では、今後も見送りが必要かもしれない。
さて、これでこのレースにおける1番人気馬は、00年以降、実に11連敗。その理由の一端を、先ほど述べた
「あるある」が担っていることは想像に難くないが、それを把握しつつも個人的にはその一方で、明け4歳の新鋭
アドバンスウェイに熱視線を送っていた。その結果次第では、早くもフェブラリーSの結果が見えるかもしれないと思ったからだ。
しかしこれは、
アドバンスウェイが勝っていたなら、フェブラリーSはこの馬で決まり、という意味ではない。ポイントはこの馬が、平安Sの出走メンバー中唯一の明け4歳世代だったということ。これは『サラブレ』本誌の有馬記念特集内でも少し触れたことだが、
昨年の3歳世代はダートの対古馬戦において、過去10年中、ズバ抜けた好成績を記録している世代なのだ。
具体的にいうと、3歳以上のダート戦において各3歳世代の過去10年平均成績は、勝率が7.7%、連対率15.1%、複勝率22.0%である。それに対し昨年の3歳、つまり現4歳世代は、勝率9.1%、連対率18.0%、複勝率25.2%と、すべてにおいて平均を大きく上回るだけでなく、これら3つすべてが過去10年中のトップ成績なのである。
ちなみに昨年、フェブラリーS前後の時期には、ヴァーミリアン、カネヒキリらが代表する当時の7歳世代(現8歳世代)と、サクセスブロッケン、カジノドライヴを擁する当時4歳世代(現5歳世代)が、互いにダートの強豪世代として火花を散らす対戦構図ができていたが、ヴァーミリアン世代の3歳時・対古馬成績は、勝率7.8%、連対率14.8%、複勝率21.2%。サクセスブロッケン世代は、勝率8.5%、連対率16.3%、複勝率23.3%だった。
この
「現4歳ダート世代が強い」というデータは、条件級、OP以上で分けて統計を取ってみても、ほぼ同じ傾向にある。重賞成績を見ても、2000年代に3歳でJRAの古馬ダート重賞最多2勝したのはクロフネ世代、ヴァーミリアン世代、そして現4歳世代となる。この中で現4歳世代だけは3歳時にJCダートを勝てなかったが、代わりに②着、③着を占めている。
つまり現在のダート重賞戦線においては、
明け4歳vs5歳vs8歳という、3つの強豪世代が鼎立している点にご注目いただきたいということだ。
今回の平安Sでは、明け4歳世代の先兵として
アドバンスウェイが参戦したものの、ワンツーフィニッシュを決めたのは5歳世代だったわけだ。ただ、最初の
「あるある」からも、ここで新鋭が跳ね返されるのは定番的なこと。それを覆して勝っていれば、4歳世代の評価は跳ね上がっただろうが、逆に、ここで負けて下がったものがあるわけでもない。
フェブラリーSに向けての2010年第1ラウンドとなった、今回の平安S。このレースでは、3世代三つ巴の中で、09年東京大賞典での①着、③着(サクセスブロッケン、ロールオブザダイス)に続き、5歳世代がまたも優位を得た。次のラウンド、1月27日の川崎記念に5歳世代の参戦はどうやらなく、ここは4歳世代と8歳世代による対抗戦となりそう。
G1勝ちがない一方で、データの裏付けはあるという、「名はなくも実はある」現状の現4歳世代。先輩の強豪世代を相手に、いつ大仕事をやってのけてもおかしくない存在なだけに、穴党の皆様にはぜひこの先のご記憶に留めておいていただきたい。