父サンデー系には想像を上回る懐の深さがあるようだ
文/編集部
①着が7歳の
ネヴァブション、②着が8歳の
シャドウゲイト、③着が7歳の
トウショウシロッコで、さらに④着も7歳の
マイネルキッツ。今年のAJCCには7歳以上の馬の5頭出走していたが、そのうち4頭が①~④着を占めることとなった。
昨年は8歳のカンパニーが、天皇賞・秋→マイルCSとG1を連勝。今年に入ってからも、7歳のアクシオンが中山金杯で鳴尾記念に続く重賞連勝を飾るなど、近年は特に7歳以上の高齢馬の活躍が目立つ。その意味で、
ネヴァブションの勝利については、
近年のトレンドの範囲内といった面もあるのだろう。
ただし、7歳以上の馬が重賞で①~③着を独占するなんてケースは、まったくの想定外だった。今回の①~③着馬はいずれも、1月の中山の芝重賞で連対実績があった馬たち。個々ではそれなりに注意していたのだが、まさかこの①~③着の組み合わせを買わないと的中しないとは……。
レース後に調べてみると、90年以降の中央の平地重賞において、7歳以上の馬は今回のAJCCで114勝目。そのうち、過去に7歳以上の馬が①着&②着、もしくは①着&③着という例は22回あったが、
①~③着を独占したのは今回が初だった。やはり、想定外でも不思議ないようなパターンではあったのだ。
また、①着
ネヴァブションと②着
シャドウゲイトはともに、
「父か母父がサンデー系で、近4走がすべて⑦着以下」という戦績。こういうタイプが1頭だけ連対するのならともかく、ワンツーしたという結果も、非常に新鮮な驚きだった。
シャドウゲイトのような母父サンデーサイレンスについては、あまり一緒に考えないほうがいいのかもしれないが、少なくとも
ネヴァブション(父マーベラスサンデー)のような父サンデー系は
「重賞では、少なくとも近3走以内には連対があるような馬(勢いのある馬)の好走が多い」という基本傾向がある。
例えば今回で言えば、同じ高齢の父サンデー系でも、前走に重賞(中山金杯)で②着だった
トウショウシロッコの方が、馬券的にはやはり狙いやすい。他にも、4~5歳の父サンデー系の
デルフォイ(⑥着)、
キャプテントゥーレ(⑪着)、
アドマイヤコマンド(⑫着)にもすべて、近3走以内に重賞で連対歴があった。
こういった戦績の父サンデー系たちがすべて連外で終わった中、近4走が⑦⑬⑩⑫着という7歳の
ネヴァブションが勝利。この対比もまた、非常に珍しく、予想しづらい出来事のように感じたのだ。
ネヴァブションは昨年のAJCCの覇者でもあり、この季節やコースだと別馬のような走りをするということなのだろうか。あるいはもしかしたら、自分のサンデー系に対しての認識が甘かったということなのだろうか。
レース後に改めて「7歳以上で平地重賞を勝った父サンデー系」について調べてみると、認識が甘かったというべきなのだろうが、
「あ、実はそうだったのか」という発見がいくつかあった。
7歳以上で平地重賞を勝った父サンデー系は、今回の
ネヴァブションで19勝目(16頭目)。そのうち、
ネヴァブションと同じように「近3走以内に連対なし」というケースは11回あった。全体の57.9%だ。
もう少し敷居を上げて「近3走以内に馬券圏内なし」としても6回(31.6%)あり、高齢の父サンデー系が重賞を勝つケースとして、今回の
ネヴァブションはそれほどレア・ケースという感じでもなかった。この時点で
「あ、実はそうだったのか」である。
また、
ネヴァブションは前年のAJCC以来となる1年ぶりの勝利だったが、先述の19勝のうちには他にも、「今回の勝利が1年以上ぶりの勝利で、しかも以前に勝ったことがある重賞での復活の勝利」が4例あった。
馬名を挙げると、01年の新潟大賞典でのサイレントハンター(父サンデーサイレンス)、05年の大阪杯でのサンライズペガサス(父サンデーサイレンス)、09年の中山金杯のアドマイヤフジ(父アドマイヤベガ)、09年の阪神牝馬Sのジョリーダンス(父ダンスインザダーク)。
こうして父名もあわせて見ると、父SS以外のサンデー系はアドマイヤベガ、ダンスインザダーク、そして今回のマーベラスサンデーだが、いずれの産駒も
「復活の重賞勝利」を挙げていることになる。3種牡馬とも現役時代には2400m以上のG1を勝っていたが、こういった現役成績の父サンデー系は今後も、同様のパターンに要注意かもしれない。そういった発見も、改めて調べてみて気づいた。
ちなみに、SS直仔以外の父サンデー系で、7歳以上になって重賞を勝った馬は
ネヴァブションで5頭目だが、これまでの4頭については、7歳以上で重賞を勝った後にまだ1頭も連対したことがない。これはちょっと気になるデータだ。
しかし、改めて調べてみたことで、父サンデー系の
「単に仕上がりが早いとか、そういった単調な傾向では収まりきらない懐の深さ」みたいなものを、十分に感じさせてもらった。
ネヴァブションにはぜひ今後も連対を積み重ねてもらい、父サンデー系のさらに予想を上回るような懐の深さを感じさせてもらいたいところだ。